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【雑談】観劇レポート「今夜は彗星ロックに演劇を」

12月14日・15日にムーブファクトリーにて行われた自由バンド主催の公演「今夜は彗星ロックに演劇を」の観劇レポート(という名の感想)です.

チラシ(CoRichより取得)
ムーブファクトリー(ストリートビューのスクショ,旗が出てる建物)

すごくどうでもいいことですが,こういった小劇場は「本当にここであってるの?」現象が起こりやすい気がしています.初めて行くときにはGoogle mapが手放せません.場所や道が分からなかったら主催さんに遠慮なく聞きましょう,きっと親身に教えてくれます.


1: Story

中崎町のとある施設で,演劇や朗読を披露する小劇場「ムーブ劇場」,そしてライブハウス「ライブファクトリー」は日夜活動していた.しかしある日,オーナーからどちらかの店が撤退するよう告げられてしまう.ムーブ劇場の健康店長,ライブファクトリーのTAIYO∞店長は互いに全く譲らず,話は停滞するばかりである.期限だけが刻一刻と近づいている.そんな時,ある案が生まれる.
”良いライブをした方が,店を続けることにしよう”
そうして,どちらの表現がより人の心を動かし,店を続けるに相応しいか競うことになった!演劇と音楽,魂と魂のぶつかる大合戦が始まるー
(パンフレットより引用)

この公演は演劇と音楽の対決という二種類の芸術のハイブリッド作となっており,健康店長に焦点を当てた「窓開け走る晴天の逃避行(ブルーエスケープ)」とTAIYO∞店長がメインの「月夜に光る不通の夢想歌(アントールドソング)」の二部に分かれて物語が進みます.片方だけでも十分にこの対決を楽しめますが,両方を見た方がより物語に入り込めると思いました.
私としては,演劇に音楽(つまりライブ)が混ぜ込まれるという経験があまりないのですごく新鮮な気持ちでした.音楽いいね.love.

2: Rival

開園後,対決の司会者の陽菜とMIUが登場.お互いがお互いをけん制しあう,バトる前からバチバチな雰囲気を醸し出しています(煽りのセンスはまあまあ).ムーブ劇場からキャスト紹介があったのですが,そのうちの一人,飛鳥の紹介になったとたん相手チームからのバッシングが.何かあったな… その後に登場した恭敬という人,ぶっちゃけオカマでした(違ったら本当にすみません).あらゆる言動がオカマでした(違ったら(略)).

ムーブ劇場の紹介後にライブファクトリーのキャスト紹介が来たのですが,見るからにヤンキーでした.昔ながらのロックバンドでした.K(カリスマ)O(おったまげ)K(かっこいい)I(愛してる)のKOKIとカリスマ2のKAZUとカリスマが渋滞している中,彼らにとってのカリスマであろう,店長兼カリスマ3のTAIYO∞が登場.彼,なんとギターの音だけで会話するTop of 変わり者でした.犬と人間の会話みたいでかわいいね.

両者出そろったことで無事にヤクザの抗争喧嘩が勃発しましたが,オーナーの一喝によりひとまず収束.ここからついに対決が始まります.一体どちらが勝利するのか.決めるのは私たちなのです.

3: Possibility

先陣を切るは音楽チーム.KANA-BOON「シルエット」でテンションが上がりました.なんと最前列のお客さんはペンライトを借りられるようで,あっという間にライブ会場になってしまいました.高音がうまくマイクで拾えてなかったのか,極端に小さかったことだけが残念.それ以外はいいライブでした.というかTAIYO∞店長,普通にMCしとるがな,設定どこ行った.

