『サンダー・ジャンクションの無法者』プレビュー雑感
お疲れ様です。画像はアウトロー(外角低め)です。こんなしょーもないことしか考えつかんかったです。
恒例のプレビュー雑感やっていきましょう。
いつも通りレア・神話レア中心にスタンダード目線でざっくばらんにテッテレレー。
僕のカードパワー見極め力(ちから)については、過去記事をご参照ください。
では以下本題。
・《最後の決戦》
新メカニズム「放題」スペルサイクル。モードを選択するごとに必要なマナは増えますが、全モードを選択することもできるのが特徴のスペルです。
白の放題は、「全生物の能力を失わせるモード」・「自軍生物1体に破壊不能を付与するモード」・「全体除去モード」の抱き合わせとなっています。
パッと見の印象としては中途半端なスペルです。能力を失わせるのは盤面を触るわけではないのでアドバンテージにつながりにくいですし、除去耐性を付与するだけなら白だけに限ってもよりユーティリティが高いスペルが思い当たります。唯一、インスタントでラスゴを撃てる点は評価できる部分ですがラスゴモードを選ぶだけでも6マナと非常に重いため取り回しはあまりよく感じません。
おそらく能力を失わせて耐性や死亡誘発などを封じたうえでのインスタント全体除去や、自軍生物を破壊不能にして一方的なラスを狙うデザインなのだと思われますがマナがかかりすぎる上に想定する状況が限定的すぎる気がします。そもそも死亡誘発や除去耐性を貫通する全体除去にはすでに《太陽降下》がよく採用されておりそこにとって代われる要素が「インスタントでできる」のみに等しいとなるとなかなか競合は厳しいでしょう。
・《エイヴンの阻むもの》
瞬速飛行の妨害内蔵生物、《呪文捕らえ》的な疑似打消なのでどっちかというと青っぽい能力ですが今回は白単色。相手のスペルを「計画」状態にすることで妨害するので、少なくとも1ターンは確実に行動を止める保証があるのはよさそうな気はします。
除去されても飛ばしたスペルの計画状態が解除されるわけではないのですが、コストアップの常在型能力がないとタダで唱えなおされてしまうだけなのでやはりできればほかのスペルでバックアップしてあげる必要がありそうです。割に打点が低いのもやや難ですかね、《切り崩し》や《火遊び》が当たるのも引っかかる部分。
しれっとパイオニアだとロータスコンボなんかは出されると悶絶する能力になってますね、書式の被害者。
・《砂塵の憎悪》
土地5枚以上のアンタップ状態を条件に絆魂&サイズアップ能力を備えた2/2/3飛行。一応計画はしなくとも、理論上土地を7枚以上置いてからだせばサイズアップは受けられる計算。
計画コストも自身の本来のコストと同等で軽く、序盤のアクションを埋めながら5ターン目にはタダで4/5飛行絆魂が登場するのはなかなか強力に感じます。アグロなんかの場合カウンターや《放浪皇》構えながらこいつでてくるの結構グロそうな感。
基本、計画というメカニズムは「ターンをパスして次の行動を晒すだけ」な印象のカードが多かったのですが計画コストが軽くかつ盤面上の脅威値が高いこいつの場合相手のデッキによっては除去を残さざるを得ない「プレイングを縛る」可能性があるのも秀逸だと思いました。
コントロールっぽいデッキではアグロ対策にいいかもですね、普通に2/2/3飛行でも標準生物のスペックは満たしてますし計画ありきだけのカードではないのが素晴らしい。
・《収集家の檻》
秘匿つきのパンプアップエンジン。マナがかかってしまうのでテンポ面での負荷はやや気にかかりますがインスタントタイミングで起動できるのが優秀な印象です。ジェネリック《光輝王の野心家》的な。
秘匿解除条件はさすがに重めですが、トークン絡めれば現実的なレベルでしょう。
アグロっぽい挙動のデッキに適した置物なので超重量級カードの踏み倒しは期待しない方がいいかもしれませんが、パンプのついでにPWとか除去の当たりにくいカードを踏み倒して勝ち盤面を強固にできるのはよさそうかも。
・《再覚醒したジェイス》
