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【実行団体紹介】NPO法人多文化フリースクールちば(千葉県四街道市)

本記事では、2020年度の休眠預金活用事業「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成」事業を経て実施した「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成2」事業の実行団体について、ご紹介しています。

取組紹介内容:脆弱な少数言語の人々への支援と自宅学習者へのサポート体制の構築


1)団体概要

 『NPO法人多文化フリースクールちば』は、2014年から外国につながる子どもたちの学びの場と居場所を保障し、高校進学を支援する活動を行っています。日本語教育の資格保持者と元教員などの教育の専門家が年間200~220日程度、外国につながる子どもたちに対して日本語だけでなく、英語、数学を教えるほか、高校に進学するための多言語による進路ガイダンスを千葉大学等県内の複数の会場において開催しています。

2)活動概要

 母国の中学卒業後に来日したり、日本の中学校を卒業した既卒生、高校進学条件を満たせず夜間中学校に通う外国につながる子どもを中心に、年間を通じて週5日4時間の授業を行っています。また、他団体との協働活動を通じて、高校進学・生活などについての情報発信のハブ的な役割も担っています。

授業の様子:「わたしの町」の発表会

 本助成を受けて、公的支援が全く及んでいないアフガニスタン人やスリランカ人等の子どもを対象に、引き続き学習支援を行うとともに、母語による情報提供や教材・教育法の確立と普及を行うべく事業を実施しました。

新型コロナ災害緊急支援
Ⅰ① ダリ―語等希少言語による情報提供(学校からの連絡文翻訳集・交流本など)
Ⅰ② 希少言語による「大学進学ガイドブック」の翻訳・提供
Ⅱ① スクールに通えない子どもや入会待機者へのカリキュラム・テキスト等の提供と学習指導(オンライン授業を含む)
Ⅱ② 地域の日本語教室等に通えない一般の人々へのカリキュラム・テキストの提供と指導ボランティアへのサポート
Ⅲ 「高校生のための進路ガイダンス」実施

3)具体的な活動支援内容

Ⅰ 希少言語による情報提供

 「学校からのおたより」(例、入学式のお知らせ、健康診断のお知らせ、災害時引き渡しカードなど)をダリ―語版に翻訳し、本団体HPに掲載するとともに、全国で希望する学校やボランティアへ配布しました。

「学校からのおたより」から「水泳カード」

 さらに、「交流本」は愛知教育大学が作成した「幼稚園・保育園ガイドブック(交流本)」をベースとしていますが、本団体が活動する地域の保護者、保育園・養護教員などに聞き取りを行い、その意見も反映し、希少言語での作成を進めています。

 高校卒業後の進路に係る情報を母語で入手し、自分の将来を幅広く考えることを目的とした「大学進学ガイドブック」には、入学試験の方法、志望校選びのチェックポイント、受験や入学に係るお金のことなど多岐にわたるものとなっています。このガイドブックは進路ガイダンス、アフガニスタン生徒やスリランカ生徒が通う高校へ配布し、活用されています。
「学校からのおたより」「大学進学ガイドブック」はいずれも本団体HPからダウンロード可能。

Ⅱ スクールに通えない人たちへのカリキュラム・テキスト等の提供と学習指導、ボランティアへのサポート

 本団体の活動の軸であるスクールへの入学希望者は年々増加していますが、全員を受け入れることは困難であり、「待機生」として対応しています。今年度も10月に待機生クラスを設置し、正規クラスに入会するまでの間は、本団体が作成したカリキュラム・テキストに基づき「自宅」で勉強してもらうこととし、3名の講師が週2回、チェックする体制をとっています。
 また、一般の人々へのカリキュラム・テキストも、待機生クラスへの指導をモデルとして、自宅学習用のカリキュラム・テキストを作成しています。今後、ちば自主夜間中学や各地の日本語教室等へ配布する予定です。

Ⅲ 進路ガイダンスの実施

 令和5年7月、外国につながる子どもたちが多い県内の高校等に案内をし、ガイダンスを行いました。約60名の参加があり、メディアにもとりあげられるなど大きな反響がありました。
 また、同年10月には、「日本語を母語としない親と子どものための進路ガイダンス」を中学生世代を対象に実施しました。参加希望者が多く、最終的には13言語の冊子を準備し、千葉県の公立の高校入試制度やかかる費用について説明を行い、200名を超える参加者となりました。

ガイダンスの様子

4)今後に向けた課題

 日本語を母語としない学齢期を超えた子どもたちは急増しており、本団体に期待される役割は引き続きは大きいと考えています。本スクールにおいて高校を希望する卒業生のほとんどが進学しており、さらに大学を目指す生徒もいます。OB・OGとして本団体の活動を支援するボランティアも増えてきています。
 今後の課題としては、オンラインによる授業の実施が挙げられます。事業当初、スクールに通えない子どもや入会待機者に対してはオンラインで授業を行うことを考えていたものの、準備が間に合わず、週2回対面でのフォローアップで対応しています。将来的にはハイブリッドで行えるよう準備を進めています。なお、現在スクールがある建物では大規模改修が行われるが、減築予定のため将来的には利用できないことから、新たな場所を探しているところである。体制強化を図りつつ、さらにニーズに応じた取組を進めていきたいと考えています。

(柳坪めぐみ/JSURP会員・株式会社地域計画連合)

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