(月限定パート)
シルエット演奏後,テンションの上がった店長は二曲目にUVERworld「在るべき形」を熱唱.取り巻きヤンキー3人は観客と一緒に聴き入っていました.この曲はちゃんと声を拾えていたようでよかった.2曲目で言うことじゃないですけど,人前で歌うって,人前で演技をするのと同じかそれ以上に緊張するでしょうに,平然とやり遂げてしまうのがすごい.
(月限定パート終わり)

ライブが終わったら次は演劇の番.いきなりお父さんがお亡くなりになりました.ライブでテンション上がった後に見せるもんじゃねえだろおい."温度差で風邪をひく"という言葉がこれほど適した場面はなかったです.どうやらライブファクトリーはわいわい方面で心を動かす,ムーブ劇場はしんみり方面で心を動かす作戦のようです.自分の土俵に持ち込んで戦おうとするとはなんともかしこい.
お父さんを処した後はあるカップルの話.彼氏の方は目が見えなくなっていっているよう.そばにいるであろう彼女に向けて彼氏が一人語りをしていました.本当にいいカップルなのがよくわかります.最終的に彼氏は失明するのですが,それでも心の中では彼女の姿がはっきりと映っていることでしょう.
彼氏パートの後は彼女パートに移行.先ほどの彼氏の話を埋めるように会話が進んでいきます.これを聞いてわかるのが,彼氏と彼女のパートでそれぞれ一人語りをしていたのですが,ちゃんと会話が成立しているような間の取り方なのです.すごい.末永く爆発しろください.

間髪を入れずに差し込まれるTAIYO∞店長の歌,これを見たKOKIと恭敬が音楽と演劇の調和を感じ取ります.もしかして…

4: Trajectory

(窓限定パート)
その場に残された恭敬のもとに健康店長がやってくる.そこで彼らはある問に当たります.「なんで演劇やってたんだっけ.」組織としては,行きついたが最後,解散かさらなる結束のどちらかしかない問です(個人調べ).
店長の脳裏に飛来するのは高校時代の記憶.本番で大変なミスを犯してしまったことに強い責任感を覚える陽菜を2人で慰めつつ,地区大会の振り返りをしていました.健康の「よかったことは,悔しいって思えること」というセリフ,いい言葉だと思います.悔しいからこそこれからの成長がある,そんなことを感じます.

これからも3人で舞台を作りたいと思いを確かめ合った彼らはついにムーブ劇場のデビューを果たしました.それを見た,当初ライブファクトリー所属の飛鳥は心を動かされ,ムーブ劇場に異動することになったのですが,これがライブファクトリーには不都合だったらしく,公演のたびに嫌がらせを受けることになってしまいます.そうして,次第にムーブ劇場とライブファクトリーの間に敵対関係が生まれてしまいます.
彼らの演劇を楽しむ純粋な心に共感し,場所を与えることにしたオーナーはこの事態をうけて,どちらかの店を廃業させる決断をしたのです.

どうしてこの大切な思い出を忘れていたのか,どうしてライブファクトリーに勝つことばかりを考えるようになってしまったのか,健康店長はその全てを理解しました.あの時の自分に合わせる顔がないから,思い出を美しいままにしておきたいから,もう過去を思い出さないようにしていたのです.だけど彼は一人ではありません,恭敬と陽菜そして飛鳥がいます.そのおかげでようやく健康店長は目を覚まします.誰よりも演劇を愛していた故に思い悩み,その苦しみから解き放ってくれたのもまた演劇だったのです.そうしてようやく,こんな戦いに意味などないと気付いたのです.
苦しい時,辛い時に静かにそばにいてくれる,もう大丈夫だと励ましてくれる,それが友情なのだと思います.友達,大事にしよう.うん.彼らの演技は,健康店長の強さと弱さを見事に表現していたと思います.
(窓限定パート終わり)

(月限定パート)
その裏で,TAIYO∞店長もある問に当たります.「なんで音楽やり始めたんだっけ.」
彼の理由は単純,憧れでした.夜の公園,満月のもとで一人歌っていたツキさんに,彼は虜になり,追いかけ始めたのです.その後,彼はツキさんのライブを見に行くようになったのはもちろん,彼自身も音楽の道を歩みだします.そして,憧れにたどり着いて見せると決意します.
個人的な意見ですが,憧れは自分の夢や目標を力強く応援してくれる一方,簡単に夢を破壊してしまうものでもあると思います.行ってしまえば,夢を他者に委ねているのと同じですからね.憧れが崩れたそのとき,夢が本当に自分のものなのかわからなくなってしまう危険性をはらんでいます.

