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【26】がんのお金は治療費だけ???~『がん保険』のトリセツ~
前回は『がん保険が前提としていることの変化』というタイトルで、現在は『がん=死』ではなく、場合によって『治療が数年単位の長期戦』になる可能性があるといったことについて、触れてみました。今回は、その長期戦になったがゆえに・・・ということについて、一緒にみていきたいと思います。
もし今がんになってしまったら、仕事はどうなるか・・・?そこに不安があるあなたへ、お届けしたいおはなしです。
20%が離職している現実
現役世代で、がんの診断を受けてしまった方のうち、20%くらいの方が、離職をしています。以前よりは少なくなってきているものの、5人に1人の割合です。本当はいけないことですが、いまだに不当な解雇で離職させられている方もいらっしゃるようです。
もし、がんになって離職をした場合、一定の公的保障を受けられるケースはありますが、がんの治療が長期戦となり、それに対しずっと保障を受けることは、制度上、難しいです。
ですから、がんの状態や体調などにより、いったん無収入の状態になる可能性があります。がん患者さんによっては、会社に対して申し訳ないとか、居づらいといった理由で。自ら退職をする方もいらっしゃいます。地域のがん連携拠点病院には、相談窓口があり、社労士さんなどに仕事や会社とどう付き合っていくか相談もできますので、がんで不安がたくさんあると思いますが、
結論をあせらない
こと、がん治療と同じく、選択肢を増やすための情報をとることが大切であると思います。
治療費よりも、生活維持の費用
がんの治療費は、もちろん長期戦になればトータルで大きくなりますが、標準治療を受けている限りは、公的保障である
『高額療養費』を申請することで、月当たりの医療費の自己負担額には上限が設けられ、それ以上は払わなくて良い
という恩恵も得られます。これは、保険証を持っていれば誰でも受けられるものですから、がんで、毎月50万、100万かかることはありません。また、所得が低いほど、また期間が延びるほど、その上限額が低くなる仕組みになっています。
ですが、生活費は簡単には下げられません。おそらくレジャー費は下がるでしょうが、そこはおそらく治療のための交通費等、諸雑費と相殺されるかもしれません。
万が一収入が無くなったケースを想像してみてください。貯蓄でどの程度耐えられるでしょうか?
難しい再就職
いったん退職してしまったものの、がん治療がうまくいき、体力も戻ってくると、再び働きたい、稼ぎたいとなると思います。再就職活動を行った時に、がん患者さんが最初のチェックポイントとしてお悩みになることが、
ご自分のがんのことを伝えるかどうか
ということだそうです。もちろん、現在が元気であれば問題ないと、採用には影響しない会社もあります。その場合には、その後再発した場合なども、理解していただける可能性も高いのではないかと思います。また、ご自身もカミングアウトできて、スッキリできると思います。
一方、採用側から、ハッキリ『がんだから・・・』と言われることはないですが、不採用という結果が続いてしまうと、公表することをためらってしまうかもしれません。ただその場合、がんはたいてい3か月に1回など、経過観察で、平日に受診する必要がありますから、そのあたりの事情を会社側に理解を得られない可能性があります。
また、現実問題として、
がん患者さんの再就職は厳しい
という声が多いので、国はがん対策基本法の中でも、がん患者さんの就労支援について、課題としてあげています。
5%の方が、治療を変更、または断念している
収入を失うリスクというのは、がんだけではないですから、やはりここに対する備えは、貯蓄をしっかりしておくことが第一です。ただし、今の日本では、貯蓄のない世帯もたくさんあることが現実です。がん患者さんの約5%は、お金が原因で
治療を変更または、断念している
そうで、その傾向は若い人の割合が多いようです。
婦人科系のがんは、20代~40代で非常に高い罹患率となっています。まだ収入がそれほど高くない時期で、貯蓄もそこまでできるわけではありません。その場合は、やはり保険をかけておく選択もありだと思います。
①がん入院費用保険
②がん標準治療費用保険
③がん治療費用保険
④がん保障保険
がん保険の4つのタイプがありましたが、このケースでは、①~③はほとんど機能しません。なぜなら、治療を受けたことに対してお金が払われる、すなわちそのお金は治療費にまわるからです。ですから、がん保険の使命(目的)を、生活の維持とするならば、④のがん保険でなければなりません。
まとまった一時金(その金額は家計状況に応じて設定)を受け取って、それを一定期間の生活費にあてていくという考え方です。
今回は、治療費だけではないがんのお金、ということを見てきました。どこを見るかによって、がん保険の選択は変わってきます。
今がん保険に加入しようとしているあなたへ。あなたの保険の担当者は、こういった話をしてくれてから、商品の提案をしてくれているでしょうか?
次回は『本当に心配なのはどこなのか?』というタイトルで、前に見た『4つのがん療養』と今回の『生活の維持のための費用』を、総合的にに触れていきたいと思います。今回もお読みいただき、ありがとうございました。