転職したら労働マルチだった件


こんにちは、つけめんと申します。
私の昔話を語ります。

もしあなたが転職を考えていたら、今から読むことは心の片隅に置いていただければ書いた甲斐があります。


労働マルチとは
お金や人脈を吸収するのではなく、高賃金高待遇をエサに従業員を集め労働力を吸収するというもの

※自分は10日で逃げました

2020年11月

正社員を退職した。毎週2日は家に帰れず過酷な労働時間な上、残業代も出ないので仕事に対するモチベーションが一気に枯れてしまった。同じ時間バイトしてた方が月給が10万以上上がるんじゃないかという考えでコロナ禍で転職が難しいのは承知の上、自分の時間を持ちたく退職を決意した。

2020年12月

自分の時間を確保できる仕事を探すため、高時給のアルバイトを探すため、某有名バイト求人サイトをチェック
飲食店はコロナ禍で大変だな。あまり影響されにくい職業がいいな

コールセンターはえらく時給がいいぞ、ここにしよう。

土曜日  

指定された時間通り、東京駅付近のとあるビルを訪れた。エレベーターのボタンを押して1階に着くのを待っていると、メール相手から電話がかかってきた。道に迷っていないかの確認。ビルの1階にいることを伝え、オフィスがあるフロアへ上がった。出迎えて頂いたのは、40代男性の会社の社長、この方がメール相手(以下社長)と30代女性社員(以下Aさん)

テーブルを2つ並べた4人程度が入れる会議室に案内された。社長に促され着席。自分の横にAさんが座った。向かいに社長が座り早速面接が始まるのかと思いきや

社長「ちょっと待ってて。」

会議室の中に自分とAさんだけ残して会議室を出ていった。なにか書類の忘れ物でも取りにいったのかと思い、会議室の中を見回していると

Aさん「お名前はなんていうんですか?」

急に喋りかけて頂いたので驚いたが

自分「つけと申します。」
Aさん「下の名前は?
自分「めんです。」
Aさん「めん君ね!よろしく!

テンション高めの挨拶

自分「よろしくお願いします。」
Aさん「めん君は将来の夢ってあるの?」

突然の踏み込んだ質問にびっくりした。いきなり下の名前で呼ばれた。
自分の趣味を話し、それを将来の夢っぽく広げた。

その後も
「今後の展望は?」「どういう人間になりたいの?」「野望は?」

怒涛の質問ラッシュ。全ての質問に答える。今後の展望なんて考えたこともなかったが、自分なりに上手いことトークできたと思う。2人きりにされてから40分以上経っていることを会議室の時計で確認。面接はまだか。

さらに10分くらい自分の価値観や一生の根掘り葉掘りを聞かれたところで話題が急転換した。

Aさん「めん君は信念がある人だと思うから、ここだけの話教えてあげる。応募してもらったアルバイトは“営業職”っていって毎日同じことをするだけのルーティーン。実はもう一つ“総合職”っていうのがあるの。」

ホワイトボードに図を書き始めた。

Aさん「最初は“ビギナー”から始まって、仕事に慣れて知識を増やしていけば“リーダー”になるの。そこで結果を出せれば“マネージャー”。さらにステップアップできれば“オーナー”ってポジションになる。オーナーになれば、最低でも年収1000万円スタート。どう?」

画像1

(こんな感じの画)

自分「……」

いきなり発表された金額に唖然とした

Aさん「どうしたの? なにかわからないことがあったら聞いて?」

自分「”総合職”のデメリットって何ですか? この比較だったら”営業職”を選ぶメリットって一切無いように思えるんですけど...」

Aさん「そうだね、”営業職”は日々学ぶことがあるから熱意がないと続かないってことかな」

自分「そうですか...」

この時点では何を取り扱っている職場なのか一切わからず不安だったが、同じ仕事内容ならゆくゆくは1000万円になった方がいいに決まってる

自分「この話を聞く限り、”総合職”に惹かれますね。」

Aさん「わかった!じゃあ社長にも伝えとくね!」
と言って部屋を出た。
(ちなみに今後働いてからもAさんと会うことはなかった)

数分ほど会議室で一人きりで待機していると社長が戻ってきた。約1時間ぶりに顔を見た

自分の正面の席に座り、
社長「待たせてごめんね。さっきAさんから、めん君は”総合職”に興味があるって聞いたんだけど、間違い無いかな?」

自分「はい」

社長「わかった。ちなみに、めん君はどうして年収1000万円が必要なの?

