推しの死は2度目でも辛いなって話

滝口幸広という俳優をご存じでしょうか。
1985年生まれの34歳、昭和顔のイケメン俳優です。
あれ、計算合わねえなって思いましたよね。いえ、合ってるんです。
彼は2019年に虚血心不全でこの世を去りました。だからこれからもずっと34歳なんです。
たしか2019年11月14日の深夜に報道が出て、寝ぼけて変な夢見たのかな嫌な夢だなって思いながら寝たんですけど、翌朝になっても夢じゃなくて、俳優仲間や舞台関係者の人たちの追悼コメントがたくさん出ていて。なんの冗談だよやめてくれよって思いながら戦国鍋のDVDを引っ張り出してきて滝口幸広がメインだったヘアアーティスト毛利を見ながらお酒飲んだのすごい覚えてる。この時点では「戦国鍋に出てたちょっと変なキャラのイケメン俳優」ぐらいのイメージだったけど、鍋自体が好きだったから出演俳優はそれなりに全員好きだし愛着はあったので割と強めのショックを受けていました。

さて、それから2年経った2021年の冬。
我が家の小学生が塾で歴史を習い始めたタイミングで戦国鍋を見せたら、あっという間に鍋から舞台俳優沼まで行ってしまいまして、あまりに底なし沼だからって理由で私がここまで避けてきた「る・ひまわり」の舞台に興味を示すようになり、年末の祭シリーズのDVDを2011年の新春鍋祭りから全部買わされて順に一緒に見てきました。そんでまあ見事に親子で沼に落ちまして。うん、予想はしてた。

新春、大江戸、るフェアあたりまで見て、多分ダッタン人のダッシュ&キックのMVで気づいたんだったと思う。私、滝口幸広の顔がすごい好きなんだ。一度気づいてしまえばあとはとても早くて、愛すべき彼の人柄も後押ししてすっかり大好きになってしまっていました。

で、もう一つ同時に気づいた事があって。あれ?このまま順に見ていくと、途中で滝口の死にもう一度向き合わなければいけなくなるのでは?って。

宇宙人で信長って意味わからん設定の「る典」、美しいぬらりひょんだった「るコン」、ゲスト席でずっとおにぎり握ってた「納祭」、ひどいバイオリンだった「乱舞」、世界一ちょんまげが似合ってた「る年」、衣装さんそりゃないぜと思った2018年「る戦」まで見て、
遂に来てしまった2019年末の「る変」。

先週、DVD見たんです。彼がやる予定だった浅井長政の役は大山真志が代役で、真志は直前まで別のミュージカルの公演が詰まってたはずなのに、きっと滝口当て書きだったであろう台本からちゃんと真志の浅井長政を仕上げてきててあんた本当すごいなって。あと歌上手いなおい。

初日の第二部曲紹介とカーテンコールの座長挨拶で滝口の不在に触れるのまでは想定内だったから心の準備ができていた。いたんだけど、千秋楽前日のマチネ第二部で辻本くんが「お仕置きペガサスだ!」とか涙目でにこにこしながら言い出して完全な不意打ちを食らうじゃないですか。びっくりして目から冷や汗でたわ。ちなみにお仕置きペガサスっていうのは2013年のどりじゃんで滝口が言い出したなんだかよく分からないアドリブなんですけどね。

さて、急逝した好きな有名人といえば私の中ではhideなんですけども、1998年にhideがいなくなってしまったときは、自分が10代だったのもあってなかなかの暗くて長いトンネルをくぐった記憶がある。そのあとX Japanのライブで何度も何度もhideの映像が流れてメンバーとファンとで彼のための歌を歌って、空に向かって名前を呼んで、痛みと悲しみを反復して共有することで乗り越えてきたのだと思ってまして、なんかその頃のことを思い出してしまって古傷が痛むよ。

(モンゴル人アイドルって設定の)ダッタン人のライブで「モンゴルと東京は遠いけど空は繋がってるから離れてても同じ空の下にいるんだ」って滝口が言ってたし、hideは「どこにいても見える月の数は同じ」って歌ってて、もうだいぶトラウマなので、好きな人たちがこの手の事を言い出したら助走つけて口にガムテープ貼りに行きたいと思ってる。

そうだよ。どこにいてもいい。ただ生きていてほしかったよ。名前の通り幸せであってほしい。若いお父さんになって子どもの運動会で大活躍したいってラジオで言ってたじゃんよ。

友人が多かったらしい彼への追悼はSNSやブログに溢れていて、「全然涙が出ない」って言いながら全身で泣いてるような文章を書いてた人、「その瞬間痛くなかったか、苦しくなかったか」っていたわる人、ショックで言葉が全然出てこない人。今は、悲しみのど真ん中にいた当時の人たちの気持ちをなぞって自分の傷口に塩を塗りこむことで悲しみを(勝手に)共有してる段階だから、まだしばらく生々しい傷を抱えて暮らさなきゃいけないなと思ってる。3年経った今でも誕生日や命日にはたくさんの人がメッセージを寄せる。しばらくしたら、私もきっとその段階まで行けるだろう。

ねえたっきー。勝手に迎えた2度目の「滝口幸広がいない世界」は、分かっていたけど、やっぱりほんのちょっとだけ、退屈です。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?