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少女たちの決闘遊戯(マージャン)を描いた漫画――「切れぬ牌などあんまりない!」
いつもは咲-Saki-の感想ばっかりNoteに置いてますが何の故か唐突に宇城はやひろさんの東方二次創作麻雀漫画「切れぬ牌などあんまりない!」について書こうと思います。
そもそも二次創作ってどういうこと? つか東方?
先ほど二次創作と書きましたが、この作品は一応は商業作品であって同人誌の類ではありませんし、一般書店でも買うことは可能です。
こと東方Projectの場合はこの作品に限らず商業出版された二次創作漫画の単行本が少なからずあったりもします。
商業出版される二次創作といえば公式アンソロや公式スピンオフのようなものが浮かびますが、本作はどちらかといえば公式スピンオフに近いと言えます。そもそもアンソロではなしに連載という形態ですし。
この作品は本来「東方外来韋編」という公式マガジンの連載ということになっているのですが、実質的には「東方我楽多叢誌」という東方関係の情報やプレスリリース、公式コミックやら二次創作などの連載などが掲載されてるWEBメディアの連載です。ほかにもComicWalkerやニコニコ静画などKADOKAWA系の漫画サイトにも掲載されているのでそれで連載を追いかけることもできます。
東方Projectは元々原作者のZUNが趣味で発表した弾幕シューティングゲームとそこから派生した書籍や漫画などから構成される作品群なのですが「ガイドラインに記載されてる条件と禁止事項と定められた流通範囲を守れば個人でのファン活動としての二次創作は常識の範囲内で基本的に自由」なため漫画に限らず、音楽やらゲームやら立体やら数多くのアイテムが二次創作として流通しております。(もちろん企業が営利目的で行う活動などはガイドラインの埒外であり、発表するためには作者のZUNの許可を得る必要がありますが。)
単にそれだけでなく、ここ数年の東方Projectにおいては二次創作をマネタイズする環境が一段と整備されている感があり(ComicWalkerでの書籍販売の東方同人電書流通や東方アレンジ専門の音楽配信サイトの東方同人音楽流通、他には二次創作ゲームのSteam進出なども相次いでいる。そしていくつかの二次創作ソーシャルゲームまで存在している。)、もはや東方Projectは単なるコンテンツというよりは原作者のZUNが作り上げた世界観やキャラクターを中心軸に数多くの個人や企業が積み重ねた二次創作から構成された、それ自体が「一つの文化」と言ってもいい存在に昇華してきています。
そんな東方Projectの二次創作ゲームのなかには当然麻雀ゲームも存在しており、D.N.A. Softwaresが2009年に発表して以来アップデートを続け、昨年の2020年にはNintendo Switchでの発売にまで至った東方幻想麻雀が有名です。
その「幻想麻雀」ですがもともとD.N.A. Softwaresのスタッフと付き合いがあったこともあって、なんと原作者のZUNさんが直々に楽曲を書き下ろして発表しております。その楽曲についてはD.N.A. Softwaresさんの方がSoundCroudにアップしているのでそちらをどうぞ。
原作者のZUNさん自体が麻雀を嗜まれる方らしく、そのためか幻想麻雀の作中にも隠しキャラやDLCといった形で参戦したりしてます。その際のインパクトはなかなか強烈なので一度ごらんになってください。
シリンさん自身は二次創作のオタクというよりかはあくまで原作プレイしてその世界に浸るタイプのオタクだったので東方の二次創作を取り巻く諸々と距離を置きつつぼーっとウォッチしてるだけの人でした。しかし、そんな東方で二次創作の麻雀漫画の連載が始まると聞いて、一応咲-Saki-のオタクもやってる私が読まないわけにもいくまいかと思ってとりあえず読んでみた次第です。
東方とは「少女たちの遊び」の物語である
いろいろ脱線しましたが肝心の漫画の内容に踏み込んでみたいと思います。内容について個人的な評価をするならば、いろいろな能力を持っている少女たちが麻雀のルールの範囲で頭脳戦やっていくところをハイテンポでやっていく爽快感を楽しめるので東方の知識云々が無くても十分楽しめるところがいいですねって感じです。
でも前の方で解説したじゃんとおっしゃるかもしれませんが、そうした東方の知識のない人でも「東方」という特殊なジャンルについてとりあえず概説でも述べておきたいなぁと思っただけです。
東方Projectにおける「能力」は自己申告制でかつ超能力や異能のようなものから技能やスキルのようなものまで多彩な上、麻雀に対する適性に違いがあります。この漫画の主人公の魂魄妖夢は「剣を扱う程度の能力」を持っていますが、当然剣術を扱う能力なんて直接的に麻雀の役には立ちません。
それだけでなく劇中の妖夢は麻雀に関しては初心者としか言いようがない実力。そんな彼女が点数や役、確率のような麻雀の基本や剣術を通して培った感覚を駆使しながら時々迷いながら、海千山千の能力者たちと戦っていくところが本当に熱いです。
超能力美少女麻雀漫画の金字塔である咲-Saki-においても強力な異能の有無にかかわらず『個人個人の抱えているバックボーンや経験則から導き出された確固たる信念を持っている』雀士は強大な存在として描写されていたりしますが、本作の妖夢にはそれに通じるものがありますね。
それに加えて、「二次創作」としての強みをガンガン生かしたような展開の仕方をしてるのも特徴的ですね。創作における「二次創作」の強みはなんなのかと言うと、「一次創作と比べて世界観の説明やキャラクターの掘り下げを可能な限り少なくできる」ところです。読み手としてはだいたい登場してるキャラがどういうキャラなのか知っているし、とくに東方のキャラなんかだと原作プレイするかニコニコ大百科なりピクシブ百科事典でも読めばおおよそのキャラ像はつかめるわけで。世界観にしても幻想郷を中心軸にした壮大なものを背景にしながら少女たちの麻雀頭脳戦を楽しめるわけでその点もグッドです。
さらに「東方Project」の本質めいたものを麻雀を通して表現してるのではないかと思える点も高評価ですね。弾幕シューティングとかゲーム的な部分を除いた上でざっくりと雑に東方の物語を語ると「暇なり能力なりさまざまなものを持てあました少女たちの遊び」なんですよ。「ん、少女?」という表現にしっくりこなかった人もいるかもしれませんが、数千歳だろうが数億歳だろうが幻想郷においては少女たる精神性を持っているならば少女なのです。
弾幕ごっこにしたところでそうした遊戯の一つであって、それが麻雀になったところでおかしくはないし麻雀漫画であっても十分に東方してるんですよ。
何はともあれ、読もう
とりあえず単行本を買ってるか買ってないかはともかくとして単行本の先の話であり最新話でもある第6話がとにかく熱い展開になってるので、一度WEB掲載されてる部分を読んでみるといいです。