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「入社1年目だけど起業したい」 上司による”挑戦できる環境づくり”の大切さとは
JTBのイノベーション創発プロジェクト「nextender」では、起業や新しい事業の創造を目指す社員のために、さまざまな挑戦機会を提供しています。その機会のひとつが、「Venture Builder」、本気で社内起業を目指すプログラムです。JTBが持つアセットを最大限に活用し、イノベーション創発に必要な知見と経験をもった外部パートナーとチームを組みながら、社内起業に挑戦します。
この「Venture Builder」に、入社1年目で挑戦したのが小松沙吏です。今回は「新入社員にはハードルが高くないのか?」「普段の仕事との両立はできるのか?」「周囲のサポート体制は?」など、その挑戦を間近で支えた上司2人にも参加してもらい、それぞれの本音を聞いてみました。
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大学院で観光マーケティングを学び、卒業後は総合リゾート運営会社に就職。1年間の勤務の後、第二新卒として2024年、JTBに入社。現在は、大阪第二事業部で法人営業を担当している。社会人2年目。
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大阪第二事業部 営業第三課長として課員11名をマネジメント。「自己成長、自己実現の追求」という課の基本方針を大事にし、課員の成長をサポートしている。
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大阪第二事業部の事業部長。「失敗を恐れず、挑戦する姿勢を持ち続ける」をポリシーに、事業部の責任者として、社員の挑戦と成長を後押ししている。
入社1年目で社内起業に挑戦した理由
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——中途入社したJTBで1年目、さらに社会人としても2年目という早いタイミングで「Venture Builder」に応募したのは何か理由があったのでしょうか?
小松:大学院で観光マーケティングを専攻していたのですが、在学時、ゼミで女性起業家と話す機会があったんです。そのときから起業には漠然とした興味を持っていました。そして、私の祖母が交通過疎地に住んでおり、自動車の運転免許を返納してから買い物など日常の移動に不便を感じているのを身近に見ていたので、高齢者のモビリティに関わる事業を立ち上げたいと思っていたんです。できれば自身の手でこの課題を解決したい。でもまだ1年目だし・・・としばらく悩んでいたのですが、最終的には「2年目は2年目で現業の責任が重くなっているだろうし、挑戦するなら今しかない!」と考えて、上司の矢木さんに相談しました。とはいえ、応募を希望してもさすがに承認してもらえないだろうな、という気持ちも正直ありました。
矢木:小松さんの挑戦意志を聞いたときは、純粋に嬉しかったですね。私がいる営業第三課のアクションプランでは、「自己成長と自己実現の追求」という項目を掲げています。私は仕事と個人の成長が密接に作用しあい、好循環を生むことがとても重要だと考えており、定期的な面談を通じて各社員のキャリアプランを一緒に考えるようにしています。例えば、今担当している仕事が将来的に、どのようなスキルや経験につながるかを示したり、選択肢を広げるための情報提供やサポートを行ったりしてきました。今回の小松さんの挑戦は、まさに自己実現を追求しようとしていると感じたんですね。嬉しかったし、私が理想としているマネジメントを彼女が体現してくれるとも思いました。
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周囲のサポートのおかげで乗り越えられた
——それでも入社1年目での挑戦とのこと、葛藤もあったのではないでしょうか。
小松:そうですね。新入社員として現業にも不慣れななか、現業の業務を覚えながら、「Venture Builder」で成果が出せるのか。自分が挑戦することで、周囲の人々に迷惑をかけてしまうのではないかという不安はありました。そこで大きな支えとなったのが、矢木さんのサポートです。
矢木:営業第三課には11名のメンバーがいます。まずは小松さんが「現業との両立を目指したい」と考えていることを、課のメンバー全員に話しました。その上で、「チーム全体でサポートしていこう」と伝えました。円滑なサポート体制を構築し、彼女が両立を成功させることは、組織全体の成長にもつながると判断したからです。
