428 〜封鎖された渋谷で〜
2008年にセガから発売されたサウンドノベルゲームのPS4版。
このゲームで初めてサウンドノベルゲームに触れることができた。ゲームのジャンルとして存在していることは勿論知っていたが、RPGとアクションゲームを愛する少年だったため何故ゲームの時間にまで文章を読まなければならないのか全く理解が及ばなかった。そしてそのまま大人になってしまった。
同じくセガが出した街というゲームを、SIRENにハマっていた時期に知った。時系列を辿りながら展開される群像劇はかなり街っぽいというような話を読んで、気にはなっていた。しかしノベルゲーの壁は高く、それを超えることは結局無かった。
ある週末、何か映画を見たくてふと目についた狂気の桜という映画を選んだ。2002年に公開された窪塚洋介主演の作品。当時は中学生で、ヒップホップがかなり流行っていた。友達の間ではキングギドラがよく聞かれていて、多分そのつながりで(もしくは映画が先だったのか) この映画もみんな観ていた。今回初めて観て、ああ、あの時アイツがよく言ってたのはこの映画のセリフだったんだなと不思議な発見をすることができた。
ストーリー自体はあんまり感じるところはなかったけど、かなり楽しくみることができた。それは2002年当時の渋谷の街の風景が保存されていたからだ。
丁度キングギドラが流行っていたころ、クラスメイトのお兄さんが地元にサーフショップを開いた。同時期、地元の夏祭りでクラスメイトの女の子に私服をダサいと笑われた事で、洋服にカッコイイとかあるの!?と衝撃を受けていた事もあり、このサーフショップに入り浸る事でカッコいいものを見極める目を養っていた。買い物もしないくせに何時間も居座るクソガキに、店長は一枚の地図をくれた。
「もっと沢山服が見たいなら、この地図を頼りに原宿にいくといい。」
それはカッコいい洋服界に住む師匠から下賜された宝の地図だった。
僅かな金額のお小遣いで生活する一中学生のサダメとして、渋谷で降りて原宿まで歩くことが必要だった。渋谷原宿間の電車賃も勿体無かったのだ。というか書いているうちに思い出したが、あの頃は代官山駅で降りて、地図を辿りながら服屋を巡礼して原宿まで歩いていた。いた、というか今でも原宿行くかーとなると1人だったら同じルートを通ってしまう。
あのあたりは移り変わりも早いので、中学生当時に行っていたお店や建物は結構無くなっている。それはそれで、あーここ無くなったのか、とかまだあるのすげーなとか考えながら歩くのは良いものだ。でも、狂気の桜で久しぶりに当時の渋谷の風景を見た時に感じた深いノスタルジーは今まであまり味わったことのないものだった。加齢で失うものも有れば得るものもあるという事か。
昔の渋谷もっと見たいな〜となった瞬間に、このゲームのことを思い出した。あ、そう言えばこれはPS4で配信あったなとピンときた。電車賃を出し惜しんでいたあの頃とは違い、半ば衝動のままに購入し、そのまま一気に遊びきった。ダテにおじさんになってないので、文書を読むのも朝飯前だ。
人生初のノベルゲームは結構楽しめた。最悪風景を見れればいいや、と思っていたけど、一つの大きなジャンルになっているのには理由があるがわかった。ただ、また同じジャンルを遊ぶかと聞かれるとわからない。街がリマスターされるとしたら、その時までおあずけかな。