2番目の、読み直してから捨ててみよう?
本棚を整理しようとして、禁断の「思い出コーナー」を開けてしまいました。氷室冴子さん監修の、赤のギンガムチェックの表紙で、角川文庫「マイディア スト―リー」のシリーズです。ジャンルでいえば少女小説に分類されるであろう、わが「腹心の友」たちです。絶対断捨離しないだろうな、と思いつつ何冊か、読み直してみました。そうしたらいろいろ発見があって、時空を隔ててわが身の過去の分身とも語り合う、大変なことに。
ジーン・ポーター(原著は1909年)『リンバロストの乙女』には上下巻があって、私は下巻を読んだ記憶がない! なかった! それで衝撃のあまり読み直して下巻も読んだところ、ディーリア・オーウェンズ(2018)『ザリガニの鳴くところ』を思い出すことに。
およそ100年を隔てて、二つの物語の似ていること、そして決定的に違っていることに泣きそうになりました、それは、100年たっても女性を取り巻く環境が変わらず、むしろ悪くなっているかもしれないと、追い詰められた気分になったからです。ジーン・ポーターは博物学者で作家。物語の舞台は、インディアナ州リンバロストの「沼地」。ディーリア・オーウェンズは動物学者で作家。物語の舞台は、ノースカロライナ州のディズマル「湿地帯」。
舞台の自然描写は美しく、恐ろしい。でも自然に悪意はなく、悪意は常に人のもとにある。親の愛情もお金も保護もなく「沼地」や「湿地帯」という過酷で特別な自然領域で、美しいものに出会う二人の少女のピュアなことは、善き人の愛情と尊敬をかき立て、悪しき人の支配欲と暴力を誘発する。リンバロストの乙女エルノラは、coinの表、ノースカロライナ州のディズマル湿地にいるカイアは、同じcoinの裏。どちらの少女にも、私はあなたの味方だからと呼びかけ、幸せになれるようにと、なにかに祈らずにはいられません。実はディーリア・オーウェンズの本はつい先ごろ買ってツンドクにしておいたのを読んだのですが、衝撃に耐えかねて「さようなら箱」に詰めてNET-OFFにったばかり。ああ、文庫本で買いなおそうかな。