弁えなかったのかベヘレン。2マナのカードながら4T目以降にしか唱えられないPW版《セラの報復者》。
+1能力は普通のルーターと3マナ以下のスペルの計画、そして-6はこのターン唱えるすべてのスペルのコピー。
恐らくこれを守りながら+1で計画しまくって-6で計画したスペルを大盤振る舞いすることを狙うデザインなのですがいかんせん3マナ以下とインパクトが低いため印象は悪いです。
自衛につながる能力もなく、そのくせ4T目以降しかキャストできないうえ忠誠度も登場ターンに比して高いと言えず守るのも難儀。軽さだけはえらいので、どちらかというと軽めのデッキでカウンター構えながら出して手札を回すのが基本線ですかね。そうなると《漆月魁渡》とかそういうのでいい気はしますが。
・《冷静なスフィンクス》
パワー5の瞬速飛行、限定的な除去耐性つき。4パンサイズが回避能力つきでこの軽さなのでコスパ自体は素晴らしいですね。
隙を見てねじ込んでいければ普通にクロック完遂できそうなのはいいと思います、ただこれを出したターン必然呪禁ついてないので出す瞬間が一番弱いというのがやや引っ掛かりますね。普通にポン置きしても基本は出オチしそう。
後続を連打しようとしてもそこで呪禁外れるし、先にこれ以外の脅威を展開して除去を誘うとか打ち消しやハンデスでのバックアップが必要だと考えるとそこまでするほどのバリューは感じないかも。
特に4マナ域は他色含めると激戦区なので、青がらみでも色が少なめの多色とかじゃないと使いにくい可能性ありそうだなあという総じて微妙な印象でした。
・《三歩先》
青の放題スペル。
《取り消し》・《目録》に加えてインスタントタイミングで生物・ファクトのコピートークンを生成可能な3種類のモードを持ちます。
印象としては器用貧乏。コストは元の呪文の据え置きなので、モードを選べる分コスパ自体は上がっているわけですがそれぞれのスペルの効果が決して強力だといえるものではないのが原因。端的にいってしまうと「どのモードも別に強くはない」という身も蓋もないあれ。
基本は《取り消し》のモードをアテにして、腐りそうなら《目録》のモードで手札を回していくのがベーシックな使い方になるでしょう。
でもそういう用途だと既に《困惑の謎かけ》が結構コスパ良好ながらまったく使われていない現状こいつの出番はないかもですね。
まあ今期スタンだと《取り消し》に相当する枠がこれ以外だと《雲散霧消》と《攪乱プロトコル》しかないことを考えるとこれも候補にあがらんことはないような気はします。あえて使うならやはりコピーモードの有効活用法を考えたいところですね。
・《厄介者、ギサ》
新メカニズム「悪事を働く」搭載の神話レア。
護法つきのゾンビ・スケルトンロード、悪事を働くたびに2/2のゾンビを2体出します。
流石に5マナの神話レアのスペックしてるな、という印象。
「悪事を働く」はスタンダードだと基本的には除去を撃つのが一番手っ取り早い誘発手段になると思われますが、このギサの場合で考えると除去撃つたびに3/3威迫が2体出る計算になるわけで結構なクロックです。
本体が重いため、ダブルアクションをとりにくくすぐさま悪事を働こうとすると工夫が必要ですしポン置きしてお祈りぶっぱするには護法がやや心もとないなど不安要素も結構あるわけですが。やっぱ見掛け倒しかな。
・《懲罰者、ケアヴェク》
悪事を働くたびに墓地の黒のカードを唱えられるアドバンテージ生物。
一応先にいっておくと、「コピーを唱える」書式なのでコピーもマナ払わないと唱えられませんのであしからず。
ライフルーズがあるのでやや後ろ向きになってしまいますが、理論上ライフとマナさえあれば除去やハンデスを墓地から芋づる式に連射できるカードになっています。除去耐性も回避能力もないためクロックとしての信頼を置けるカードではなく、しかも能力の誘発に他のカードを要求すると考えると結構ダメよりな感はします。ハマった際のアドバンテージ自体はものすごいんですけどね、ロマンはあるのでまあ「勝過ぎ」カードかなあ。
余談ですけど、今回こういう「生き残ると強い」系のシステムめっちゃ多くないですか?