”年収1000万円が必要じゃない人”なんてこの世にいるのかと思いつつ、将来ラーメン屋とかやってみたいんですよねとそれっぽい理由で答えた

社長「システムの都合上、途中で"総合職"から"営業職"に切り替えることができないけど大丈夫かな?」

自分「はい、大丈夫です」

社長「じゃあ話を進めていくね。この図の通り、初めは”ビギナー”からスタートしてもらう。”オーナー”になるためにはいろいろと商材知識の勉強もしてもらわないといけないの。だから学校に通うという感覚。毎日研修して学んで商材知識を増やしてほしい。普通だったら学校に通うとなったら授業料払わないとだけど、それだと生活できないのでちゃんとお給料は支払います。目安として、月200時間で18万円。」

18 万!?
25万稼ぐ気でいたら18万円になった

社長「でもしっかりと勉強すれば”オーナー”になってすぐに取り返せるから。プロ野球選手でもさ、学生時代はバイトせずにひたすらプロになるために練習してるでしょ。目先だけのお金に囚われて大成した人なんていないから」

自分「......」

社長「何か質問はあるかな?」

自分「営業って、主に何を取り扱ってるんですか?」

社長「うちの会社では売れるものはなんでも売るって考え。質の良いものでもお客さんに知られていない商品って山ほどあるから。納得してもらって買ってもらって、商品をバンバン宣伝していく」

自分「そうですか.......」

つまり何を売るんだろう。営業って? どこに出向けばいいの?
それすらもこの時点ではわからない

社長「他に質問は?」

自分「交通費は出ますか?」

社長「業務委託って形になるから交通費は出してもらう。学校通うのに交通費は自分で出してたでしょ? 大丈夫そう?」

自分「そうですね、1000万円のためですもんね...頑張ります」

”1000万円”というワードが出てから30分程度しか立っていない状態で冷静に考えれてはいなかったが、ちょっとでも面白そうな”総合職”を選んだ
......つもりだった。

自分「振り込みは毎月いつあたりでしょうか?」

社長「翌々月の前半。本当にお金に困ったら言ってね。少額だけど前借りは対応するから」

そんな先なのか。
12月に働いた給料は2月にならないと手元にこない。

これでこの日の話は終わった
合否は明日の朝9時に電話で伝えられるらしい。

社長がエレベーター前までついてきたので、よろしくお願いしますと言って頭を下げ 扉を閉めた。


採用されるかな

翌日 朝9時

電話がかかってきた。

社長「Aさんとも話し合った結果、熱意が伝わってきたので採用です」

採用

いい気分だ

社長「早速なんだけど、出勤日の前に一度商材の説明をしたいから改めて会社に来てほしいんだけどいつが空いてるかな?」

空いてる日を伝え、その日にまた会社へ行くことが決まった。


二度目の約束の日

言われた通りノートとペンを持って時間通り会社に到着
またエレベーター待ちで1階にいるときに社長から電話。向かっているかの確認。

今思えば、マルチと気づいて逃げていないかの確認もあったのかも

オフィスに上がって面接の時に入った会議室に案内された

座った


社長「今日は商材を説明するから。筆記用具は持ってきた?」

自分「はい」

社長「今はマネージャーで3ヶ月後にはオーナーになる予定のB子(年齢不明:見た目かなり若い)が教えてくれるから、頑張って」

と言って部屋を出た。

入れ替わりでB子が入ってきた。

自分「よろしくお願いします、つけと申します」

B子「下の名前は?」

自分「めんです」

B子「めん君、よろしく」

ここで初めてB子から取り扱う商品を聞いた

(内容を書きたいところだが、会社名までわかってしまうので省略)
引っ越すことが決まった人に(ピー)はどうですか?と勧める営業の電話

転居が決まった途端、ウォーターサーバーやwi-fiの契約の電話がかかってくるのと同じアレだ。

B子「今ここではこれを取り扱ってるの。契約会社によって値段のメリット デメリットがあるから当日までに調べてきておいてね。」


だいたい1時間ほど取り扱う商材の内容を教わった。
この時点は特に怪しいとは思わなかった。

ウォーターサーバーの電話がかかってきた人はわかると思うが、あれほどウザい電話はない。
ただ、営業側は悪いものを売ってるつもりは一切ない、
その商材のメリットを一生懸命調べて電話相手にメリットを伝え、購入してもらおうとしている。

そして今から自分もその取り扱う商材を勉強する。

B子「来週の木曜日からきて欲しいんだけど、普段の出勤は9時なんだけど、初日っていうことでちょっと早いけど8時半にここに来て。」

自分「承知しました」

初出勤日 8時30分

なにかマニュアル的なことを叩き込まれるのだろうか。求人サイトには10時〜と書いてあったが、言われた通り8時半前に会社に到着した。
来たはいいものの、誰もいない。社長やB子の姿は見当たらない。
5分ほどオフィスやビルの一階を右往左往していると、30代半ば?の男性〈見た目はゲームクリエイターの桜井政博さんみたい〉(以下 桜井さん)が話しかけてきた。

桜井さん「もしかして今日初めての?」

自分「はい、そうです」

桜井さん「話は聞いてるよ、寒いし中入ろうか」

中へ移動し、オフィスのエレベーター前にある椅子に座った。

桜井さん「名前はなんていうの?」

自分「つけと申します」

桜井さん「下の名前は?

