Platignum Studio という万年筆について
はじめまして、farと申します。noteは初めての投稿です。
タイトルの通り、Platignum Studio という万年筆をご紹介します。
プラチナじゃなくて、プラティグナム
万年筆のことを少しでも知っている方だと、このタイトルを見て「プラチナ万年筆(Platinum)のことじゃなくて?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。今回ご紹介するのは1919年にロンドンで誕生した Platignum(プラティグナム)社 の "Studio" という万年筆です。
「Platignum」で検索をかけても Studio を取り扱う通販サイトが出てくるばかりで公式サイトがなかなか出てこないのですが、現在は以下になります。
100年以上の歴史があるのですが、どうやら2007年に Snopake(スノーペイク)というメーカーに買収されたようで、現在は会社としての存在はなくなってしまっているようです。
現在 Platignum の名前で販売されている筆記具は全6種類、Studio は Tixx, Vibe と並ぶ3種類の万年筆のひとつになります。
Studio について
わたしは2014年にカキモリさんの店頭で購入したものと、昨年国内総代理店の The Wind さんから再購入した2本のホワイトを所持しています(昨年再購入した理由については後述します)。2014年当時もビタミンカラーのカラーバリエーションがあり、クラシカルな見た目が多い万年筆が並ぶ中ではひときわ異彩を放っていたのをよく覚えています。
ペン先はステンレススチール製のM字、軸はアルミニウム製でかなり重量感があります。手元でカートリッジを含めて重量を計測したところ28gと出ました。
ペン先は固く、力をかけてもしなりはありません。重量を含めて重めの筆記感に部類されるかと思いますが、カリカリとした筆記感はほぼなく、文字で書くとするならば「つぬり」と表現できるような独特の滑らかさがあるように感じます。
グリップはアルミニウムの軸とは異なる素材になっており、柔らかさはありませんがさらさらとしたさわり心地で、万年筆の向きや回転を変えやすくなっています。
金属製で存在感があるので、こんな感じでPC周りのデバイスと並べても存在負けしないキャラクターの強さがお気に入りです。
インクは Platignum 社の専用カートリッジ式(品番50519, 50520)で、インクの種類は黒と青の2種類があります。粘度のあるインクで、これもまた「つぬり」感を高めているように感じます。その分乾くのは少し遅めです。
Studio にはこの専用カートリッジの入手がとにかくしづらいという問題点がありました。2014年当時に都心の大きな文具店のほとんどを探し回ったものの一軒も取り扱いがなく、最終的にネットで注文するほかなかったと記憶しています。
一部通販サイトでは欧州規格との互換性ありとの記載もありますが、これも当時色々試したものの、押し込みの際に壊してしまうのでは?と心配になるぐらいの力を要したため途中で断念をしました。
消耗品の入手に手間がかかるとなると常用のモチベーションも下がってしまい、入手から3年ほど使った後は長く引き出しにしまい込んでしまっていました。
本国に正規コンバーターが存在した
転機となったのが昨年のことです。数年ぶりに文房具愛あふれるコミュニティに触れる機会があり、長らく引き出しにしまっていた Studio を復活させるべくカートリッジをポチろうとしたところ、関連商品に「プラティグナム コンバーター」の表示が。
……理解に30分を要しましたが、ポチるまで30秒もかかりませんでした。
後日届いたコンバーターをさっそく試してみると、それはもうびっくりするくらいユルユルで不安になる装着感。胸ポケットに差したりデスクに置いたりして家の中で使用感を試し、インク漏れはしなかったものの、持ち歩きをするには圧倒的に不安感が勝りました。
日本語で書かれた Platignum の情報を総洗いするかのごとく改めてインターネットを調べ上げましたが、日本人の中にコンバーターの存在に気づいている人は誰一人としていないようで、2014年当時から増えた情報は一行もなく。
「これはもう本社に問い合わせるしかないぞ」と腹を括るに至り、Snopake 社へ拙い英語で問い合わせを送ってみることにしました。
3日後にいただいたお返事がこちら。
……まさかのニアミス!
また国内総代理店の The Wind 社のご担当者さまとも繋いでいただき、日本語で以下の情報をいただきました。
つまり、「2014年以前の Studio はコンバーターに適合しておらず、また万年筆自体に年式を確認する方法が存在しないため、国内ではコンバーターの正規取り扱いがされていない」というのが現状の背景のようです。
このお返事を受けて、The Wind さんの公式通販で Studio を買い直すことにしました。これが前述の Studio を2本所持している理由になります。
年式の正規の見分け方は存在しないことを改めて明記しておきますが、私の所持している2本には
ロゴの印刷位置が、2014年以前のモデルは軸、2014年以降のモデルはキャップ
ニブの刻印が、2014年以前のモデルは何もないが、2014年以降のモデルには「LONDON 1919 M」と刻まれている
というふたつの外見の相違点がありました。
書き心地や重量は変化ありません。買い直した Studio ではコンバーターもしっかりとした装着感がありインク漏れの不安感も払拭され、純粋にアップデート版として楽しめるようになりました。
最後に
この記事は Snowpake 社、The Wind 社の二社より親身にお返事いただいた内容をもとに作成をしています(内容の公開許可もいただいています)。
拙い英語で送った文章でしたが本国 Director 自らのお返事、しかも「Kon’nichiwa!」で始まり「Arigato.」で終わるメールに思わずキュンとしてしまいました。数年ぶりの文房具愛の再熱に火をつけたきっかけであることに間違いはなく、(こうして公開するまで実はけっこうな時間を置いてしまったのですが)是非この note を通して、いろんな方に Platignum Studio を知ってもらえたら、と思います。