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【実行団体紹介】NPO法人 Peace & Nature(兵庫県神戸市)
本記事では、2020年度の休眠預金活用事業「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成」事業を経て実施した「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成2」事業の実行団体について、ご紹介しています。
本事業は、神戸市北区の里山地域で、20年に渡ってグリーンリーダーの育成を進めてきたNPOが、新型コロナウイルス禍に際して、山村エリアにて農村環境の再生と外国人の就業機会の創出を行い、共に学び、暮らせる多文化社会づくりを目指した活動です。
取組紹介内容:山村エリアにて外国人が働く仕組みの構築
1)団体の概要
2003年に設立されたNPO法人Peace & Natureは、未来のグリーンリーダーの育成を目的に、国内外の子どもたちに対して、健全育成を図るとともに、農山村の活性化と都市と農村の交流を促進し、平和で自然環境に恵まれた地球の創造に寄与する活動を進めてきました。
イラン出身のリーダーのBahram Enanloo(バハラム イナンル)氏は、地球の平和と環境をテーマに「子供たち、次世代の人たちのために、豊かで持続可能な地球環境を共に作ろう!」との想いで活動に取り組んでいます。古民家を再利用した拠点のある神戸市北区大沢町を中心に、外国人や若者とともに、里山保全(休耕地・空き地・旧道の再生、竹林整備など)を進めることで、外国人が地域に貢献・交流しながら地域と良好な関係をつくっています。
当団体では、これまで39カ国の外国人が活動してきましたが、日本に残り仕事を望む優秀な留学生が就職できずに帰国せざるを得ない状況を見てきました。そこで、大沢地域にて外国人が持続的に働ける環境・仕組みづくりに取り組みました。
2)今回の取組み
本事業では、無農薬で作ったお米、野菜、ハーブ及び竹などを原材料として、外国人のアイデアを取り入れながら、新たな商品を開発して販売する仕組みを作ろうと試みました。併せて、地域内の倉庫を借りて、外国人メンバーとともに商品の開発・製造が行える作業場をDIYにて完成させ、オリジナル商品の開発・製造、収穫した農作物の販路拡大を進めました。
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オリジナル商品として、バーベリーや米粉から作る「ペルシャン パウンドケーキ」を開発し、地元産のお米、SDGs活動への協力企業の商品(香寺ハーブガーデンのハーブティー、西村コーヒー)を詰め合わせたギフトセットとして、地域ショップ(3店舗)やイベントでの出店などでPR・販売しました。また、大沢町特産の産物を活用し、株式会社神戸酒心館の協力の下、神戸芸術工科大学のデザイン学科の学生達がオゾリバプロジェクトを通じて、今年もおにぎり(おむすび)や酒などの商品開発に挑戦しました。
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並行して、安心安全な「食」を提供するため、無農薬で、棚田米、野菜(枝豆、玉ねぎ、ゴーヤ、冬瓜、カボチャ)、ハーブ(レモングラス、ミント、ローリエ)づくりを行ない、販売しました。
お手伝いという立場で、酒米の稲刈り、地域の草刈り、野菜の収穫などの農作業や竹伐採等に参加した外国人達は楽しみながら技術を習得し、地域住民とコミュニケーションを図りながら、日本の文化について学ぶ機会となりました。
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また、Facebookで週3~4回、日本語・英語での情報発信に取り組み、フォロワーが4,772名(Instagramフォロワー542名)となりました。
3)伴走支援の概要
日夜、農作業やSDGs研修の受け入れを行いながら、作業場を地元企業から借り受け、DIYで完成させ、商品開発・販売まで多くの関係者からのサポートを受けながら、着実に進められました。2020年度に続いて、2回目の伴走支援では、主に事業運営や会計業務についてのサポートを行いました。
4)取組の効果と今後の展望
同団体は2023年度神戸市SDGs大賞を受賞しました。20年間に渡りSDGsのコンセプトがない時代から、外国人と日本人や多様な幅広い年齢層が一緒に活動していること、大沢の地域に根付き、食や環境の取り組みを広く展開してきたこと、また大学、学校、企業、地域、行政が協働し、パートナーシップを実践していることなどが評価されました。
こうした歩みの延長として、今後は、Z世代や子ども達が活躍できる「新しい教育の現場」をつくっていくことで、里山地域の活性化に寄与することを目指しており、その中で、外国人も安心して働ける受け皿体制づくりを進めていこうとしています。リーダーの人間力・先見性に導かれながら、外国人も日本人も互いに学び、助けあうコミュニティを形成し、おだやかに多文化共生の地域づくりが進められている。これからの里山地域の希望の星になってほしいと感じる取り組みです。
(藤江 徹/あおぞら財団)