【28】がんへの備えの3つのお金と優先度~『がん保険』のトリセツ~
前回は『本当に心配なのはどこなのか?』というタイトルで、あらためてがんになってしまった時に、どのような費用がどの程度かかるのか?について触れてみました。今回は、その3つの費用の優先度について、一緒にみていきたいと思います。
まさに今、がん保険選択の結論を出そうとしているあなたへ、お届けしたいおはなしです。
がんによる3つのお金とは?
前回見た、がんの3つの費用は、以下のとおりでした。
① 健康保険がきく、標準治療や緩和ケアを受けるための費用
② 健康保険がきかない、自由診療や補完代替療法を受けるための費用
③ 生活の(質の)維持をしていくための費用
①②が治療費で、③が働けず収入がなくなった時の生活費です。実際がんになった時に、①と②のどちらか、もしくは両方を選択するか?また、がんになってしまったことで、いままでどおり仕事が続けられて、収入が維持できるのか?減少するのか?なくなるのか?
これは現時点ではわかりません。すでにがんになった方のはなしを聞いても、その組み合わせは様々です。
この「『がん保険』のトリセツ」は、どちらかというと、30代くらいの、若い世代の方の保険選択に役立ちたい、というコンセプトで書いています。現役(働く)期間の前半で、
これから貯蓄も作らなければいけない
子供の教育やマイホームなど大きなライフイベントも考えられる
世代の方で、万が一のがんで、ライフプランが崩れてしまうリスクがある場合に、それを回避するための適切な保険の選び方を、お伝えすることが目的です。
そもそも保険とは?
よく他のコラムや本などで、
がんは60歳以降にリスクが高くなるから、若いうちにがん保険は、不要
といった意見を目にします。もちろんそれにも一理あると思います。ただ私の考えは、
年を取った後は、がん保険は、不要
です。なぜなら、
引退するまでに資産を作って、がんを含めた様々な経済的リスクへの準備をすべき、その準備をする若い時ほど、がんが起きては困る
という考え方だからです。そもそも保険とは、
確率は低いけど、突然起こってしまったら、経済的に困る
場合にかけるものです。がんは、そうなり得るもののひとつだと思いますし、保険加入は別にして、頭に入れておくべきもの、すなわち『がんを知っておくこと』は必須だと思っています。
優先度の考え方
そういった考え方で、3つのお金の優先度を考えた時、結論から言うと
③ 生活の(質の)維持していくための費用
① 健康保険がきく、標準治療や緩和ケアを受けるための費用
② 健康保険がきかない、自由診療や補完代替療法を受けるための費用
の順かなと思っています。いくらがんの治療費がかかると言っても、それ以上に収入を失って、暮らしが成り立たないことの方が、経済的損失が大きいと思います。養っている配偶者や子供がいればなおさらです。
ですから、元気に仕事に復帰できる方もたくさんいらっしゃいますが、20%が離職している(第26話『がんのお金は治療費だけ???』参照)現実は無視できません。また、最初は仕事に復帰できても、再発・転移の際にはどこかで限界が来るかもしれません。
次に①ですが、日本の医療のルールでは、やはり標準治療が基本ですので、この治療にお金がかかるということは、軸にしておいた方がいいと思います。もちろん、自分で納得して治療を選択することを知っていただくために、この「『がん保険』のトリセツ」を書いてきましたので、①と②はどちらもあり得るという優先度でもいいかもしれません。
ただ、治療費よりも生活基盤の方が、私は大切だと思っています。
生活費と治療費で、1,000万円
前回3つのお金について、大雑把に金額面なども触れましたが、
生活費が、20万円×24か月(2年)で、区切り良く、500万円
標準治療の費用は、再発・転移での長い戦いで、300万円
自由診療、補完代替療法は、いくらにでもなる
といった感じでした。上の2つを合わせて、800万円そこにプラスアルファで、1,000万円というのが、がんになった時の必要資金に対する、私の考えです。その1,000万円に対し、すでに貯蓄で準備できている(がんの費用に回しても構わないもの)額を引いて出た額が、保険でカバーすべき金額です。
生活費まで考える必要はあるのか?
治療費は標準治療だけでいいのでは?
など、ご意見は当然あると思います。ただ、がんというと治療費のことしか発想が沸かない、つまりすべてのがん患者さんが、仕事は今までどおりという前提の人も多いのかと思います。もし、保険の担当者がそうだとしたらそれは問題です。
あなたの担当者はどうだったでしょうか?
すべて保険をかけなければいけないということではなく、起こり得ることを
見える化すること
が大切です。まずはリスクを洗い出して、それ(さきほどの1,000万円)に対し、
半分くらいは保険で守ってもらおう
あとはがんにならないよう予防に努めよう
少し貯蓄額を増やそう
など、いろいろな手段を講じたら良いと思います。
次回は『一般的ながん保険の例』というタイトルで、今回見た3つの費用に対し、一般的ながん保険でどの程度カバーできるかということに触れていきたいと思います。今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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