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小松:矢木さんが初めにチーム全体に説明をして、頼れる場所を作ってくれたことは大きな支えになりましたね。もちろんプレッシャーはありましたが、過度なプレッシャーを感じることなく、より主体的に挑戦できる環境を整えてもらったと思います。
例えば「Venture Builder」で事業案の検討がうまく進められず、落ち込んでいるときに、先輩社員が「最近どう?」と気軽に話しかけてくれたり、課のメンバーが「ご飯でも行く?」と声をかけてくれたり。おかげで、「こんなところで沈んでいる場合じゃないな」と思うことができました。チームのみんなが自分の状況を理解してくれていると感じて気持ちが楽になりましたし、「応援してくれている周りの人たちのためにも、両立の約束を果たしたい」「目に見える成果を出したい」と前向きに考えられるようになりました。
失敗を恐れず挑戦する姿勢を受け入れる
小松:「Venture Builder」ではまず第1ステージとして、自分が考えた事業案について、顧客が本当に存在するか、市場において本当に需要があるか、徹底的に仮説検証を繰り返す「Boot Camp」に臨みます。厳しいフィードバックに心が折れそうになったことも、一度や二度ではなくて。特に現業の繁忙期と重なったときは、すごくプレッシャーを感じました。
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矢木:近くで見ているだけで、私たちにもその苦労が伝わってきていました。起業や事業開発というのは、失敗を重ねながら学び、課題を乗り越えていくものです。小松さんの事業が成功するかはわかりませんでしたが、仮に失敗したとしても、その経験が成長のきっかけになり次の挑戦にも生かせるだろうとは思っていました。あとは、社内のプログラムのひとつなので、裸一貫で外部の環境に放り出されるわけではなく「Venture Builder」の運営チームとしてサポートメンバーがついていることは、安心して見守ることができる理由のひとつだったと思います。
——仲野さんは事業部長として、小松さんの挑戦をどのように捉えていたのでしょうか。
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仲野:小松さんの「Venture Builder」への挑戦は、事業部全体にとっても必ずプラスになると思っていました。というのも、JTBグループは近年、新しい挑戦に積極的な風土が醸成されていますが、これは新型コロナウイルス感染症の拡大時に旅行や観光が制限され、新たな事業を模索する必要に迫られたことが契機となっています。実際、大阪第二事業部でもさまざまな挑戦を推進した結果、昨年から今年にかけて120%増の業績を達成していました。そのため、小松さんの取り組みについてもあまり特別なことだとは思わず、「これからもこうして挑戦の輪が広がっていくのだろう」という気持ちで静観していました。
イノベーションは組織全体で取り組むもの
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小松:正直、「Venture Builder」に挑戦しているあいだは何度も壁にぶつかりました。それでも諦めずに最終プレゼンテーションまでたどり着くことができたのは、間違いなく周りのサポートのおかげです。「たとえ失敗したとしてもそれが次のもっと大きなチャレンジにつながる」と受け止めてくれる周囲の理解とサポートがなければ、この挑戦はできませんでしたから。
矢木:JTBでは今、「Swing the Bat」というキーワードを大切にしています。経営層からもよく発信されるのですが、「ビジネスの機会を見逃さず、リスクを恐れずに積極的に挑戦する」という考え方です。ビジネスの世界では、常にさまざまなチャンスが巡ってきますが、それを生かすには、最適なボール(事業機会)を見極め、適切なタイミングでスイングできる洞察力やスキルが欠かせません。
そして、挑戦する人を支え、後押しする文化も同じくらい重要です。組織全体が挑戦者であり、応援団である――そんな風土を育てることが、成長の鍵だと実感しました。
仲野:そうですね、今回の小松さんのチャレンジを通じて、イノベーションは挑戦者本人だけではなく、組織全体で取り組むからこそ実現できるのだとあらためて感じました。これからも我々の事業部はもちろん、JTBグループ全体で一人ひとりの挑戦を多方面から支え合う企業風土の醸成を推進していきたいと思っています。
※イノベーション創発プロジェクト「nextender」詳細はこちら
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