少量・少額から、自社用の輸出フローを作ろう
先週、熊本の小さな食品メーカーから「自社サイトに外国の会社から商品を購入したいと英語でメールが来ましたが、どうしたらいでしょうか?」と相談が来ました。
銀行に相談したらSWIFTコードを教えてもらい、「先方(海外企業)はL/Cも希望ですか?一番安全ですよ」と言われたそうですが、海外取引自体が初めてのため、実は物流や書類もよく分からないとのこと。
つまり、「何も分からない」という状態で英語のメールが届き、たまたま私を思い出して相談したということでした。
この会社の商品は全てグラム単位、単価も数百円で、高くても3,000円です。商品の大半は水分をほぼ含まない食品で常温輸送も可能です。
いわば、「小口の航空便で輸出可能」という恵まれた条件を備えており、顧客が確認したいスペックと条件を確認できれば、「全額前払い、EMS」でスピーディに輸出できる商品です。
「信用調査不要」、「航空便発送」、「カード決済」ならSWIFTコード、銀行送金、市場調査は最初から不要です。
多くの日本企業が支払能力、貸倒リスク、決済条件の調査と選定に神経を尖らせている理由は、自社が「全額前払い」をしてもらえない商品を海外に売り込んでいるからで、そうした海外展開の苦労話を聞いた後発企業は、「わが社もリスクに備えないと危ない」と考えがちですが、目的と手段がずれています。
しかし、よほど大型で重い工業製品や機械、設備は別として、地方の中小企業の製品はEMSの最大重量である「30kg」に収まり、出荷金額もカード決済で済む範囲に収まり、商品の特徴は前払いでも不安がないほど分かりやすいものです。
「相手を疑い、取引を警戒し、リスクに備える努力」と、「30kgで収まる商品構成を組み、全額前払いで買いたくなる製品説明を英語で整え、カード決済システムを自社輸出ページに組み込む努力」とでは、どちらが中小企業に適しているでしょうか。
輸出にロマンやスリルは不要で、海外取引だからと背伸びせず、恐れず、自社に合った仕組みを作って対応力を磨いていけばいいのです。
数千円でも数万円でも、自社製品を正確に理解した海外のお客様が「定価で前払い」で購入してくれれば、立派な輸出で、金額、輸出頻度、商品点数はそれから考えていけばいいのです。
自社の理想と現実を無理なくつなぐ「素朴な問い」を持てば、輸出は安全で有望な選択肢です。