*フィクション* 記憶の中の大好きだった人-⑴
__「幸せになれよ。」
彼からもらった最後の言葉は、今も耳に残ってる。
今にも泣き出しそうな笑顔と一緒にね。
こんなにすぐ思い出せる私は、きっと身体のどこかで、まだ彼を好きなんだろう…
ずっとずっと前にお別れしたはずなのに、季節はとっても寒くって、時間は遠い昔で、周りは真っ暗な夜で、場所は港の端っこだった。
続けようと思えば、なんとか頑張れば、どうにか続けられる関係だったんだ。
無理を通せば、なんとかなるはずだったけど、いつか必ず終わりが来るんだって、二人ともが分かっている愛だった。
だから貴方が終わりにしてくれたんだよね、
嫌な役をやらせたね。
振ってあげないのは 狡いよね。
振ってあげないのは 酷いよね。
好きな人を自分から手放すって 辛い、よね。
あれから時間が経って、少し大人になって、今ならわかるから。
自分が一番辛いクセに、「幸せになれよ」なんて
カッコいい事言えた貴方は、キザだけど
やっぱカッコよかったよ。
あの瞬間は 誰よりも 大好きだったんだよ。