『雷と走る』

『雷と走る』
千早茜(河出書房新社)

主人公の相棒は、犬だ。野犬に近い気性の激しい犬。
互いに思い合えていると、人生の相棒ともいえるくらい、互いになくてはならない存在だと思っていた。

庇護の対象ではなく、互いに守り合える存在。

私はまだ、そこまでの存在に出会えていない。
そういう存在がいる人生を生きるのは、どんな感覚なのだろう。
一歩間違えれば依存になりかねない存在として私はそれを考えてしまう。過去に共依存の経験があるからこそ、他者に気持ちを添わせることが怖い。
相棒ともいえる関係を築ける存在に出会えたとして、それはどんな時に自覚するのだろうか。
相棒と呼ぶからには、自分だけの人生でもなくなる。どんな時だって、相棒が頭をよぎるのだろう。
そこまでの感情を、愛を、私は他者に抱けない。

だからこそ、そういう関係を羨ましく思う。
他者と生きていける人たちを。
相手の一生をも背負う覚悟ができる人たちを。

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