最後の最速特急に乗った話
特急「サンダーバード37号」、大阪駅から金沢駅、267.6kmを2時間31分で走破する。始発駅から終着駅までの距離を時間で割った"表定速度"は106.3 km/hとなる。特急「サンダーバード」のみならず、日本国内でも最速の在来線であった。
ダイヤ改正前日となる2024年3月15日、私は大阪駅から金沢駅までサンダーバード37号に乗ることにした。
最速のサンダーバードとは?
特急「サンダーバード37号」は、帰宅ラッシュ直前の17時42分に大阪駅を出発、JR京都線、湖西線、北陸本線を経由し、金沢駅に20時13分に到着する。途中停車駅は新大阪駅、京都駅、福井駅のみと、新幹線との乗換駅となった敦賀駅すらも通過することから、速達性を意識した停車駅設定であるとわかる。それ故、コロナ禍の影響をもろに受け、臨時列車になったこともあった。
使用車両は683系の9両+3両編成。"国内最速"ではあるが、特別なことがあるわけではない。一見するとただのサンダーバード、わかる人にはわかる”特別なサンダーバード”であった。
乗車ルポ 2023/03/15
夕陽差す大阪駅、電光掲示板には、北陸新幹線の敦賀開業について案内するテロップが流れる。
17時36分、神戸方面から乗車列車となるサンダーバード37号が入線する。また、最速型らしく「停車駅が最も少ない列車です。停車駅にお気を付けください。」という趣旨の案内を車掌が何度もしていた。同じ号車の乗客は思ったよりも多くない。私の隣は金沢駅まで空席であった。"ウラ"のラストランを楽しむ鉄道ファンはそこまで多くないらしい。
定刻通り大阪駅を発車した列車は慣らし走行のような感じで淀川を渡り、新大阪駅に滑り込む。
新大阪駅を発車。高槻駅付近で遅れ新快速に引っかかり、快調な走りとは言い難い状態で京都駅まで走る。結果、2分遅れで京都到着、発車。
京都駅から軽く東海道本線を走って山科駅へ、そこから左に分岐して湖西線に入る。湖西線は文字通り琵琶湖の西側を走る路線だ。京都駅までの走りとうって変わって、先行列車との間隔を気にすることもなく、快調に飛ばしていく。薄明で写真に収めることができなかったが、右手に見える琵琶湖、左手に見える比叡の稜線は印象深かった。
湖西線一つ目の通過駅大津京駅を通過した時に車掌からの放送が流れた。お休みのお客様に対し、少しの間ご容赦くださいと前置いたうえで…
サンダーバードだけではない。この乗車列車についても紹介があった。
この放送を聞けただけでこの列車に乗車した価値はあったと感じた。
また、巡回の車掌が記念乗車証を配っていた。SNSを見る限り、かなりの種類の記念乗車証が配られていたようだ。京都駅から福井駅まで1時間20分ほど、途中に北陸本線への転線や敦賀駅通過といったイベントは多くあるが、乗り心地が良くうとうとしていたこともあった。
敦賀駅から先の北陸本線は、この特急で二度と乗ることがかなわない区間である。武生駅の福井鉄道や鯖江のメガネのシンボルも特急から見ることはもう叶わない。福井駅ではかなり下車したが、福井駅から乗り込む旅客も多く、少し驚いた。福井駅発車、夜の北陸路を快調に走り、芦原温泉、加賀温泉、小松駅といった新幹線駅も通過する。
松任駅を通過後、最後の案内放送が流れる。自動放送の後、車掌の接続案内が入る。IRいしかわ鉄道、七尾線、北陸新幹線をそれぞれ案内したうえで…
北陸ロマンが流れ、サンダーバード号での旅の終わりを実感する。20時13分、ほぼ定刻通りに金沢駅6番線に入線。
翌日の延伸開業を北陸の地で祝いたかったが、用事があったため、最終のかがやき518号で帰京する。
滞在時間は約50分、金沢駅から発車する最後のサンダーバード号を見送って私は家路についた。猛烈な人だかりでびっくりしたが、最終の新幹線で帰京する人はほとんどいなかった。
21時03分、定刻通りにかがやき518号は金沢駅を出発。2時間とちょっとで私が下車をする大宮駅。このかがやき号の大宮金沢間の表定速度は208 km/h。在来線とは次元が違う。賛否両論ある今回の開業だが、北陸への利便性は着実に向上していると感じた。