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「非社会的勢力」とは何か

私の新刊『激論!コスパ病』の第9章で登場し、自損型輸入の本質を的確に説明した言葉として、各方面から賛同の声が集まっている言葉。

それは、「非社会的勢力」という言葉です。

「反社会的勢力」という言葉なら、誰もがその意味をよく知っていますが、「非社会的」とは、どういう意味なのでしょうか?

反社会的勢力とは、「それまで関係がなかった人」が、あなたに対して、

・身内や公的機関を装って、電話やネットで騙す

・歩いていて、すれ違ったら肩がぶつかったので恐喝する

・前方を走行している車を危険な運転で煽り、停止させて言いがかりを付ける

といった一方的、威圧的で強引な理由を押し付けて、「おまえとおれは関係ある」と脅して、金品を強奪する違法行為を行う人達です。

その他、誘拐、みかじめ料、美人局(つつもたせ)もこれと同じなのは、言うまでもありません。

要するに、反社会的であるとは、暴力や詐欺による違法、脱法、不法行為を通じて、「関係ない」を「関係ある」にする態度です。

現代はインターネットやAIの発達で、これまで関係が生じることがなかった遠隔地、離れた世代や社会的階層との間にも、思いがけない犯罪によって突然、奇怪な関係が生じます。

「関係」という言葉の意味を考えれば、反社会的であるとは、ある社会を構成してきた人間同士の自然で有機的な関係に不自然な妨害を加えることで社会に損害を与え、自分の利得を図る態度であることが分かります。

では、反社会的という言葉の前提を共有した今、「非社会的」という言葉は、一体、どんな意味になるのでしょうか?

反社会的(antisocial)な態度が「関係ないを関係あるに変える態度」であるなら、非社会的(unsocial)な態度とはその反対で、「関係あるを関係ないに変える態度」です。

社会とは種々の関係によって成り立つ人間集団のことで、この原理は当然、私たちの身近な経済活動にも当てはまります。

経済の世界では、原料を生産する「生産者」と呼ばれる人がおり、原料を加工、製造して製品に変える「製造者」がおり、製品を販売する「販売者」がいます。

また、それぞれの段階で専門知識を生かして各工程を支援するコンサルタントもおり、製品やサービスの販売拡大を支援する運送業者、広告業者、金融業者などのプレーヤーもいます。

経済の世界では、大まかに言って「生産者、製造者、販売者、消費者、使用者」の五つの主体が密接に関係しあい、競い合い、助け合いながら、みなで協力して産地、業界、国家の発展のために努力しています。

この「経済社会」に対して、反社会的勢力は前述の行為を通じて働きかけるのに対し、非社会的勢力は、どのような方法で働きかけるのでしょうか。

それは、「関係を断ち切る」という、消極的ながら陰湿で攻撃的な方法です。

例えば、陶磁器が支える経済圏で成り立つ社会に対し、自損型輸入業者という非社会的勢力は、原料、製法、技術、設備、機械、知識、ノウハウ、デザインといった、その裏に多くの人が存在していた関係を断ち切り、各工程をまとめて海外に流出させ、生産、製造、検品という作業を海外で外国人にやらせます。

そして、人件費と製造コストが低い海外労働の成果物を、主にSPAのビジネスモデルによって、「自分の商品だけを扱う店舗」で流通させ、物流や販売という工程も日本社会と隔絶した形で閉鎖的に構築します。

その一方で、彼らは海外の生産現場、国際取引の仕組み、価格設定のプロセスを知らない消費者に対しては、コスパ、プチプラといった言葉を連呼して、「だから、わが社の商品はあなたと関係がありますよ」と宣伝します。

そして、彼らの商品を買うほうが「消費者として賢明な判断なのだ」と信じ込ませ、国産品に対する不買運動、すなわち日本企業、日本経済、日本社会との「関係断絶行動」を起こさせます。

このプロセスは、国内の産地と業界に様々な形で根付き、長い時間を経て発展してきた企業、個人、地域の種々の関係を日本から切断し、消費者を生産者と製造者から隔離させて、日本社会を分断させるという排他的な関わり方です。

要するに、非社会的であるとは、「日本社会と日本経済の生態系の隅々まで、網の目のように張り巡らされ、お金を通じて努力、貢献度、感謝を表現し、伝達しあってきた地域と業界特有の関係」を、片っ端から「関係なし」にしていくことにより国産企業、地場企業を弱体化させ、自社の価格競争力を強めていくという姿勢です。


反社会的勢力と非社会的勢力の違い

たとえば、ダイソーが百円の靴下を売り始めた町では、糸屋さんと縫製工場の関係は消滅し、洋服屋さんと消費者の関係も消滅し、住民と地場産業の関係も消滅するのを考えれば、非社会的勢力が行う事業の「負の存在意義」を、簡単に想像できるのではないでしょうか。

日本でその賃金を払えば、人権侵害、違法労働と非難される低い給料でも喜んで働く外国人に、日本人が心血を注いで作り上げた経営上の財産をタダで提供し、類似品を後出しジャンケンのように作って安く流通させるのですから、これは反社会的勢力とは異なる、新手の社会攻撃手法です。

非社会的勢力から非社会的商品を買うという、非社会的消費に慣れてしまった消費者は、じきに、

「どこで作っているかなんて、関係ない」
「誰が作っているかなんて、関係ない」
「どんな歴史やストーリーがあるかなんて、関係ない」
「どんな企業理念から生まれたかなんて、関係ない」

と言い始め、彼らにとって関係あるのは、

「いかに安くて、コスパがいいか?」

だけになります。

無自覚のまま重症化し、見聞きしただけで伝染して、社会と経済を破壊していくコスパ病とは、実に恐ろしい病気です。

ということで、私が書中で実名を挙げた企業から「コスパがいい」と言って自損型輸入商品を購入する消費活動は、

「非社会的勢力に対してみかじめ料を支払う、反国家的な消費活動」

ですから、今後はこれらの企業、店舗から商品を買わないよう、注意してほしいものです。

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