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七五三の・初・着物。

七歳で初めて 着付けをしてもらった。
自分の髪を 頑張って伸ばして 日本髪っぽく 結ってもらって ピラピラ飾りも付けてもらった。

着物は お下がりだったけれど そんな事は全く気にならなかった。
数日前から 部屋には 防虫剤独特のニオイがついた着物が 着物専用のハンガーに吊るされていた。
肌襦袢や足袋 草履  帯や髪飾り一式が 忘れてはいけない物として 綺麗な風呂敷の上に纏められていた。

こんなに いっぱい 体にくっつけるんだ…。
七五三とは エライ(大変な)ことだなぁ…。

私は 嬉しいとか 綺麗になれるからウキウキ♡とか そんな 乙女のハシリの気分では無く どちらかと言えば ウンザリ&ドンヨリに近い気持ちになっていた。

それもそのはずで 私には少し歳上の親戚の女の子がいたのだが 彼女が数年前に既に七五三を済ませていた。やはり着物を着付けてもらい 髪も結ってもらっていた。そして 写真館で記念撮影もしたそうだ。だが 着付けが あまり上手くなかったようで 気分が悪くなり 写真の顔は青白く 着物を着ての挨拶回りはキャンセルして 速攻で脱いでしまったと聞いていた。

コレを聞いた私は 着物とは 何と恐ろしいものかと スッカリ怯えていた。
そして 実際に並べられた コレら 準備品の多さ。
コレを身につけて 髪を結い 化粧を施されて 和かに微笑むのか…。コレはオオゴトだ。どうしよう。

当日の朝が早い事は既に親から聞いていたし なんだか 母親は張り切っているし 父親は カメラのチェックに余念がない。
頼むから 普通にして欲しい…。


やはり当日の朝は ものすごく早くて 「 サッサと食べちゃいなさい」の掛け声と共に朝食を済ませて まだ真っ暗な中 大量の荷物と共に 母親の通う美容院に到着。
ココは いつも私も髪を切ってもらっているところなので 顔見知りのおばさま達ばかりだけれど なんだか今日は 戦場のようである。私たち以外にも 七五三の着付けを待つ親子連れがいたりして 店内は 朝から ゴチャゴチャしている。

自分の番になり まず 髪を結ってもらった。
「よく伸ばしたね。コレだけあれば アップにしても落ちてこないよ。」と ギューギュー何かで捻り ブスブス刺して固めて でも見た目はふんわりしていて 何がどうなっているのか分からないうちに ピラピラ飾りも つまみ細工の花もササっとつけられて 完成。

次はいよいよ 着付け。

既に背が高めだった為 おはしょりはさほどせずに済むから 柄が綺麗に見えると おばさま達は喜んでいたが 千手観音が前後左右から襲ってくる様に私に着付けをしてくるので 鏡を見る余裕は 全くない。

「しっかり 立ってなさい!」

何度も母親に言われるけれど イヤ やってますけど 踏ん張ってますけど 吹っ飛ばされそうなんですよ 千手観音達に!

帯を締めるときは 正に死ぬんじゃないかと思うくらいで 前に後ろに サンドバック状態で ギューギューの
ボンボン の バンバン の バンッ!って感じで まぁなんとか形になりまして…。その頃外は明るくなってました。

「転ばない様に ちゃんと歩いてね」

無茶振りをかます母親の言葉が 頭の上から降ってきますが 私は自分の足元しか見れません。でも
見えないんですよ 足元が。帯ってすごく出っ張ってて 自分の足元が見えない。

「足元 ちゃんと見て!」

もぅ 母親の声は聞こえない事にして 超真剣に ヒヨコのように ピヨピヨ歩いて なんとか家まで戻って 写真撮影。 

「もっと笑って!目線コッチ!」

とか 簡単に言う父親の言葉に
しかたない。コレも親孝行か と 7歳にして 帯の苦しさの中で悟り 無理クリ微笑んでいる写真が 台紙に貼られて今も残っています。

7歳の私は
着物って 本当に昔の人は着ていたの?
コレ着て 家事してたの?
帯とか 息できないし 下向けないし しゃがめないし
本当に 締めてたの? って思ってました。

結局 気分が悪くなるほどでは無いものの 着物を着たまま挨拶回りをしたのでものすごく疲れてしまい 夕方に 着物を全部脱ぎ捨てた時の開放感たるや なにものにも代え難いものなのでした。
あー洋服最高♪


(コレは まだ人生初の着物。あと数回
大変な着付けが来るとは…。)

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