ラブソング
中学時代の同級生が死んだ。
急性硬膜下血腫らしい。
彼女とは3年間クラスが同じで、僕は学級委員、彼女は生徒会だったから学校で過ごす時間は他の生徒たちと比べても多かったと思う。
1年生の頃から、よく席が隣になった。またお前かよー!なんて話を何回しただろうかと、ふと思い出す。
クラスでは特段目立つタイプではなく、大人しめで鋭利で的を射た毒を吐く女の子だった。
そこが面白くて好きだった。
ディズニーが好きで、嵐が好きで、担当は松潤で、SKETDANCEの話で盛り上がったっけな。
そんな彼女と交際することになったのは3年生になる前の春休みで。
当時の僕は今よりもうんと子どもで、告白する勇気もなくて、近くの駐車場の車の影から友達に見守ってもらって学校の前で告白したっけなあ。
たしか、頭真っ白になってグダグダ言ったあと好きです、付き合ってくださいって言った気がする。
返事は、はい、うれしい、の二言だったかな。
生まれて初めて自分の好きという感情が届いて、返ってきて、応えてくれて、彼女が角を曲がって見えなくなってから50mくらい全力疾走したっけ。
その後友達と抱き合ってワイワイしたっけ。
3年間もクラスが一緒だったから、それなりにずっと仲は良くて、ノート貸し借りしたり、委員会の話したり、休み時間にはちょっかい出したりしてた。
彼女を意識し始めたのは、中2の文化祭の後くらいだっただろうか。
僕は文化祭当日にその時好きだった子に告白して、見事爆散したのだが、これまた人がいないと告白できない質だったのと、これがなかなか2人きりになれなくて、ええい!やあ!で爆散。
お陰で次の日教室に入ったら女子の視線が痛かったな。あいつ昨日告白して振られたらしいよって目だったな。目は口ほどに物を言うとはよく行ったものだ。
その時も彼女とは席が隣だったわけだが、振られたんだってね、と顔は笑ってなかったが声の調子から小馬鹿にしていたのが分かった。
その辺から、良く話すようになり親密になっていったと記憶している。
合唱コンの時期になれば、俺の周りの奴らが囃し立てるくらいになっていたっけな。
デートと呼べるものも、今思うと2回くらいだろうか。夏祭りとゲーセン。
どう促したらいいか分からなくて、手さえ繋げなかった。
当時持ってた服の中で1番オシャレであろう、発色のいい青の豹柄のパーカーを着てプリクラを撮った。今思うとくっそだせえぞ。お母さんもっとマシなもの買っといてくれよ。
初めて見る彼女の私服にひどく胸が踊ったことを思い出した。
野球部だった僕を吹奏楽部だった彼女は、校舎の窓から校庭で練習している僕を良く眺めていたらしい。時々上に目をやると、それらしき人が見えて目が合っては照れた。
お互い部活中で、絶対的な距離が確保されているせいかその時の彼女はやけに積極的だった気がする。
受験期には、一緒に勉強こそしなかったが推薦における面接の練習を一緒にした。
僕は推薦で合格した時、彼女は落ちてしまいなんて声をかけたら良いか分からなかったし、なんと言ったのか覚えていない。
その後彼女は一般試験で合格し、別々の高校に進学することが決まった。元々その予定だったが。
卒業式に制服の第二ボタンをあげた。
後にも先にも彼女だけである。
へー、くれるんだ。そんな返答だった気がするが、いつもより少し嬉しそうな表情に見えた。
卒業後は、高校野球が地獄すぎて彼女の存在を忘れてしまっていた。彼女から連絡が来ることも無く、自然消滅したのだ。
再開したのは成人式の同窓会。
当時と変わらないながらも、大人になった彼女がいた。
僕と別れたあとどんな人と付き合ったのか、大学は行ってるのか、仕事をしているのか、夢はあるのか、僕と付き合ってたときいい思い出はあったか、聞きたい事は山ほどあったし、僕の事もたくさん話したかった。
けれど、まだチキンで子どもメンタルの僕は、彼女と目が合えば勝手に気圧されて逸らし、友達から話さないのか?と焚き付けられても声をかけに行けなかった。
次会った時には、よ!成人式ぶりだね!なんて声をかけるんだっ!そう思ってたのに。
そこには僕の知らない沢山の思い出があった。
相変わらず、いや増すにも増して行動力化け物のオタクに完成していたようだ笑
仕事は栄養士だった。彼女らしいと言えばらしい気がした。
とても安らかな顔だった。軽く開いた口から、「バカじゃないの?笑」って聞こえてきそうな気がした。
思い出の中の彼女は、ふざけてる僕にいつも方言ってくれてた。
ただの中学時代の元カレだけど、同級生として、いつあるか分からない同窓会で死ぬまでに2回は会うかなって思ってた。
いつまでも続いていくと僕はずっと思ってたんだよ。
嵐が復活したら、美しすぎた君の姿を想ってしまうんだろうな。
君と過ごした日々は忘れることなんて出来ないんだよ。
4月7日、森のホール21に悲しみと寂しさは置いてきたよ。僕は胸を張って幸せになるよ。未来は僕のためにあるんだって。ロックバンドがそう叫ぶから。
戻らない命へ。