はじめてのnote
はじめまして。
モノクロ写真は、幼子の私。
ご察しの通り、昭和の生まれ。
当時暮らしていた平屋の府営住宅の庭で、
父が撮った一枚の写真。
同じアルバムには、
若く美しい母と、背が高く精悍な父の姿、
活気漂う高度経済成長の少し焼けた写真たちが
貼り付いています。
物心ついた頃から小学3年生の半ばまで暮らした、
平屋長屋の府営住宅は、
焼け野原から戦後復興のための住宅政策で
東京・大阪・名古屋の都市近郊に次々と建てられた、
公営住宅の初期のものでした。
今日より明日はきっといい、と信じ、
豊かさを求める右肩上がりの日本を担った
若い世帯が、支え合いながらも、競い合いながら、暮らしていました。
2021年、かつての街に仕事で訪れる機会がありました。
踏切の音が聞こえていた駅は高架になり、
駅前の店も、通りも、様変わりし、見知らぬ街になっていました。
仕事終わり、街を歩くと、
半世紀前の平屋長屋の府営住宅は姿を消し、
5階建ての府営団地が並んでいました。
記憶を辿りながら、駅に向かう途中、
揚げ物の香りが鼻をくすぐりました。
……、コロッケ。
そう、この匂いは、
夕暮れ、時々、母が買い与えてくれた、
肉屋のコロッケの匂いだ。
辺りを見渡すと、
立派な焼肉店を従えた肉屋が目に入り、
記憶に導かれるように店内へ。
牛肉や豚肉、たくさんの精肉が並ぶ店の一角に、
白いパン粉をまとった
フライ類のショーケースがありました。
次々と油にフライを投じる白衣の老女、
その後ろ姿に、思わず、
「コロッケ、ひとつください」
紙袋に包まれた、ラードの香り漂う、
揚げたての肉屋のコロッケ。
ひと口頬張ると、
忘れていた幼い頃の出来事が、
昭和の街の光景が、
次々、頭の中に浮かんで消えていきました。
2025年1月元旦執筆