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呉市長を補佐しながら防災や地域再生の経験も生かしたい。~広島県呉市副市長に就任した大水敏弘さんにインタビューしました~

こんにちは。JSURP副会長/広島支部長の木村静です。
このたび、JSURP賛助会員の大水敏弘さんが、2024年7月、広島県呉市副市長に就任しました。副市長のお仕事や、呉市に感じている可能性や展望について聞きました。


大水敏弘(おおみず・としひろ)さん
広島県呉市副市長
1970年生まれ。一級建築士・技術士(建設部門)、再開発プランナー、防災士。1993年建設省入省後、水戸市都市計画部長、岩手県県土整備部建築住宅課総括課長等を歴任。岩手県庁勤務時に仮設住宅建設等の業務に当たり、2013年4月から大槌町副町長を務めるなど、災害対応の陣頭指揮をとる。著書『実証・仮設住宅』は不動産協会賞などを受賞。2024年7月から現職。

市長を補佐しながら防災や地域再生の経験も生かしたい

ーこれまでの経歴と副市長の仕事について教えてください。

 私は建築職で、国交省で都市整備関係の仕事をして、岩手県庁に出向していた時に東日本大震災がありました。その後、沿岸の大槌町で副町長として復旧復興関係の仕事をしました。他にも、茨城県水戸市の都市計画部長や、長崎の諫早市で副市長を経験しています。前職はURで密集市街地の整備担当、そして今回の呉市です。国家公務員としては地方自治体勤務が非常に多く、今回で5回目です。

 副市長は、市長がやりたいことをサポートする「黒子」です。トップが言っていることを踏まえ、部下が具体的な仕事ができるよう調整する。これをやりたいというのは、ある意味持たないポジションですが、これまで取り組んできた防災や、地方都市再生の取り組みの経験は生かせればと思っています。

呉市街近傍から見た瀬戸の島並み

呉の可能性と課題

ー呉市に感じている可能性は?

 非常に環境が良く、恵まれています。人口が20万人ありますし、呉市中心部だけでなく周辺には島もある。瀬戸内海に面した風光明媚な都市で、海軍の歴史もあります。呉といえば全国の人が知っていて知名度も高いし、広島市からも来やすい場所です。もっと来てもらって住んでもらって、という流れができたらいいですね。

ー課題はありますか?

 日本製鉄という大きな企業が抜けました。産業が抜けると、どうしても関係企業含め働き先が減り、外に働き先を求めて人も減っていきます。ただ、やはり環境が良いので、呉に住むことを選んでもらえる、あるいは企業にも立地してもらえるよう取り組んでいきたいと思います。

独特の雰囲気を形成している旧軍港エリア(呉市内)

仕事のポイントは社会課題への関心と行政経験

ー副市長という仕事のポイントは?

 社会課題に関心があることが大事ですね。いろいろな課題が上がってくるなかで、それはこのように考えたら?という話ができる必要があります。

 市役所の仕事は、市民生活に関わる「全部」です。ワクチン接種、ゴミの回収から、道路や河川の整備まで。全てが市民生活に直結し、自分の生活にも直結する。それが国のやることにもつながるわけですよね。だから、ニュースに出てくる全ての話題が仕事に関係してきます。そういう意味では、私は基礎自治体ほど面白い仕事はないと思っています。

 あとは、行政経験も大事ですね。私の場合は、全国を渡り歩いてきた目から、こういうこともできないか?と言えるので、そうして呉の市政をより良くしていけたらと考えています。前職では、開発することが仕事でしたが、それと比べたら、とてつもなく分野が多岐に渡ります。その全般を見て改善点を考えて、実行できるのは有難い仕事だと思っています。

合併地域に人を。島々の魅力を生かして活性化したい

ー将来的に成し遂げたいことは?

 呉では、中心部だけでなく、周辺地域を活性化したいですね。大和ミュージアムは有名ですが、そこから先の周辺の島々にも、もっと行ってほしいんです。島の環境は、やっぱり素晴らしくて面白いイベントもあるので、魅力を感じてくれる人が増えてくれればいいですね。呉は、いくつもの町が合併して20万人都市になったのですが、もともと町だった地域の活性化ができればと思います。

呉市の夕暮れ(安芸灘大橋)

ライフワークとして防災の取り組みを

 元日に起きた能登半島地震の直後から、私はJSURPのタスクフォースとして、現地の情報提供をしていました。それが現在のJSURPの能登復興支援にもつながったので貢献できたと思っています。石川県には復興の専門家が少ないのが課題です。しかしそれが復興の支障になってはいけない。呉にいながら、能登のことも気になっています。ライフワークですから。

 岩手県大槌町では副町長として東日本大震災の復興に取り組み、URでは密集市街地の担当として、東京の防災について専門家と議論をしてきました。防災に関する知見が身についていた中で能登半島地震が起きました。個人での活動には限りがありますが、現地での復興が円滑に進むように応援していければと思っています。

 ただ、地方で災害が起きると、とにかく人が足りない状態になります。防災庁をつくるという話もありますが、今回の能登半島地震の状況を踏まえて、今後国も対策を考えていかなければならないと思ってます。

ー国の防災の取り組みはどのように変わると良いでしょうか?

 東日本大震災などこれまでの災害の知見を生かしてほしいです。東日本大震災後は、国を挙げて復興と言っていましたが、能登半島地震においては、その知見が十分生かされていないように感じます。県のレベルでは災害対応が初めてということも多いでしょうから、国を挙げての取り組みが必要ではないかと思います。

 南海トラフ地震などを考えると、災害に対するリスクは今も高まっています。土砂災害など近年の災害は地方で起こっていますが、決して東京が安全というわけではありません。日本という国の構造を考えると、人口が東京に集まっていること自体がリスクなわけで、災害リスク低減のためには、東京一極集中ではなくできるだけ分散した方がいいとは思います。

相手の気持ちを考え寄り添うこと。それが復興にも、まちづくりにも大切

ー最後に、大水さんが仕事をする上で大事にしていることを教えてください。

 相手がどう思っているかを意識することですね。いろいろな環境の人がいますからね。企業勤めでも順調な方もいれば、そうでない方もいる。高齢の方もいれば、子供もいる。さまざまな環境の中で生活している人がいるわけですよね。相手の置かれている状況をよく考えるよう心がけています。

 被災者支援もそういうことだと思います。被災者支援策を打ち出したとしても、それぞれの被災者に寄り添う取組が全然できていないと思うことがあります。被災地の課題に対して都市計画の専門家は何ができるのか。知見を持っていても、個々人の置かれた状況に対して寄り添うことができないと解決に至らないのではないかと思います。個々の被災者に配慮した取組の積み重ねが、まちづくりにもつながっていくのだと思っています。

ー大水さん、ありがとうございました。大和ミュージアムは、2025年2月中旬〜2026年3月末まで、リニューアルのため休館します。読者の皆さんには、それまでにぜひ、呉の中心部と島々を巡ってみていただきたいですね。

(木村静/Jsurp理事(副会長・広島支部長)・NPO法人ETIC)

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