・《腐食の荒馬》
《闇の腹心》系のライフルーズドローのある熊。
新メカニズム「乗騎」を持っています、機体の搭乗と挙動は似ていますがこちらは生物→生物への乗り込みなのでソーサリー除去への耐性がつくわけではありませんし、その分乗騎なしでも殴れるのでP/Tもコスト相応です。
乗騎することでボーナスが得られる仕様で、こいつはドローに伴うライフルーズを相手に押し付けることができます。
単体でもアドバンテージ能力自体は確約されているのがいいですね、既存のデッキだと青黒ミッドレンジあたりは2マナ域の生物にパンチが効いたのがいなかったので採用されるかもしれません。《ヨーグモスの法務官、ギックス》との相性が極めて良好に見えますし、黒いアグロでは使いでありそう。
・《峰の恐怖》
再録神話。
言うまでもなく以前のスタンでもそこそこ活躍したほかの生物の登場に応じて火力を飛ばす大型フライヤー。
攻撃的な生物ですがコンボ運用にも耐えるほか、地味にドラゴンサポートカードもそこそこあるなど部族面での活躍も少しは期待できそう感ありますね。懸念点は既存環境だとCIPを封じる《門衛のスラル》や《機械の母、エリシュ・ノーン》の採用率がそこそこあるほか同じく再録された《倦怠の宝珠》含め多様なデッキにメタられる可能性がある点でしょうか。
再録ではありますが使われるんじゃないかと思うので、今のうちに押さえておくとよさそうです。
・《軍団の成形機械》
CIPでソーサリー《ショック》、他のファクトを3/3に作り替えるシステム。
マナがかかる上に自身以外のファクトを要求するので基本的にはシナジー寄りのデッキで採用することになります。
パッと思いつくところではやはり《鬼流の金床》を使うサクリファイス系のデッキですかね、ある程度サクるものには困らないレベルの物量があるデッキで使えば結構なクロックに貢献してくれるでしょう。ライフを詰める能力も高いのでソーサリー2点を本体に飛ばすバリューも少なからずありますしね。
・《刺し背の恐怖》
手札の枚数分弱体化するドラゴン。
順当に先手番から出していくとおおよそ3/3ないし4/4くらいの期待値でしょうか。
手札消費の激しいデッキ向け、というのは勿論なんですが回避能力つきでこの打点なら実は結構つよいのではないか?と思っています。連打すると強い系のこういった生物が非レジェンダリで横並びがきき、かつ飛行というのは類例がない気もしますし。マリガンすると打点が上がる、というのも割と好印象です。赤単とかで実は採用できたりしませんかね。
・《精鋭射手団の目立ちたがり》
回避能力と速攻をつけたのにパンプアップ効率があまり落ちていない《釜の悪鬼》。そう書いただけでも結構強そう。
計画によりパンプアップスペルとのかみ合わせをよくしたり、他の生物と同時に展開したりと1ターン分のテンポを犠牲にダブルアクションを強くできるのが持ち味。軽いので見た目ほど計画しても取り回しは悪くないと思いますし、連打しても強い系なのでスペル偏重のグロウデッキのみならず採用できるアグロは多いのではないでしょうか。
今季期待の新人ということでひとつ。
・《密輸人の驚き》
緑のレア放題。
《歴史との対峙》・色を問わない2倍《劇的な入場》に加え大型生物への除去耐性付与の3モード。
基本は1番上のモードでアドをとりつつ、フラッドしたり打ち消しを構えてそうな相手に2番目のモードで仕掛けていくみたいなデザイン。後引きしても除去耐性付与があるしついでにカードも引ける的な。
1番上のモードが切削した中から選ぶ都合、ある程度デッキにクリーチャーカードの採用枚数を要求するのがやや難ですね。
2番目のモードをメインに使いたいんですけどそうなるとハンドが減るのである程度その損失に見合った大型生物を出したくなります。
そうなると既存のデッキではマナクリから展開していくタイプのランプデッキって実はないので・・・すんなりこれの採用にこぎつけるデッキは今はないかも?
・《棘を播く者、逆棘のビル》
上陸によるパンプアップに加え、+1カウンターを2倍にする起動型能力のある脳筋神話熊。
既存のデッキだとフェッチランドを多用するティムールランプのサブの勝ち筋とかにはよさそうな気がします。スペースカツカツなのでアグレッシブサイドとかですかね、まあでもサイド後に除去抜かれるタイプのデッキじゃないし微妙かなあ?
