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ダンス・ダンス・マカブル

 蝋燭はもう最後の一箱だ。
 あたしの隣でララがぶぅぶぅ鼻水まじりの呼吸音をたてながら、震える手でマッチを擦ろうとしている。この朽ちた館に入る時は一番元気だったのに、今ではこのざまだ。
 まぁ、さっきルルが空中でねじれて死ぬのを目の前で見てしまったから無理もない。あのときちょっと離れた場所にいたことを、あたしは神様に感謝した。ついでに祈った。この哀れな見習い除霊師をお救いください、と。
 外れたドアの向こう、暗い廊下に点々と並んだ蝋燭が見える。まだゆらゆらと炎を揺らめかせている蝋燭の行列は、廊下から部屋の中へと続き、あたしたちの周囲を三重に取り囲んでいる。
 これはセンサーだ。幽霊が近づくと蝋燭の炎が消えるからすぐにわかる。ただ、わかっても対処できなければ死ぬしかない。ルルのように。
「あぁ〜もう駄目ぇ、死ぬよこれ、うちら」
 火の点かないマッチを放り投げて、ララがぐずぐず泣き出した。あたしは声をかけた。
「大丈夫、二人でいたら絶対大丈夫だから」
 ララは「リリぃ」とあたしの名前を呼び、お尻をずりずりしながら近寄ってきて、あたしにぴったりと寄り添った。肩にララの涙が染み込むのを感じながら、あたしは先生ママ に言われたことを思い出す。
(ララとルルを守ってね)そう言って先生は優しくあたしの髪を撫でた。(もしも守れなかったら、二人の死体と一緒に地下墓所カタコンベへ放り込んでやる)
 あたしは生唾を飲み込む。
 地下墓所。あそこに戻るなんて絶対厭だ。でももうルルが死んでしまった。どうしよう。とにかくララを守らなきゃ。
 廊下の奥で灯りが大きく揺らぐのが見えた。あ、と思った瞬間、蝋燭の炎がふっと消えた。
「ひっ」
 ララが声を上げた。
 またひとつ、その隣の炎が見えなくなる。またひとつ、ひとつ、何かが蝋燭を消しながら猛スピードでこっちに近づいてくる。
 ふっ
 ふっ
 ふっ
 ふっ

【続く】

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