しかし,私の心配ごとが現実となってしまいます.TAIYO∞店長の憧れであるツキさんは,もう耳が聞こえないという事実をオーナーから告げられたのです.憧れの人はもう,音楽の世界にはいないのです.いつかあの人に追いつきたい,いつかあの人と同じ場所に立ちたい,いつか,いつか.そんな思いももう,届くことはない.でも,彼は折れませんでした.いまはまだ無理かもしれないけれど,必ずツキさんと同じくらいうまくなって,音楽の世界にツキさんがいたということを刻み付けてやると,決意を新たにします.この瞬間,彼の憧れは彼自身の夢,そして達成するべき目標へと変わったのです.
憧れであったツキさんに追いつくためのTAIYO∞店長の努力と葛藤を丁寧に描くことで,最後の決心が色鮮やかに表現されていると感じました.
(月限定パート終わり)

二人の店長の過去と新たな決意を見届けた後に演奏された曲「Trajectory」.日本語にすると「軌跡」.この曲は二人の経験を描いた曲となっています.

”この世界では,自分なんてちっぽけな存在で,もしいなくなったとしても世界は変わらずそこにあり続けるだろう.これからのことなんて誰にも分らないし,これからを考えられるほどのもの,自分にはないかもしれない.
たとえ何もなかったとしても過去の自分が恥ずかしくないように,昔抱いた夢に届かなかったとしても未来の自分が後悔しないように,ちっぽけなりに泥臭くもがき続ける.他でもない自分のために,自分が歩んできた「軌跡」を,誰かにつなげるために.”

5: Comet

健康店長とTAIYO∞店長によるSUPER BEAVER「自慢になりたい」のセッションを通じてようやくわだかまりが解けたところで,両者の対決がようやく幕を閉じました.つまりどちらかがいなくなることを意味します.ムーブ劇場とライブファクトリーはようやく分かり合うことができたのに,何もかもが遅すぎたのです.だけど,それはすべてオーナーの作戦でした.自分たちの楽しさや夢のためではなく相手を打ちのめすことばかり考えるようになった彼らに初心を思い出させるには,このような過激な手段を取るしかないと思ったオーナーの善意からくる行動だったのです(にしても賭けが過ぎる気がするが…).

彼らの芸術に心が動いたオーナーは,そこにいる観客(我々のこと)に「今回の勝負を無効にし,両方の店が存続すること」を許してもらえないかと懇願します.(もしここで誰も賛同しなかったらどうするのか考えてしまった私はクソ野郎として,)見事に民意を得たことで晴れてムーブ劇場とライブファクトリーは営業を続けられることになりました.その後,両方の店の合同公演が始まり,「今夜彗星ロックに演劇を」の掛け声でこの物語は幕を下ろしました.きれいに終わるね.

公演のタイトルに彗星と入れるだけあって,二人の店長の過去とゆかいな仲間たちの絆,そして両店舗の関係をさっと一本の軌跡を引くようにきれいに描いたなと思います.あの殺伐とした雰囲気そうやって丸く収めるのかが全然予想できなかったです.いいものを見させていただきました.なんというか,ヨルシカのライブを見ているような気分を味わえます(プロの演技や歌と比べるなって?やかましいわ!).

さて,とんでもなく長くなってしまいましたが,以上で観劇レポート(という名の感想,という名の物語の概要解説)とさせていただきます.4800文字も書いてたらしいです.
ここまで読んでいただき,本当にありがとうございました!

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