*フィクション* 「好き」が減ってゆくとき。
また そうきたか…。
キミの話し方は いつもそうだね。
いつからだろう。
楽しそうな話をしなくなったのは。
マイナスで、否定的な話ばかりだろ?
聴かされてる コッチの身にもなってくれよ。
黙って聴いてるのも いい加減 疲れたよ。
キミは 気がついていないのさ。
話しが「だってさ、」とか「でもね、」で始まっていることを。それはもしかしたら 友達の間では通じ合っているのかもしれないよ。でもね 俺には苦痛なんだよ。それは 性別の問題かもしれないし 埋め難い 溝が 俺とキミの間に既にできてしまっているからかもしれないね。
結末が無い話は 聴いていると とてもつらいんだよ。
これは どうやって説明してもキミには理解してもらえない感覚なんだろう。
フンワリ終わってしまう中身のない会話は どうやって理解して 何に対して 何の返事をしたらいいのか 超難問の聴き取り問題さ。
どんなに練習問題を解いたとしても 今後も決して正解を出せそうもないよ。
キミは不満なんだろう。なんでもない日常会話を ただしたいだけだと言うけれど それこそが 超難問なんだよ 俺にとっては。
「楽しい お話をして。」なんて どんな面倒な上司達の前でのプレゼンより 困る要求なんだよ。キミにはわかるまいよ。
確かに俺は口数が少ないかもしれない。
相槌が下手かもしれない。
聴きたくない話題は どうしても聴いているフリをして 明日の仕事のことを考えていることもある。
それは そんなくだらない内容を話しているキミをこれ以上嫌いにならないために ワザと聴かないようにしているのさ。
言い方が遠回りしすぎているかい?
俺の嫌いなキミを 見ていたくないということさ。
俺が見ていたいのは 昔のようなキミだよ。
昔というと 具体的じゃないかい?
そうだね…笑っていてくれればいいんだよ。
普通に過ごしていてくれれば それだけで 十分なんだ。
イヤなことは見ずに 好きなことを「コレが好き」と教えてくれていた あの頃の キミで 十分なんだ。
マイナスなことなんて 何も言う必要はないんだよ。
誰かを否定している言葉なんて 言わなくても 暮らしていただろう?
なぜそんな話し方に変わってしまったのか 今となっては 原因が分からないけれど またキミの好きなものと大切なものと 行きたいところと やってみたい事を 順番に少しずつ 教えてくれないかい?
そうしたらきっと もう少しだけ 仲良くなれると 思うのだけれど どうだろうか。
今のままでは 俺は キミへの「好き」が減ってゆくばかりだよ。
*フィクション* 「好き」が減ってゆくとき。