”叶わぬ恋の歌”を科学する【気づいたら片想い/乃木坂46】

気づいたら片想い

「片思い」では安っぽい。「気付いたら」では硬すぎる。
気づいたら片想い
漢字の選び方ひとつとっても、この曲の切ない世界観を描き出している。

(このPVを見て「なぁちゃんが死んじゃう…」って言っていたのはいい思い出だ。)

気づいたら片想い
いつのまにか好きだった
あなたを思うその度
何だか切なくて…
気づいたら片想い
認めたくはないけど
強情になっている分
心は脆いかも…

あの人を好きになって苦しむのが怖いから、無理やり目を背けようとする。
なのに、それでも胸を焦がすような感情はどこにもいってくれない。次第に心のバランスは保てなくなり、想いが抑えられなくなっていく。
ピンと張った糸の方が切れるときはあっけないように、強がっている彼女の心は、ほんのちょっとの刺激で砕けてしまうだろう。

初めからわかってた
いつの日にか好きになる
あなたと目が合った時
本当は予感してた
初めからわかってた
特別な人だった
恋とは与えられるもの
決して抗えない

そして、一度恋心を認めてしまったとき、もう抗うことはできない。
「恋」「運命」この2つのキーワードは、様々なシーンで結びつけられてきた。
運命は、人間の力ではどうにもできないものだ。
出会った瞬間にビビッとくる、運命の恋。たとえそれが、未来の自分を苦しめるものであってもだ。

激情的にも儚くも聞こえる、まさに心の叫びを聴いているような一曲。
物憂げなピアノとバイオリンの音が、さらに哀愁を募らせる。

どうして、恋の切なさを歌った曲は売れるのか。
その角から飛び出してきてほしがる男も、会いたくて会いたくて震える女も、聴く人に共感以上の「何か」を与える。
さらには、平安時代から、切ない恋に悶える歌は人気だった。

思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを

恋というのは、美しい。
ハッピーな恋には、「喜び」という美しさがある。
叶わぬ恋にも、「儚さ」という美しさがある。

音楽というのは、聴いた人にとって、思い出の引き出しのようなものだ。
この曲は、イヤホンを片耳ずつつけて一緒に聴いたあの人を思い出す。この曲は、受験勉強を頑張ったあの頃を思い出す。この曲は、昔一人で訪れたあの場所を思い出す。
それぞれの曲には、聴いた人の思い出が詰まっていて、その曲が聞こえてくると、思い出が溢れてくる。

「悲劇のヒロイン」という言葉もある。
人魚姫、ジャンヌ・ダルク、ジュリエット……
悲劇に終わるとはいえ、彼女らは、紛れもなく物語の主人公だ。
そして、彼女たちを主人公たらしめているのは、叶わぬ恋が生み出す悲しみである。
そのようなヒロイン達に、自分を重ねるところもあるのだろう。

人生で最も美しい出来事と言っても過言ではない「恋」の物語に、彩りを添える音と言葉だからこそ、恋を歌った曲は人の心を打つのだろう。
たとえ叶わぬ恋だったとしても、切なく淡い物語が、僕たちの心を打つのだろう。

気づいたら片想い / 乃木坂46
作詞 秋元康

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大好きな西野七瀬が乃木坂46を卒業してから卒業すると報じられてから3日。
彼女が最初に主役になった曲のことを書いてみました。

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