お人好しと心配症は程々に
先日、昼過ぎにインターホンが鳴った。モニターを見ると段ボールを持った人が立っていた。荷物を頼んだ記憶はない。しかし、兄貴が頼んでいる可能性があるなと思い、段ボールもしっかり映っていたため、ドアを開けた。
「すみません。八百屋をやってるんですけど、今ここら辺の家を回って果物を販売してるんです。」
「しまった」と思った。荷物だと思っていた段ボールには、果物が隠されていた。シャインマスカットと桃と柿が入っている。
なかなかこちらが話す隙を与えてもらえず、気づいたら柿を勧められている。この後予定があるため、早く家の中に戻りたいが戻れない。断りたいが、随分と物腰が柔らかい雰囲気のお兄さんで、そんな空気に持っていけない。
引っ張れば引っ張るほど戻りづらくなる。八百屋のお兄さんも、これだけ対応してくれているから買ってくれるという期待が高まっていることだろう。そんな目をしている。
そんな圧に負けて、300円の柿を1つ買ってしまった。マックの三角チョコパイを2つ食べれるなと思いつつ。しかも柿なんか好きじゃないのに。
謎にしっかりした領収証ももらった。まあそういうところを見るに、怪しい会社とかではないのかなと思ったが、柿1個に相当する領収証ではないなと思った。
家のイスに座り、少し落胆する。余計な出費とはまさにこのことで、倹約家の私にとっては大きなショックだった。
柿を自分で買ったことがないため、柿の値段の相場をネットで調べてみる。すると、スーパーなどでは150円から200円あたりと書いてあった。それを見てさらに落胆した。
しかし買ってしまったので、食べるしかない。柿なんか学校の給食以外で食べたことがないため、ネットで切り方や皮の剥き方を見て、晩ご飯のデザートにした。
一応300円だし、あのお兄さんも「中は熟していて甘いですよ」なんて力説していたのだから、ちょっと期待した。
食べてみた感想は、普通だった。普通の柿だった。私が給食で食べたことある味の柿。THE柿。見た目も味も。あくまでも個人的な意見だけれど。
自他ともに認めるような柿通が食べたら、また違うのかもしれない。でも柿素人にとっては普通の味だった。
自分でいうのも恥ずかしいが、お人好しと心配症が融合しすぎるのは良くないと思った。気が強くて傲慢な人ならすぐに断っていただろうし、再配達すればいいやなんて楽観的であれば、そもそもドアを開けていないだろう(逆にガチの心配性だったら危険を感じて開けないか)。
いずれにせよ、すべては私の性格故の事態であり、私の責任である。この300円を取り戻すために、飲み物や菓子パンを数日我慢した。今考えても悔しい。
でも、こうやってちょっとしたネタになっていることだし、それも含めた勉強料と考えれば300円は安いのかもしれない。
…いや、やっぱりそれでも高い。