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ダーウィンの朝
旅の途上日記。
今、ダーウィンに来ている。オーストラリアの北にある、ノーザンテリトリーで一番大きい街だ。
一昨日まで、Townsvilleというケアンズの南にある街にいて、そこからバスで二日間かけて来た。東海岸から、内陸のアウトバックを通って、北の海岸へと向かうルートだ。朝の6時発で、翌日の15時着だから、33時間バスに乗っていたことになる。人生最長記録だ。
飛行機を使った点と点で繋ぐ旅より、陸や海をなぞりながら進む線で繋ぐ旅の方が好きだ。
途中で立ち寄る小さな町や大地や空を知ることが出来るから。
線をなぞって実感した。やっぱりオーストラリアは馬鹿デカい。
Townsvilleを出発してから、10分も経たないうちに車窓はヨーロッパ式の低い建物の連なりから、真っ平らな大地と空に塗り替えられた。
次の町に着くまで、その構図は変わらず、植生と鳥が変数となって、景色を微妙に変えていく。
くすんだ茶色の乾いた大地に、背の低いユーカリであろう樹がぽつぽつと生えていて、時折、背の低い、これもまたくすんだ緑色の茂みの列がそれに加わる。
水を汲むための風車や、放牧されている牛たちが現れては消えていく。
Kite(トビ)が上昇気流に乗って上空高く渦を描いている。
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途中、シロアリの塚が集まっているところを何度か通り過ぎた。
赤茶けた色の尖った三角錐型の塚だ。地面から辛うじて確認できるような小さいものから、一メートルは余裕で超えているであろう大きいものから、大小様々だ。
あの小さな生き物がバスの車窓から"見える"程の大きい建造物を造り上げたことに関心すると同時に、人間社会を宇宙から見たらあんな感じなのかなと変な妄想をしたりする。
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深夜1時にバスの乗り換えがあった。小さな町の小さなガソリンスタンドに乗客全員降ろされて、次のバスを待つ。
バスの乗客はアボリジニの人の割合が多かった。地面に輪をなして座って騒いでいる人の群れや一人じっとタバコを吸っている人などそれぞれの過ごし方でバスを待つ。
野良犬が人々の間を行き交ったり、追い払い合ったりしている。
何か縄張りがあるのかもしれない。白と黒の小さいやつは、足が悪そうだった。
アボリジニの人の英語は聞き取るのが難しく感じる。英語じゃないのかもしれない。唯一聞き取れたのはFucking Shit!!
肌の白い人がこんなにもたくさんいることに不思議な感覚を覚える程には、オーストラリアのアウトバックは暑く乾燥した大地だった。
そんなこんなで、家に泊まりなよと言ってくる怪しいアジア系のおじさんを無視しながら、路上に座り込み陽気に歌を歌うアボリジニのおじさんの挨拶にグッドサインを返しながら、ダーウィンのホステルにたどり着く。
ここのホステルはフランス人だらけで、フランス語が飛び交う中にいると、暑いフランスに来たのかと勘違いしそうになる。皆、ワーキングホリデーで来ている人たちだ。
オーストラリアのホステルではワーキングホリデーのフランス人、旅人のドイツ人によく出会う。たまにイタリア人。
フランス人は陽気な人が多く、ドイツ人は日本人と似た静けさを感じる。
2階の階段横にバルコニーがあって、そこの小さな椅子とテーブルで朝ご飯を食べた。
錆びた低い電柱が横に伸びていて、幅の広い道路が緩いカーブを描きながら大きなビルの奥へと消えていく。
地上では、大きなトラックや、乳母車をひいたお母さんが通り過ぎていく。
上空では、Torresian Imperial-Pigeonという大きな白い鳩やLittle Corellaという白いオウムが飛び交う。
オーストラリアに来てから鳥見が趣味になった。
アメリカ人の鳥友達は鳩が特に好きで、彼らを見る度、They are so silly!という。Sillyには、馬鹿っぽくてかわいいというニュアンスがあるらしい。
上空を飛び交うSillyな白いやつらを眺めながらこれもアメリカ人の友達に影響されたピーナッツバターパンを食べる、美味い。
二匹のハエが私の目を盗み見てはピーナッツバターを盗み食いしている。
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この間までいたTownsvilleもそうだが、オーストラリアのあちこちに第二次世界大戦で日本軍が爆弾を落とした街がある。
ダーウィンもその一つで、日本の軌跡があちこちにあるらしい。
それに、私が見たい鳥の生息域でもある。
さて、今日は何に出会えるだろうか。