⑧自損型輸入が教えてくれる日本経済のチャンス
『コスパ病』の第6章では、代表的な自損型輸入業者の実際の企業名を挙げ、三つの分野の売上を実際の決算報告書に基づいて算出、掲載しました。
自損型輸入業者は、もちろん、あそこに掲げた企業だけではなく、他にも無数に存在し、その売上規模、すなわち「被害総額」は私が第6章に記載した総額よりも何倍も大きいのですが、中にはあの数字を見て、自分の所属する業界の自損型輸入業者の売上を計算し、「そっか!」と笑顔になる経営者もいます。
自損型輸入による貿易額は、「日本人消費者が中国や東南アジアに行った海外送金の総額」と見ることもでき、また、「日本人消費者が日本製品に対して行った不買運動の被害総額」と見ることもできます。
ということは、この金額を「遺失収益」、「未実現収益」、「未開拓市場」と見なすこともできるわけで、勘の良い社長さんたちは、「自損型輸入」という、これまで日本経済の議論において存在しなかった画期的で本質的な視点を得て、「自損型輸入がなくなれば、うちはこれくらい儲けることができるんじゃないだろうか?」と想像するわけです。
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自損型輸入商品がなければ、海外に渡らなかったであろうお金。
自損型輸入商品がなければ、自社製品に対して消費されていたかもしれないお金。
もちろん、消費者は「国産」という理由だけで商品を買うわけではないので、お客様に自社製品を買ってもらうには、それなりの努力が必要なのは言うまでもありませんが、自損型輸入商品がなければ、日本人の財布の中のお金は、もっともっと、日本人が日本で作り、売った商品に対して振り向けられるわけですから、こうした素朴な楽観主義はとても重要です。
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日本人の消費者が、日本人が日本で作ったモノに対してお金を払えば、それを売った日本企業の売上と日本人の収入も少しずつ増えていきます。
日本企業の売上と日本人の収入が増えれば、当然ながら、投資、支出、消費も増えます。
日本企業が日本企業に投資し、支払い、日本人社員に対して給料をより多く支払えば、他の日本企業が作ったモノもより売れやすくなり、経済全体のお金の流通量が増えます。
補助金に頼らずに生産、製造活動を行え、金融・財政政策に頼らなくても民間主導でカネ回りが良くなり、値下げや特典に頼らずに消費を刺激できれば、買い物という営みが壮大な国づくり運動と化し、私たち日本国民は、物心両面で豊かさの奪還に確信を得るでしょう。
そのためには、自分が属する業界の自損型輸入の被害総額をざっと算出し、その経済効果を簡単に割り出してみることです。
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景気に「気」の字があるように、経済はそんなちょっとした期待で上向くものです。
コスパ、プチプラを謳う商品は、日本人を助けているのではなく、貧しくしているのです。
まずは目を覚まし、無駄な海外送金をやめ、自損型輸入商品の購入をやめましょう。
自損型輸入商品の概要、性質、影響を知って購入をやめれば、私たちは30年前よりずっと賢い消費者になれ、お互いを豊かにしあっていくチャンスを掴めるのです。
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