第2 回(全7回) 気候変動の原因と対策を、科学的手法の知識をもとに整理して、すとんっと腑に落ちるようにしたい
書籍やネットで情報は見つけられるけれど、もうちょっと掘り下げたことが知りたいなぁだったり、嘘か本当かわからないものだったり、出典が英語のため読む気力が失せたりします。
たまたま興味を持って手に取った本から、いろいろわかったことを自分なりに咀嚼して投稿します。とはいえ長文になってしまったので、7回に分けて掲載します。今回はその第2回です。
第1回の表題は「腑に落ちるようにします」だったのですがそれは内容次第ですし、そこまで自信がないので今回から「したい」にしました。
6.気候変動の原因
気候変動の大元の原因は地球温暖化です。*1)
(1) 温暖化に最も大きな影響を与える要因は温室効果ガスの一つである二酸化炭素です。*1)
(2)人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がありません。*1), *2),*3)
*1) 「現代気候変動入門」アンドリュー・E・デスラー著、神沢博監訳、石本美智訳、名古屋大学出版会。第4章、第5章、第7章 7.6項
*2)「IPCC第6次評価報告書(AR6)総合報告書(SYR)の概要」環境省 地球環境局 (https://www.env.go.jp/content/000126429.pdf。2024年11月参照
*3)「 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書(AR6)第1作業部会(WG1)報告書「気候変動2021 自然科学的根拠」解説資料」気象庁https://www.mext.go.jp/content/20230531-mxt_kankyou-100000543_9.pdf。2024年11月に参照。第6次評価報告書全般の情報はhttps://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/index.html参照。
7.未来の環境予測
IPCCの最新の報告書CLIMATE CHANGE 2023 Synthesis Report Summary for Policymakersに予測が載っています。*1)
それによると、このまま二酸化炭素が増えれば2050年ごろの地球の平均気温は、産業革命前と比べて2.5℃上昇します。中程度の削減だとおよそ2℃程度上昇します。そしてかなり削減したら1.5℃程度になります。
つまり今30~40歳の人は60~70歳ごろに2050年を迎えます。2023年時点の年間平均気温は、産業革命前と比較して1.1℃上昇しています。いまの社会のままだったら、60代で今より1.4℃上昇した世界で生きることになります。
2020年に生まれた子供は2090年の70歳の時に、二酸化炭素がこのまま増え続けるケースで4℃の上昇、中程度の削減で3~3.5℃の上昇、かなりの削減で1.5~2℃の上昇になります。
この気温上昇でさまざまな問題が引き起こされ、人類の生存が危機に陥ります。
*1) CLIMATE CHANGE 2023 Synthesis Report Summary for Policymakers https://www.ipcc.ch/report/ar6/syr/downloads/report/IPCC_AR6_SYR_SPM.pdf
8.気候変動で引き起こされる問題
気候変動によってもたらされる身近な問題をいくつか挙げます。*1)
農作物が採れなくなる
→食糧不足、農業従事者および関連産業の失業増加北極・南極の氷が溶け、海面が上昇する
→東京、大阪など海に面した都市は水没して住めなくなる台風が大型化し、水害、土砂崩れなどが毎年頻発する
→生活基盤の崩壊海が酸性化し、魚介類が採れなくなる
→食糧不足、漁業者および関連産業の失業干ばつなどで住めなくなった地域から移住しなければならなくなる。国をまたいだ移動も当然あり、場合によっては密航・不法移民が押し寄せる
→社会の不安定化(反移民側の人間が社会不安を煽り排斥運動およびその反発)
これら個別の問題が生じることだけが問題ではないと考えます。より問題なのはこれらが継続することです。そうなると国そのものが崩壊する可能性が高まりかねません。またはその前に戦争が起きることも考えられます。
ここでの崩壊とは文明的な生活が営めなくなるということです。国民の生活が困難になれば税収が減り、税収で維持される救急・消防、警察、医療、教育、介護、地域の復興、国防などの維持が困難となります。
7項の図から、このような問題は数百年先の話ではなく、自分の子供、孫世代など、数十年先に起きうるものです。
この後述べるように、今すぐできる対策はあります。それを十分せず、さらに言えば十分しないという選択を(意図的・無意識的・諦念で)した場合、子供や孫、親戚や友達の子供は、わたしたちをどのように評価するでしょうか。
*1)「現代気候変動入門」アンドリュー・E・デスラー著、神沢博監訳、石本美智訳、名古屋大学出版会。第9章
9.1.5℃目標
産業革命以前の気温より1.5℃を超えないようにする、というのが1.5℃目標の意味です。
正確には「産業革命前の水準から2℃よりはるかに低く抑える」ようにし、「気温上昇を産業革命前の水準から1.5℃に抑える努力をする」です。2015年のパリ協定で決まった目標です。
(1) なぜ2℃以内なのか
過去数十万年の間、地球の平均気温の振れ幅は2℃以内でした。2℃を超えることは人類にとって新しい気候型に移行することを意味します。*1)
10万年の地球環境に長い時間をかけて適応してきた人類が、産業革命からたった500年程度で適応可能になるのかは、直感的に考えれば無理だと思うのが自然でしょう。
(2) なぜ1.5℃が努力目標なのか
産業革命以後に発展した現代文明社会は、過去数百年の間に気温上昇が1℃以内に収まっています。1.5℃を超えるのは現代文明の発展の条件の一つである気温の条件を逸脱するのです。*1)
しかし国連の機関が発表した最新の2024年報告では、目標をクリアするための各国の二酸化炭素の排出削減の取り組みは、全般的に不完全であると判明しました。*2), *3)
*1)「現代気候変動入門」アンドリュー・E・デスラー著、神沢博監訳、石本美智訳、名古屋大学出版会。第14章, 14.2.2項
*2) サステナブル・ブランドジャパン。https://www.sustainablebrands.jp/news/os/detail/1224750_1531.html。2024年11月に参照
*3) “Emissions Gap Report 2024” UN Environment Programme(国連環境計画)。https://www.unep.org/resources/emissions-gap-report-2024。2024年11月に参照
10.まとめ
気候変動の原因は人為的なものです。
これまでの社会の仕組みによって、世界の平均気温は産業革命前から1.1℃上昇しました。この社会の仕組みを続けると、数十年後には4℃上昇します。
その時の世界は現在とは全く異なる状況に陥ると考えられます。
にもかかわらず現在の取り組みは不十分です。
つづく・・・
次回は
11.なぜ世間は深刻に捉えて行動しないのか
12.気候変動懐疑論者、否定論者
の予定です。