【カフェ開業】♯2 コロナ、緊急事態宣言、もたもた ~いつかどこカフェ~
2020年の正月に、「本格的にカフェをやるってばよっ」と意気込んだ僕は、それから飲食店経営の本を読んだり、街の不動産屋のテナント情報をチェックしたり、コーヒーが美味しいと評判のお店に足を運んだりしていましたが、いきなり出ばなをくじかれました。
そう、新型コロナのニュースが日に日に大きくなってきたのです。
僕が初めてコロナのニュースにふれたのは、1月の中旬から終わりにかけてでした。
行きつけのマッサージ屋さんとも「こわいですねぇ」と話をしたのを覚えていますが、その頃はまだ脳天気にさらっと会話は終わっていました。
「インフルエンザとおんなじようなもんだってさ」とか「お年寄りが危なくて、若い人は問題ない」とか、そういう情報が耳に入ってきました。
「その程度なら大丈夫なのかな」という気持ちでいましたが、それからコロナに関する僕の認識は、毎月のように改訂されることになり、変異株が猛威を振るう現在でもそれは続いています。
ニュースは、それから2月、3月と日を追うごとに感染者数が増加することを伝えました。
そして4月7日の火曜日、ついに政府は「緊急事態宣言」を発出しました。
この日は僕(そして多くの人々にとって)の人生の中で初めての体験だったので、自分の手帳に記録しておきました。
(ちなみに、その日はジャッキー・チェンの66歳の誕生日でもあります。おめでとう、ジャッキー)
ニュース画面から漏れ伝わる重々しい事実を見て、僕はけっこう「やられ」ました。
まるで背負ったリュックに少しずつ砂袋を詰め込まれるかのように、心がずっ、ずっ、と重くなっていくのを感じていました。
そしてこれから自分がはじめようとしている飲食業界全体が、次々と悲鳴をあげるのを見るのが苦痛でした。
本当にカフェを経営できるのだろうか、飲食業界そのものが危ないのではないだろうか。
そもそも日本は大丈夫なのだろうか……。
しかし色々と情報を集めていると、一つの方向性が見えてきました。
「従業員を多く抱える店」「家賃が高すぎる店」「ビジネス街の立地の店」、これらの条件が当てはまると、このコロナ禍での経営に差し支える、ということが自分なりにわかってきました。
高すぎる家賃は別にしても、それまでは僕も「アルバイトは何人か雇う必要があるかな」とか「ビジネス街での立地も視野に入れよう」と思っていました。
ですが、ニュースが伝える飲食業界の状況を踏まえて、「従業員は雇わない」「ビジネス街はNG」という選択に絞ってしまえば、逆に自分が行くべき方向性が見えてきたのです。
コロナ禍が避けられない事実としてあるならば、自分にとってすごくタイミングが良かったと思うのは、
「もう半年早く『カフェをやろう』と決断しなくてよかった」
ということです。
もしも半年早く決断して、前年の12月にでも開業してしまったとしたら……。
そしてその時の経営方針が「アルバイトを雇い、ビジネス街に出店」だったとしたら……。
その状況でコロナ禍に突入したら、おそらく僕は混乱し、疲弊したことでしょう。
それだけは、自分の “もたもたしたタイミング” でホントによかった、といまでも思っています。
コロナ禍がきて、自分にとって慎重にゆっくり考える時間があった、というのはとても幸運なことでした。
こうして、
「一人でやる店」
「低家賃の物件を探す」
「ビジネス街や繁華街ではなく、地元の住民が集まる商店街に出店」
という、進むべき方向性が決まったのです。