背徳者の獄

頭がズキズキ痛む、ただのすいかの意識はあまりはっきりしていない。さっきまで何をしていたのか思い出せない。
『ここはどこだ?なんでこんな犬小屋みたいに狭いところに自分がいるのか?』

ただのすいかは体勢を変えようとしたがそれは叶わなかった。椅子に座らされ、両手は後ろ手に縛られている。
足もテープでぐるぐる巻きである。
上半身の衣服は剥ぎ取られ、胸部の二つの乳首にはクワガノンのようなハサミが付けられていた。
それについた線は、見たこともない機械に繋がれていた。

全く状況を飲み込むことができないままぼんやりしていると眼前の扉が開き、あの男が現れた。
そう、牧野有である。

『この男の崇める女と関わったせいで自分は変な奴らに目をつけられて創作活動を妨害される』
『俺の輝かしいキャリアがこいつのせいで無茶苦茶になった』
ふつふつと湧いてきた怒りにより、ただのすいかの意識は完全に覚醒し、顔が熟れた西瓜の果肉のように赤くなった。
そして自分の身に起こっている状況を理解した。
「おい牧野!どういうつもりだ!緋翠さん主演のボイドラを作れなかった俺に対する意趣返しのつもりか! こんなことが緋翠さんと一緒に金曜日の夜に生放送してる女性二人に発覚したらタダじゃ済まないぜ! お前の投稿者生命を告発で終わらせ――タダノ!!?ニュニュ!?!ナ!!?リギャぎ!!!?!!!?!」

突如密室に響き渡るただのすいかの絶叫…牧野は何かのスイッチを入れたのだ。
ただのすいかの左右の突起についているハサミは通電させるために取り付けた代物だったのだ。
気まぐれにスイッチをオンオフされ、一息つく暇すら与えられず、ただのすいかは失禁した。
しかし失禁するということは濡れるということであり、濡れると通電はさらに良くなる。

牧野は殊更顔に喜色を湛えるわけでもなく昆虫のような顔でただのすいかに電気を流す。
緋翠姉貴のボイス依頼受付履歴に余計な傷を付けた汚愚物の終わらない蟻電獄が始まった。