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【実行団体紹介】シャンティ国際ボランティア会(東京都新宿区)

本記事では、2020年度の休眠預金活用事業「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成」事業を経て実施した「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成2」事業の実行団体について、ご紹介しています。

取組紹介内容:外国人への包括支援と拠点構築事業


1)団体の概要

 シャンティ国際ボランティア会は、1980年にカンボジアの難民キャンプでの教育文化活動に端を発する国際NGOです。
 これまでに、東南アジアを中心に幅広い事業を展開しています。また、国内においては1995年1月に発生した阪神淡路大震災に際し、被災地での物資配布初動調査、子どものスペースや女性向けシェルターの開設、心のケアなどに取組み、以来、国内外での緊急人道支援にも取り組んでいます。
 シャンティとはサンスクリット語で、平和或いは静寂を意味する言葉です。

2)取組み概要

 東京都豊島区において外国人を対象とした相談会を2021年から開始しています。本資金支援による助成は2年目であり、食料支援と一緒に行う相談会、個別相談、個別支援を実施しています。社会福祉協議会や居住支援法人等との連携、弁護士による相談を行っていることも特徴のひとつです。

3)相談会

 食料支援と併せた相談会を毎月1回開催しています。この活動は2021年度から開始し、2024年12月までに34回を開催、延べ1,000人以上が相談を受けています。本年度は相談会を7回開催し、各回30~40組の参加者がいて、各回の半数程度が新規の参加者であり、相談者の数は増え続けています。

 相談内容は、在留資格、仕事探し、借金の問題などのお金のこと、住居の確保、労働環境や賃金、家族や子育て、日本語学習、行政手続き、医療など多種多様で、複数の悩みが重なっていることが多くなっています。相談員にはCSW、弁護士等がおり、専門的なサポートを行い、外国人支援者も参加しています。

 相談会の入り口で「今日は何を相談しようか」と問いかけるコーディネーターの役割は重要です。相談者も自身も何から相談したらよいのか整理する必要があり、その日に相談出来ることは限りがあります。相談は様々な要素が絡まっていて、問題点を解きほぐすことが必要になります。

 相談会の告知は、豊島区民社会福祉協議会より、特例貸付対象者約200名に対して案内を発送しています。相談会に多数の相談者がくるのは、食料支援があることも大きく、相談会を終え帰るときにはお米等の食材を渡しています。食料支援の効果は相談会に足を向ける強い動機にもなります。中には食料を貰うことを目的にやってくる人もいるのかもしれないが、相談会に参加することで、自らが認識していなかった課題に気が付く機会になるかもしれない。それは課題の早期発見と解決にもつながります。

 また、相談を受けることで、日本に居住する外国人のニーズが把握でき、こうした相談会では緊急性の高い問題に答えることは勿論、役に立つ情報を得たいというニーズもあることがわかります。生活するためのリテラシーが高まることで安心して暮らせるようになるのではないでしょうか。

相談会の様子

4)子どもの居場所づくりとの連携

 相談会と併せて子どもの居場所(アートワークショップ)を開設するというユニークな取組みもありました。相談会はシャンティ国際ボランティア会が開催し、子どもの居場所は一般社団法人カルチャライズ(居住支援法人)が開催しました。小さな子どもがいる相談者が落ち着いて相談できるための取組みです。相談会の会場が、課題を抱えた外国人子育てファミリーの「居場所」としても機能していることに感銘を受けました。

子どもの居場所づくりの様子

5)相談窓口

 今年8月から西池袋IKE Biz内の豊島地域活動交流センターにて「としま外国人相談窓口」を開催しています。これは、相談会とは別に、開催場所を固定して毎週1回程度開催するもので、相談のアクセスを向上し、個別支援の場として、従来の相談会の時間内ではサポートできなかった書類作成などの具体的な相談にも対応しています。

6)個別対応

 具体的な支援については、相談内容についてケース会議を開催して話し合い、相談により吸い上げた具体的な課題に対し、実際に誰がどんなことを支援する方がよいのか、そもそも支援した方がいいのか、支援の継続は不要なのかということを検討した上で、連携団体、もしくは地域の団体に繋ぎその後の対応を進めています。
母子施設入所に向けた同行、各種書類記入のサポート、区営住宅入居サポート、生活保護申請の同行・交渉、住まい探しなど様々な課題に対応しています。公的な制度のメニューはあってもその隙間に入ってしまうこともあります。近年は、家庭の問題、女性が抱える深刻な案件が増えてきている印象があるとのことです。

 相談内容によっては、弁護士によるサポートが必要になることもあり、とくに在留資格に関する課題は難しい内容です。外国人の相談は日本の法律に基づくことだけを追いかけていたのでは埒が明かないことがあり、日本の法律専門家でも分からないことがあるくらいで、外国人の支援者がいることで効果をあげています。コロナ禍により翻弄された外国人は多く、海外での難民問題が遠い外国のことではないことに気づかされました。

7)都営住宅への入居の申請手続きのサポート等

 相談内容には住宅問題についての相談も多いです。在留期間が短い人、就業が限定されている人の住まい探しは難しく、都営住宅の入居相談会を2回(5月、6月)に開催しました。都営住宅は公営住宅法により供給される住宅であり、収入の基準、同居親族に関する要件、現在住宅に困窮していること等の入居条件があるが、低廉な賃料(公営住宅では使用料という)で借りることができます。更新料もなく、外国人が入居することも可能ですが、入居申請のための書類づくりは外国人にとっては難しく、抽選に当選しても入居の手続きは分かりにくい。住宅政策として支援メニューがあったとしても、それを活用するためのハードルは高く、具体的な支援はとても有効です。

 こうした支援制度の申請手続きについての支援ニーズは多い。他にも、例えば、東京がはじめた018サポートは、子供ひとりに月5,000円の現金給付をする制度だが、外国人にとって、申し込み手続きはとても難しく、一緒にサポートしながら個別支援を行っています。

8)今後の展開

 シャンティ国際ボランティア会の村松清玄氏に今後の展開についてうかがうと、「先ずはコーディネーターを増やしていきたい」という。現在、外国人コーディネーターが3人参加しているが、地域にいる外国人の方にも支援する側になってもらい、一緒に活動に参画してもらえるようにしていきたいとのこと。そして、「1回の相談だけではなかなか心を開いてくれず課題が吸い上げられないこともあるので、何回も何回も地域で継続して活動する必要がある。」ともいう。相談活動を効果的に行うには継続していくことが大切になります。
 そして、相談会は、相談者の居場所であると同時に、支援者のスキルアップの場でもあり、「オフィシャルな形で窓口を作り、これを一つのモデルとして他の地域にも波及させていければと思っている。」という。

9)まとめと今後の課題

 相談窓口、個別相談は、問題を解決してあげる場ではなく、相談者と支援者が一緒に、何が問題なのかを考え、一緒に悩み、一緒に解決していくための場であると感じた。そのためには、継続できることは重要だと思った。相談活動を引き続き継続し、専門性の高い支援を行うためには資金についての課題は大きい。多文化共生と暮らすことの課題解決に向けて、行政との連携、公的な資金による対応は是非とも必要だ。外国人の課題について理解し、寄り添う支援が必要なことについて、広くコンセンサスを得ていくことが必要なことは言うまでもない。

(露木尚文/株式会社住宅・都市問題研究所)


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