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*フィクション* ダチの彼女が、オレの車に乗っただけ。

〝彼女を家まで送りたいから、車借りたいんだけどいいかな“


珍しくアイツからそんな急ぎの電話がきた。
初めてに近いんじゃないか?アイツからオレに頼みごとなんてさ。逆は昔からあったけど…


中学からの腐れ縁でここまできて、大学は違えど同じ市に住んでた。就職も同時期で、引越しも無かったから結局アパートも移らなくて、半分学生気分で社会人がスタートした夏だった。

彼女、できたんだ。へぇー、この間飲んだ時にチラッと言ってた子かな。なんか前の彼氏といろいろあったみたいだって言ってた子か? 知らんけど。
アイツの事だから、真面目に考えてのことだろうけど、家まで送るって何か心配事でもあるのか?

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八時に駅のロータリーにつければ良いわけね。ok〜。一応女の子が乗る訳だから洗車したし、車内清掃もしましたよ。あぁ〜でもオレタバコ吸うからなぁ、臭いまでは勘弁してもらおう。
アイツ吸わないんだよなぁ、彼女さんには我慢してもらうか。
足元も綺麗にしたし、まあいいでしょう。


お、時間通りいるじゃん。
二泊三日の研修帰りだって言ってたよな。
スーツケースあるんか。トランク開けるか……


あ、あの紺のフレアスカートの子か…
  ( なんだよスゲー可愛いじゃん)

おぅ、お待たせ お疲れさん。
荷物 後ろに入れちゃってよ、今開けるからさ。


こんばんは、初めまして
(可愛いなぁ…なんだよくそっ… 可愛いってなんだよ)

お待たせしちゃってごめんね
(本当にアイツの彼女なのか?マジで?)

ちょっと走り屋みたいな車でさ、ゴメンね
(なに言ってんだよオレ、関係ないだろ!)


じゃ、気をつけて行けよ。
疲れてんだろ?
思いのほかハンドル重くしてあるからさ。
遠乗りしてきてもいいぜ。しない?ま、そうか。
あ、でもガス、マンタンで返せよ。
じゃ、彼女さん またね!
(またねじゃねぇよ、名を名乗れ!バカなオレ!)


_なんだ、このイヤな気分。
オレの車の助手席に彼女が乗って、別の男がハンドル握って、さらって行ったみたいな感じは…

勘違いするなよ、
ダチの彼女が、オレの車に乗っただけ、だ。