自分「めんです」

桜井さん「めん君ね。ここでは全員、下の名前で呼び合うことになってるの

うげげ。なんやそりゃ。
そういえばA子さん、時々社長のことを下の名前で呼んでいたな...

自分「今日はどうして8時半集合なんですか?」

マニュアル的な説明を受ける気配がなかったので聞いてみると

桜井さん「毎朝9時に”総合職”の人たちが集まってモーニングルーティーンをやってるのよ。そこでオーナーやマネージャーの話を聞いてステップアップする。全員めん君と近い年齢ばっかりだから、初めは緊張すると思うけど、すぐに慣れるよ」

なんということだ。毎朝9時に出勤しないといけないらしい

9時までの時間潰しで、桜井さんと軽いおしゃべり
・将来の夢は?
・どこか行きたい国はある?
・年収1000万で何を実現したい?
・前職は何をしてたの?
などを聞かれた。世間話はしないのか。

「その夢いいね〜」「ここで実現できるね!」などの相槌をもらった。
ただ、すごく感じのいい人。穏やかで、丁寧に仕事を教えてくれそうだな。


初出勤日 9時

時間になったので、そのモーニングルーティーンとやらに参加するため別の建物へ移動。

桜井さん「初めは緊張すると思うけど、安心して。すぐに慣れるから」

自分「ありがとうございます」

会議室に到着。
扉を開ける前から中でわいわい声が聞こえてきて、中には人が大勢いるのがわかった。

入ると、7畳くらいの狭い長方形の会議室に自分くらいの年齢の人が14,5人。全員が手帳やメモ帳を持っている。先輩後輩同士散らばって仕事のアドバイスをもらっていた。

「どうしたらもっと〇〇できるようになるんですか??」「この場合は〇〇を案内すればいいんですね?」などなど

床に置かれた荷物を踏まないように、狭い部屋の奥の壁際に桜井さんと立った

2分後...
社長とB子が入ってきた。
社長「おござま〜す」
一同「おはようございます!!」

その挨拶と同時に皆が足下に置いていた荷物を持って壁際により、円を囲むような陣形についた

B子「はい!それでは12月○日、昨日ベル獲得者を発表したいと思います!」

自分「(ベルって一体なんやねn...)」

一同「ローラーズー!!」

“ローラーズ”の発言と一緒に、曲げた右肘を伸ばしてチョップのような動作をこの部屋の自分以外全員が揃ってした。大声かつマンキンの笑顔で余計に気味が悪い

B子「アキさんで〜す!」

ベル獲得者(?)の名前が呼ばれた

一同「ジュース!ジュース!(拍手)」

アキさん(20代前半女性)は左右に立っている人とハイタッチしている。
自分の横に立っている桜井さんもアキさんに届かない距離からハイタッチのポーズをとって見せた。
“ジュース”の意味がわからないが、賛辞の意味なのだろう

プチパニックになる自分
唯一頼れる桜井さんもハイタッチに夢中で、自分のヘルプを求める視線も気づかない

B子「それでは昨日のハイエストを発表します。この人は最近メキメキと成績を上げてきてて、黙々型ですね。ハイエナのように、皆さんが油断している時にハイエストを獲るという。そのハイエストは...」

一同「ドン!」

また、全員が先ほどと同じチョップの姿勢をとった

B子「ユウコさんで〜す!」

一同「ジュース!ジュース!(拍手)」

次はユウコさん(20代後半女性)が拍手やハイタッチをされた
B子は拍手をし、社長はニコニコ笑顔

・ベル獲得者
・ローラーズ
・ジュース
・ハイエスト
この部屋に入って3分足らずで、異世界に迷い込んだ気分
こんな訳のわからない朝礼の流れがあるなら、それをさっきの待ち時間に教えてくれよ

拍手が終わるとユウコさんが軽く咳払いをし、全員の前で喋り始めた

ユウコ「私は以前勤めていた会社では、生きるために生活費のために働けばいいと思っていました。仕事内容もルーティーン化していて、やりがいは一切ありませんでした。でもこの会社に入ってオーナーになるために、毎日研修の身として 〜中略〜 私に負けて悔しいと思った人はハイエストを目指して頑張ってください。私は負けません。」

軽く会釈をして話を終えた。気持ち良さげな表情
どうやら、ハイエストになった人は全員の前でスピーチできる権利があるらしい。
直後、皆が小脇に抱えていたメモ帳やノートとペンを取り出し社長にへそを向けた

