【実行団体紹介】認定特定非営利活動法人茨城NPOセンター・コモンズ（茨城県常総市）
本記事では、2020年度の休眠預金活用事業「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成」事業を経て実施した「外国人と共に暮らし支え合う地域社会の形成２」事業の実行団体について、ご紹介しています。
取組紹介内容：孤立しがちな外国籍住民に居場所と出番をつくる～デイホームやシェアハウス運営を通じた多様な仕事の創出～
1）団体概要
茨城NPOセンター・コモンズは、1998年のNPO法成立を受けて茨城県域の中間支援組織として設立しました。NPO法人の設立運営に関する相談や研修を主に行い、2008年のリーマンショック後から外国籍住民の就労や就学の支援を、2015年の鬼怒川洪水で被災してからは災害復興にも取り組んでいます。人々の心の壁、組織の壁を越えて多様性が尊重される社会をつくることと寄付やボランティアによる参加の機会、支え合う関係性をつくることを目指して活動を展開しています。
２）地域課題と取組概要
常総市は2015年の水害で5千世帯が床上浸水被害にあい住宅再建をあきらめた人が町を去ったことで、人口は1割も減少し空き家が増大。また、元々日系ブラジル人などの外国籍住民が多く住んでいたが、水害後に日本人が出ていったアパートに入居したり、空き地に新築する人が増え、人口に占める割合が高まっています。地域の復興にとって、増加する空き家の活用と多文化共生を具体的に進めることが重要なテーマとなる中、当団体はこれまでに7棟の空き家改修を行い、3棟のシェアハウス、コミュニティカフェ、多文化保育園を開設してきました。
本事業では、多文化保育園（はじめのいっぽ）の隣の民家が空き家になり、8棟目の改修を行いました。１階を多世代交流スペースとして整備し、2階を４部屋のシェアハウスとして整備しました。
多世代交流スペースは、当初は、高齢者向けのデイホームとして活用することを想定していましたが、常総市との調整の中で、障がい児者も利用する共生ケア施設としての開設に向けて検討を行っています。
３）具体的な取組
ア）２階部分の改修
シェアハウスとして活用する２階については、間取りを変更し、元の３部屋から４部屋に改修し、２階共用スペースの水回り設備の移設や新たな動線確保を行いました。また、居室の壁紙が想定よりも傷んでいたことから、壁のペンキ塗装や床のフローリング工事が追加され、工期は延びたものの居住環境は格段に向上しました。
イ）隣接する保育園庭に通路を整備
本敷地が、道路に接していないことから、隣接する多文化保育園（はじめのいっぽ）の園庭に車いすでも通れる通路を整備しました。
ウ）２階シェアハウスへの居住者の受け入れと就労支援
改修したシェアハウスには、DV被害で自宅を出た母子世帯や父子世帯など、これまでに5世帯（令和5年12月時点）が一時入居しています。引き続き、受け入れを進めています。
また就労支援として、当団体が以前改修したコミュニティカフェなどでの就労体験を通じて、就労機会の創出や意欲向上等に取り組み、11月には長く引きこもっていた外国の若者がカフェで就労体験をするようになりました。
エ）１階多世代交流スペースの活用方法の模索
申請当初は、高齢者向けの地域密着型サービスなど制度に基づく福祉施設にすることを目指していたが、接道状況が課題となったことから、本事業期間で他の運営方法の模索を行いました。
5月：週2回程度、高齢者の茶話会を実施。気軽に来てもらうために無償とする。
6月：週1回程度、高齢者の茶話会を実施。保育園児も参加し、こどもと高齢者がともに過ごせる活動を検討。
7月：高齢者サロンを２回実施。保育園児も参加。
8月：独居高齢者向けの食事会実施に向けた準備。
9月：食事会（毎週）の開催。独居の高齢男性からはみんなと食べるのが楽しいと好評。
10月：食事会（毎週）の開催。
11月：多世代交流に加え障がい児者も交わる形での運営に向けて準備。また、担い手探しのための映画上映会を開催し、約20名が参加。
４）取組の効果
✓本当に行き場がない人への住居提供と出番の創出
これまでに改修してきたシェアハウスも含めて、外国籍、日本籍を問わず、病気、事故、破産、置き去り、出所、DV被害など、さまざまな経緯で行き場がなかった人に住居の提供ができました。
また、シェアハウスの入居者や外国籍の人の希望を聞きながら、今回の改修工事の手伝いや、カフェ、保育の手伝いや体験などをしてもらい、継続している人には、時給が発生するところまできています。就労不可の人でも、見守りや食事を運ぶなど、役割を持ってもらうことで出番をつくり、社会や他者との接点を作っています。
✓空き家が地域共生の場として生まれ変わる
１階の多世代交流スぺ―スの活用方法を模索する中で、食事づくりが難しい独居高齢者との食事会を開催するなど、地域の交流拠点として利用がされるようになりました。
また、映画上映会では、「高齢者が最後まで住み慣れた地域で過ごせるようにするために、このような場所が作れたらよい」という声も多く聞かれ、国籍や年齢に関係なく集える、地域共生の場として生まれ変わりました。
５）今後の展望
１階の多世代交流スペースについて、運営方法を模索してきた結果、令和６年度から、高齢者のみではなく、障がい児者も利用する共生ケア施設として開設する方向で準備を進めています。また、福祉有償運送の実施について行政との調整を進めています。
（三村隆浩／Jsurp会員・株式会社アルテップ）