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【実行団体紹介】住みまーるOKINAWA(沖縄県宜野湾市)

本記事では、2020年度の休眠預金活用事業「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成」事業を経て実施した「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成2」事業の実行団体について、ご紹介しています。

取組紹介内容:OKINAWA住みまーる!プロジェクト~沖縄における在住外国人の住環境と地域コミュニティ支援

コロナ禍収束を見込んだ外国人雇用に対する需要が急拡大する中、入居拒否等で住まいが確保できない在日外国人が顕著に増えています。そのような状況に直面した外国人材紹介企業と当事者から相談を受けていたNPOがコンソーシアムを形成し、不動産業界や行政と連携して、在日外国人の住まいマッチングの実践と機運づくりやしくみづくりに取り組んだ沖縄県内での実践です。


1)団体の概要

住みまーるOKINAWAは、以下の2団体によるコンソーシアム(共同企業体)です。

① NPO法人沖縄NGOセンター

 国際理解・開発教育、沖縄移民・世界のウチナーネットワーク、多文化共生をテーマに教材の出版や県内の教育機関、生涯学習施設等において市民を対象とした出前授業やイベントの企画運営を行います。

② 株式会社DREAM CONNECT

 在留資格「1号特定技能」を中心とした外国人材紹介事業をはじめ、在住外国人支援の在り方や多文化共生社会構築のためのイベント企画運営しています。その他県内における外国人材雇用の課題に関する提言を行っています。

2)コロナ禍およびコロナ禍収束に向けた課題

 コロナ禍中の沖縄では、休業等により、一方的に契約を解除され自ら受け入れ先を探すしかない技能実習生や、県外の監理団体による月1回の面会の機会を奪われ、特定技能への在留資格移行について数カ月返事をしてもらえず不安を抱えた在住外国人が生じていました。そんな中、彼らの不安を共有し、地域住民との関わりをもつ拠り所になればと日本語サークルの運営支援を行っていたのが、住みまーるOKINAWAのメンバーです。

 その後、2022年には、コロナ禍収束を見込んだ観光需要の増加によって、外国人材の雇い止めや就職困難な状況から、外国人雇用に対する需要が急拡大に転じ、新規入国者の水際対策の緩和も相まって技能実習生や特定技能人材の雇用増加が顕著となりました。

 このコロナ禍中の離職や貧困から転じて、新たに生じた課題が、「外国人お断り」等入居拒否による在日外国人の住まいの問題です。
 例えば「就職は決まっているが、専門学校卒業後即座に学生寮からの退去を求められ、あと1週間で寮を退居しなければならず住居確保に奔走する留学生」、「外国人雇用を決めたものの住居確保が進まず不動産事業者を訪ね歩く受入企業」等からの相談等が生じました。また、中間管理者を介さない在住外国人は自分自身で住宅探しから交渉・契約の手続きまで行わなければならず、日本語の言葉の壁や、日本独自の賃貸契約や手続きの複雑さによる制度の壁が賃貸契約に至るまでの障害となりました。

 こうした背景には、不動産会社や家主が漠然と抱える外国人との賃貸契約への不安や知識不足に加え、家賃未払や滞納があった際の保障、文化の違いや言葉の壁による住民とのトラブルや、問題が起こった際のコミュニケーション等への対応への懸念がありました。

3)取組概要

 これら、在日外国人の入居拒否をなくし、必要とされている外国人人材の住まいの確保を速やかに進めるために、以下の取組みが行われました。

  1. イベント開催等を通じた課題の共有と機運の形成

  2. 住まいを求める在日外国人や中間管理者と意欲的な不動産事業者とのマッチング

  3. 住まいのマッチングに役立つコミュニケーションツールの開発

  4. 在日外国人の住まいの問題を解消するネットワークの構築

4)イベント開催等を通じた課題の共有と機運の形成

 以下の座談会や勉強会を通じて、当事者の他、不動産オーナー、不動産業界、支援団体、行政等で課題が共有されました。特に、不動産オーナーや不動産業界に課題に対する認識が低かったことが改善されました。また、マスコミ(沖縄タイムス、琉球新報)に延べ5回報道されたことで、周知が拡大しました。

5)住まいを求める在日外国人や中間管理者と意欲的な不動産事業者とのマッチング

 多数の問い合わせや相談対応を経て、計6件の賃貸契約が成立しました。

6)住まいのマッチングに役立つコミュニケーションツールの開発

 イベントの様子や多様なインタビューのもと、プローモーション用ショートムービーを作成しました。
 また、当初は、独自のパンフレット等の作成を予定していましたが、事例調査、ヒアリング等を通じて、かながわ外国人すまいサポートセンターのマニュアルが有用であることが明らかになり、活用されました。

活動プロモーション用ショートムービー

7)在日外国人の住まいの問題を解消するネットワークの構築

 継続的なイベント開催を通じて、行政(沖縄県住宅課、浦添市建築営繕課)、不動産業界(浦添・⻄原地区宅建業者会)、在日外国人の中間支援組織、不動産オーナー等とのネットワークが形成されました。

8)成果と今後の方向性

 4つの取組みを通じて、在日外国人の住まいの問題が大きな課題であることが共有され、マスコミ報道もあり、沖縄県内で周知されました。特に、在日外国人の物件の仲介経験が少ない事業者も含めて、不動産業界に課題が共有されたことは予防的対策という点でも意義が大きく、具体的な不動産マッチングの成功事案も生じました。また、かながわ外国人すまいサポートセンターへのヒアリングと現地訪問を通じて、居住支援協議会という枠組みを通じて、行政の支援のもと支援団体と不動産業界が連携して取り組み、大きな成果が生じていることを知り、ひとつの課題解決の方向性が見出されました。

 一方、神奈川県での取組みは、公営住宅や民間の空き家住宅が少ない沖縄県内での現状から、すぐさま導入することは困難なことも明らかになり、伴走支援を通じた団体との協議のもと、今後は、以下に取り組む方向となりました。

  1. 支援ネットワークの組織形成と収益も得ながら外国人の住宅問題解消に取り組む事務局組織の設立

  2. 不動産仲介時に役立つマニュアルや仲介時の立会、通訳等の支援メニューの体系的な整備と気軽にアクセスできるポータルサイト等の立ち上げ

  3. 仲介、暮らしのサポート等を行うモデルとなるシェアハウス等の供給

 無理は禁物ですが、多様な分野で外国人人材の担い手確保需要が高まっている中、神奈川モデルに次ぐ、新たなモデルとして全国の課題解決の先導が期待されます。

(山本一馬/Jsurp理事・街角企画株式会社)

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