社長「はい、ユウコさんもね、皆さんと同じで実現させたい夢がある身でね、負けないっていう気持ちで毎日やってるんだよね」

これがさっき言ってた"ステップアップするための話"か

社長「この部屋にいる15人の中で1番を目指せない人が、オーナーになって1000万円稼ぎ続けれると思う?」

「確かに」
「確かに〜」
「確かに!」

至る所から相槌の「確かに」が聞こえてきた。
普通の会話の「はい」と返事する感覚で「確かに」と全員が発言している。
イエスマンの「イエス」の感覚で「確かに」

気持ち悪いのが、納得する感じの小声の「確かに」ではなく、皆が声量パンパンなこと。
ぜひ、読んでいるあなたも「確かに」と声量を倍にして言ってみてほしい。それを15人くらいが同時に言ってるんだから、いかに気持ち悪いかがわかってもらえるだろう。
「確かに」の意味わかってんのかな(確かにのゲシュタルト崩壊)

社長「自分がいかに恵まれた環境で働けているのか理解していないと、ここにいる意味がないよね《確かに〜》普通のサラリーマンが年収1000万稼ごうと思ったらどれだけの年数そこに勤めないといけないの?《確かに〜》何年、何十年もしかしたら一生そこで勤続しないともらえない額だよね《確かに〜》何十年勤続したって年収1000万ももらえる会社ってなかなか無いか《確かに〜》そんないい会社に勤めるにはいい大学行かなきゃダメだよね、いい大学行くには?《いい高校〜》いい高校行くには?《いい中学校〜》いい中学校に行くには小学生の時からお受験しないとだよね。遊ぶ時間や寝る間を惜しんで受験戦争のために毎日勉強してたわけ。その時みんなは?《遊んでた〜》いい会社に入れても最初の何年間は雑用。先輩に嫌味とか言われてもお給料のために耐えて耐えて我慢しなきゃいけない。みんなはお受験なんて一切せずに社会に出てきて、今までずっと遊んできてお金もない。言わば”負け組”じゃん?《確かに〜》それなのにたった2年努力するだけでもらえるの。《すごいすごい》だから僕はみんなが羨ましい。20代に戻れるんだったら真っ先にここに入って頑張るよ。だってさ“若さ”っていくらお金を積んでも買えないんだよ?《確かに〜》同じ1000万円でも40代で手に入れるのと20代で手に入れるとじゃ全然価値が違うと思わない?《確かに〜》僕ぐらいの歳だとお金の使い方って保守的になっちゃうけど、みんなはなんでもできるよね。無限の選択肢があるわけ。夢を実現するために好きな使い方ができる。オーナーになればお金もあるし時間もあるわけ。ちなみにここに来る道中 駅歩いてるサラリーマン見た?ゾンビみたいな顔して歩いてるの《笑い》それはなんで?《お金が欲しいから〜》そう、お金のために毎朝通勤ラッシュでもまれてゾンビになってるわけ。毎朝苦しい思いするってわかってて、でもお金が欲しいから我慢してるの。みんなならどう?《耐えられな〜い》(以降20 分ほど喋る)」

なんだこの話は? 商材知識的なことは話さないのか?

この文章は誇張して書いてるわけじゃない。なんだったらまだ書き足りない

この“ありがたいお言葉”を周りは必死にメモを残そうとしている。桜井さんもその1人

社長「じゃあ今日も1日頑張っていきましょう!」

長かった"ありがたいお言葉”も終わり、皆が手帳やペンをカバンに入れて移動の支度をし始めた

桜井さん「めん君、行こうか。どう、緊張した?」

自分「あぁ、いえ...」

愛想笑いで返した。
緊張とかではないムズムズとした気味悪さがあった。


30分後

ビルを移動し、エレベーター前で検温を受ける

桜井さん「めん君ちょっと待ってて」

自分「はい?」

みんなについて行こうとデスクに向かう自分を呼び止めた

桜井さん「このあとは“リーダー”に引き継いでもらうから」

???

桜井さん「俺は新宿のオフィスだから今からそこに行かないと」

??????

自分「今朝自分を会議室に案内するためにわざわざここまで来てくれたんですか!?」

桜井さん「いや、いつもここでモーニングルーティンを受けてから向こう言ってるから"ついで"だよ」

“ありがたいお言葉”をいただくためにわざわざここまで寄って、その後20分かけて新宿まで行くのか

っていうかあなたは私の指導係ではなかったのか

キョロキョロ辺りを見渡して

桜井さん「えーっと、あ、いたいた!アイナさーん!

エレベーターから降りてきたアイナさん(女性:25歳程度)を呼び止めた

桜井さん「アイナさん!こちら今日からオーナーを目指して頑張るめん君、いっぱい教えてあげて」



自分「アイナさんってどうして月収100万円欲しいんですか?」

アイナさん「」


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