とはいえ普通のデッキだと狙って複数回の上陸を達成するのが難儀なので採用しにくそう。割と書いてること自体は強いんで、オゾリスとかと組みあわせてどうこう・・・。
・《逆棘芽の農家》
4/5/5トランプルという驚異的なサイズに食物二つがついてくる大盤振る舞いな赤単殺し。
最近は除去耐性つけなきゃもはや何でもありみたいなスペックがぽんぽんでてくるっすね~。
除去にさえ当たらなければ殴ってよし守ってよしの万能選手。
アタック誘発は3枚切削した中から選ばないとなので強いカードが手に入る期待値が高いとはいえませんがPWとかも拾えるしこのスペックについてくるアドバンテージとしては充分でしょう。
緑らしく確定除去だけはどうもならんので、白除去黒除去が流行る既存環境だとどうもなあ、という印象がぬぐえず。アグロが流行ると出番ありそうな気もしますけど。
・《同化の神盾》
神話装備品。
《未達への旅》系の生物除去リングであり、装備生物を除去した生物のコピーにすることができます。一応自軍生物もとれますが基本は除去として使うのが主でしょう。
スタンでは強力な生物が採用されることが多いですし、加えて現状ユーティリティの高いアーティファクト破壊は採用されることが少ないのでリングとしての信頼はそこそこに置けそう。ボセージュハカンベンシテ。
メインに複数枚とるようなタイプのカードではありませんが、青白コントロールデッキが散らす除去の択としては悪くない気がしています。《攪乱プロトコロル》との相性もいいですし、《放浪皇》や《ミレックス》から生成されるトークンを相手のフィニッシャーに化けさせることができるなどできるのもいい感じ。先に紹介した《三歩先》なんかでコピーしてもいいですね、下環境での採用も《石鍛冶の神秘家》デッキならありえますし夢が広がる。
・《害獣駆除》
トークン・アグロ系統ガチアンチ。
既存のデッキだとボロス召集・感染・赤単なんかには結構有効ですね。
現代MTGでトークンを使わないデッキの方が珍しいので自陣のトークンを巻き込んでしまうのはアレですが、そういったデッキへのアンチカードとしての性能は必要十分以上でしょう。
とってつけたようなサイクリングでメインボード採用を促しているデザインが非常にいやらしいです。色が合うならメインにお守りで差しておいても邪魔にはならないでしょう。勿論サイドボードでも使いやすいカード、こういうのをビッグスコアとはいえ神話レアにすんのやめてもらっていいです?
・《首謀者、オーコ》
再び登場のオーコ、ちゃんと灯持ってるんですね。
常在型能力として戦闘開始時に自軍生物のコピーになる能力を備えており、PWでありながら戦闘にも参加できます。
+1能力は2枚引けるルーター。悪事を働くとアドバンテージが得られますが悪事を働くのにカードを使っていると結局カードが増えないジレンマがありますね。
-1は恒例の鹿。4マナのPWが出すトークンとしてはまあまあでしょう、最低限の自衛ができるので悪くはありません。一応常在のサポートにもなりますが別段これを鹿にはしたくないしな。
-5で自軍土地以外のパーマネントを2倍に。派手に見えますが土地が増えない都合増やして強いカードを構築段階で用意してあげる手間はかかります。
総じて自分でパーマネントを展開していくデッキの補助向けで、コンボ性が強いPWに見えます。ルーターの掘る枚数が多く奥義が早いので基礎スペック自体はわりに高いんですがデッキは選びそうな雰囲気。常在では名前ごとコピーするので伝説生物のコピーには使えないほか、CIPをコピーできないのでコピーして強いカードの種類はやや選びます。ちょっとした速攻付与みたいな感じで使えるのはいいと思うのでシステムクリーチャー向けでしょうか?
おそらくコピーすると忠誠度能力を失う書式ですから基本戦闘前メインで能力を選ぶ必要があるほか、コピー元の生物も先出しが求められるので出して戦闘開始誘発スタックで除去されるリスクもあるなど構築・運用面での癖もやや強めです。
今んとここれ!という組み合わせや採用されうるデッキは思いつきません、色もあんまり現状使われている組み合わせではないので既存のデッキにいれて活躍する感じではないかも。何かしら新しい機軸を考える必要がありそうですね。
今回はこんな感じで。
最初はビッグスコア枠のインパクトが強くて結構強力なエキスパンションかなとも思ったのですがこうして並べてみると「生き残ると強い系」「勝ち過ぎ系」「シナジー寄せ」が多くて微妙に思えてきました。
辛口評価は僕の悪い癖ですかね、まあなんにせよ新環境スタンダードとしては非常にカードプールが広く様々なデッキの登場に期待は持てそうですし楽しんでいきましょう。
そういえば九州の地元民向けですが、今回ご紹介した「サンダー・ジャンクションの無法者」1BOXがもらえる大会を4/27(土)に開催したりラジバンダリ。
皆様のご参加をお待ちしております。
ではまた次回、九州各地の店舗予選でお会いしましょう。