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タイ自動車業界、販売・生産減少と中国メーカーの台頭で厳しい状況

2024年10月4日、タイの自動車業界は販売および生産の減少に直面し、中国メーカーとの競争が激化しています。一方で、電気自動車(EV)市場の成長が新たな展望を提供しており、これらの動向はタイ経済全体にも大きな影響を及ぼしています。


販売と生産の減少

タイ中央銀行(BOT)が発表した2024年8月の経済金融報告によると、同月の自動車生産は前年同月比で20.6%減少しました。特に国内市場向けのピックアップトラックと乗用車の生産が大幅に減少し、日系メーカーの市場シェアは73.3%まで低下しています。新車販売も前年同月比で25%減少し、4万5190台にとどまりました。この減少は15カ月連続の前年割れとなっており、1トンピックアップトラックの販売が39.2%減少したことが主な要因です。

関連情報:自動車産業以外にもゴム・プラスチック業界や家電業界の生産減少が工業生産指数の低下に寄与しています。

出典:JETROビジネスニュース


中国メーカーとの競争激化

中国の自動車メーカー、特にBYDオートはタイ市場での存在感を強めており、販売台数が32%増加しています。これは、積極的な値引きキャンペーンや新モデルの投入により実現されたもので、日本メーカーは市場シェアを失うリスクに直面しています。特に、BYDの高級EV「騰勢(DENZA)」シリーズは、タイ市場でも人気を集めており、今後のさらなる成長が期待されています。

関連情報:中国メーカーのEV戦略が日系メーカーにとって大きな脅威となっており、特に現地新興EVメーカーの幹部からは「日系部品メーカーは外す」との声も聞かれています。

出典:日経エクスパット テックコラム


EV市場の成長

EVの販売は16.0%増加し、新車販売全体に占める割合は16.9%に達しました。中国メーカーが主導するEV市場の成長は顕著で、環境意識の高まりと政府の支援策が後押しとなっています。タイ政府もEV普及を促進するためのインセンティブを提供しており、これが市場成長を後押ししています。


経済全体への影響

タイ中央銀行の報告によると、民間消費や投資も減少傾向にあり、観光セクターの鈍化や消費者信頼感指数(CCI)の低下が自動車業界に対する負の影響を強めています。8月の外国人観光客数は296万3,100人となり、前月比で6.7%減少しました。特にマレーシアや中国からの観光客の減少が観光収入に影響を与えています。民間投資も前年同月比で3.7%増加したものの、機械装置の国内販売や商用車の登録数が減少し、前月比では3.3%減少しました。


まとめ

タイの自動車業界は、販売減少と中国メーカーとの競争激化という厳しい課題に直面しています。しかし、EV市場の成長が一部を支えており、持続可能なモビリティへの転換が進行中です。今後、業界はさらなる競争環境の変化に対応するための戦略的な取り組みが求められるでしょう。タイ経済の回復とともに、自動車業界も新たな成長軌道に乗ることが期待されます。