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【実行団体紹介】認定NPO法人まなびと(兵庫県神戸市)

本記事では、2020年度の休眠預金活用事業「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成」事業を経て実施した「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成2」事業の実行団体について、ご紹介しています。

取組紹介内容:共生型の地域を支える外国人人材発掘伴走型支援事業


1)団体概要

 認定NPO法人まなびとは、2013年に任意団体として神戸市中央区北野エリアで活動を始め、2014年から小中高校生の放課後学習支援を開始。同年にNPO法人を取得しました。 “全ての人にやりたいことが見つかるまでの「待ち時間」を提供する”をミッションに、日本語教室、学童保育、ちいき食堂の運営、子育て家庭支援、外国ルーツの子供たちの居場所づくりなどに取り組んでいます。

 本事業では、神戸市内の日本語学校に通う外国人留学生を対象に、食糧の配布や、生活相談、居住支援を通じて、地域で活躍する人材を発掘・育成し、共生型の地域づくりに貢献することと、団体の活動を継続させていくための組織基盤強化を目指しました。

2)背景

 外国人留学生は、週28時間までのアルバイトが認められているが、日本語があまり話せないうちは、深夜の工場や飲食店のキッチンなどで働くことが多くなっています。アルバイトは、来日してから探すため、自分の特性や生活リズムと合わなかったり、職場の人間関係や雰囲気が合わなかったりという理由で、最初の内はなかなか安定して働ける先を見つけることが難しいのが現状です。また、外国人留学生は社会の中では弱い立場にあり、景気が悪くなったり、日本人の就労者が増えたりすると、勤務シフトを減らされてしまうこともあります。

 まなびとの調査では、留学生の多くは、1週間に25時間程度のアルバイトで月の収入は10~12万円程度でした。一方で、支出は学費と住居費が多く、学費は1か月6.5万円程、住居費は寮や友達とのルームシェアなどの工夫で、2~2.5万円。残りの3万円で食費などを賄っているようです。

 まなびとでは、これまで留学生と関わるなかで、彼らは潜在的には活動的で社会貢献力があるにも関わらず、生活が安定せず、住む地域の人と関わる経験が少ないため、地域課題を解決するアクションを起こすことができず、むしろ地域課題を生み出す存在として認識されている状況を改善したいと考えました。

3)本事業での取り組み

 留学生が本事業を通じて地域と関わり続けることができる環境づくりの仮説は以下の3ステップです。

①    食糧支援をきっかけに、
②    まなびとの活動に参加し、
③    定着して次の留学生を支援する。

 毎月開催する食糧の配布の際に生活相談を行い、ニーズを聞きました。「日本人の友達がほしい」「日本語が上手になりたい」という声が多く、まなびとの活動であるスポーツイベントや、日本語教室、ちいき食堂などに声をかけました。大半の留学生は、食糧支援のみで次に進まないが、事前申込時のアンケートフォームの改善で、次のステップを求めている留学生と直接対話して呼び込むことができました。
 また、事業を進めるなかで、外国人留学生にとって、「こうなりたい」というロールモデルの必要性が見えてきました。そして、他団体や神戸市役所で働く外国人へのヒアリング調査から、国籍別など複数のロールモデルを提示できることが望ましいと考えました。

この間、①②とステップを重ね、まなびとの活動に参加した留学生の例

  • 将来、日本の飲食店で働きたいペルー人留学生が、ちいき食堂の活動に毎週参加し、地域の人と一緒に晩御飯を作って食べるようになった

  • ミャンマー人留学生が、母子世帯向けの食料支援ボランティアに毎週関わるようになった

  • 3名が学童保育施設のインターンとして参加した

  • 本事業を通じて新たな連携先企業となった酒蔵の植樹イベントや、酒蔵開放イベントに通訳としてボランティア参加した

 また、留学生支援活動の地域への周知と、支援者増を目的に実施したクラウドファンディングでは、230名から約400万円の資金調達ができました。

<活動の実績>
・食糧支援13回 1411人
・居住支援ヒアリング 38人
・国際交流イベント20回 外国人留学生74人、日本人学生43人の参加
・生活相談308人、アンケート調査52名
・ボランティア登録32名
・日本語教室参加 6人
・ボランティア研修12人
・寄付者数 208人4,018,000円

食糧支援の様子

4)今後の取り組みと期待

 留学生が地域と関わる仮説の3つのステップとして、前述の①②は実証できました。その際に、詳細なヒアリングで課題と意向を把握し、意向に応じてボランティアやインターンシップ等の活動につなげることで、一部の留学生については、③まで到達することができました。

 今後は、留学生が将来に向かって主体的に動き出すことや、まなびとの活動に定着して他の留学生を誘い支援したり、留学生が地域の企業で働いたり、地域活動に継続的に参加したりできるような支援を行い、より多くの留学生の自己実現につながることが期待されます。
 そのためには、留学生と地域の企業や活動団体をつなぐコーディネーター的な役割が重要になると考えられます。

 また、この間、まなびとは、複数の休眠預金等活用事業を活用し、新しい拠点を整備しながら、組織基盤を強化してきました。大学生時代にボランティアをしていたスタッフが有給スタッフとして戻り、複数の新規雇用スタッフを交え、改めて団体のビジョン・ミッションも整備しました。活動開始から10年、事業規模を拡大し新たなステージへ進んだといえます。
 複数の拠点があることで、多くのステイクホルダーとの関係性が育まれる環境を生かして、たとえば、留学生と子どもたち、留学生と子どもの親が勤める企業、留学生とちいき食堂を支援したい企業など、多くの新しい関係が生まれ、ロールモデルの輩出と、まなびとの活動を持続させるための新たなビジネス創出に繋がることが期待されます。

さらに、それらの拠点があらゆる人のセーフティーネットの場となり、人材育成の場ともなり、訪れた人が望むひと・もの・ことと繋がる場となることで、多文化共生のシンボルとなることも期待されます。

生活相談の様子

(木村静/Jsurp理事(副会長・広島支部長)・NPO法人ETIC)
(山本一馬/Jsurp理事・街角企画株式会社)


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