夜風とぬるいアイスティー【Summer Vacation/sumika】

じめっとした日か、雨が降った日か、それとも、一人の夜か。
とにかく、どこかけだるいぐらいのときに聴くのがちょうどいい。

心地良い
熱さ残るアスファルト
灯る街灯は
夜を始めた

短く区切って改行する歌詞。フランス文学を想起させるような洒落た世界観だ。
歌詞を見てみると、どうやら夜を歌った曲らしい。夏の終わりの心地よい夜風を連想させる曲に仕上がっている。

会いたい気持ちは
昼の陽溜まりに
落として忘れて
ほら、また寂しい
会いたい気持ちは
昼の陽溜まりに
置き忘れたふりして
ほら、また寂しいだけだ

場面は夜、メロディーもどこか妖艶な雰囲気。
なのに、歌詞には真昼を連想させるキーワードがちりばめられている。
なぜか、日差しがさんさんと降り注ぐカフェの窓際にいるようなところを回想してしまう。
けれど、メロディーが耳に入ると、また夜に引き戻される。このコントラストが僕をなおさら切なくさせる。

夜は優しく
僕を包むよ
昼の僕より
大人にさせてしまうよ

大人になって
つかず離れず
温いくらいの温度で僕ら

大人になって
後悔をして
それを「あの頃」と
割り切って
懐かしむのかな

甘酸っぱくてプラトニックで、胸がキュンキュンしてしまうような恋ではない。

制服を脱いで、大人の世界に足を踏み入れて、いろいろなことを知った。
だけど、いや、だからこそだろうか。何かを失ってしまった感覚を、痛烈に思い出させる。
少しずつフェードアウトしていく歌声を聴いていると、まるで本当に失ってはいけない大切なものが消えていくような感覚に襲われる。
不意に「待って」と叫びたい衝動に駆られるが、どこに向かって叫んだらいいのかも分からない。
そうして気付いたら、夏の静寂がまた僕を包む。

"Summer Vacation"
「夏休み」という語が表すのは、きっと大学生の夏休みだろう。
だから、8月ではなく、9月に書こうと思った。
そんな大学生の夏休みも、今日で最後だ。
僕はまた一つ、大人に近付いた。
僕は、どんな大人になるんだろう。ぬるいぐらいの温度の大人になってしまうんだろうか。

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Tachibana
もっとエモいことを書くための養分にします。

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