"ウェルビーイング・セントリック・カンパニー" と "カスタマー・セントリック・カンパニー" の経営のあり方の違いと、これからを考えてみた
(このブログは、私がLinkedInのブログ機能を使って書いたものを転載したものです。上の画像も、LinkedInブログに実装済になったAI搭載グラフィック デザイン・画像編集アプリ、Microsoft Designerで制作してみました。LinkedInが日々進化して使いやすくなるのはめっちゃ嬉しいです!😊)
今回は、日頃仕事をする中で、個人的に大切にしている価値観に紐づく企業のあり方をテーマにさせていただきました。
ここ数年、仕事の変化や家族に関する大きな出来事が続いたこともあり、これまでの人生を振り返った生き方や考え方の捉え直しの必要性を感じてきました。そのような中、特にここ5年ほどはウェルビーイングについて継続的に高い関心を持ち、書籍や動画、勉強会や研究会などで学びながら、それを仕事や私生活で試すなどの日々を送っています。
#ウェルビーイング は、超簡単に言えば「 #幸せ 」と言われたりしますが、このウェルビーイングについて、世間の関心度の高まりは、年々高まっているようです。
(「ウェルビーイング=幸せ」が正しい表現と言いますか、捉え方とは言いきれないニュアンスを承知していますが、説明が長くなるので、このまま進めさせてください。いつか大幅な加筆修正の機会がありましたら、注記など加えていければと思います。)
メガトレンドや社会の関心事について相対的に比較できる便利なツールのGgoole Trendを使ってみたところ、以下のような結果でした。
特に2018年頃からサステナビリティの検索量と比例して検索量が増えていることがわかります。
下のグラフには示していませんが、単語「ウェルビーイング」の直近1年のウェブでの平均検索量は、例えば単語「イーロンマスク」よりも少し少ないくらいの関心度です。(ちょうど近い検索量がたまたまイーロンマスクでした。🤣)
また、私個人の職業人としての体験や家族との体験が直接的なきっかけになり、自分自身の内側の幸せについての関心事としてウェルビーイングに関する学びを深めてきましたが、これまで約20年ほど経営に携わってきた中で、心の中での未解決なことや疑問などがあったこととも相まって、自分の外側にある組織や企業によるウェルビーイングへの適応についても自然に興味・関心が広がっていったことから、このブログ記事を書くに至りました。
実は、今回のテーマですが、もともとは、すでにどこかに情報が整理されていて、それを学べればいいな、くらいに思っていました。しかし、Google、Yahoo!、LinkedIn、X、Facebookなどなどをいろいろ検索してみたのですが、このテーマをなかなかうまく見つけることができませんでした。"ウェルビーイング・セントリック・カンパニー"というワードで出てくるのも、私自身が2024/7/13にLinkedInとXへ投稿したものだけしか見つからない状況でした💦
そこで、これまでの自分自身の学びと現状の考えを頭の外にアウトプットし、次の学びに繋げていくこと、また、現状のアウトプットが、他の誰かの考察や考え方、あるいはコンセプトの何らかのたたき台になることができるとうれしいとなと思い、今回のテーマ "ウェルビーイング・セントリック・カンパニー( #ウェルビーイングセントリックカンパニー )" について、書いてみることにしました。
自分が納得感を覚えた書籍や動画、研究者の方々の知見や調査会社の情報ソースなど、とても多くの参考文献をもとに書かせていただいています。しかし、ほとんど長い文章を書いた経験がなく、実に大学の卒業論文(原稿用紙100ページ超え)とほぼ同じ原稿用紙100ページ分です。(ほぼ図解はないので、実質卒論以上の文章量かも。)
私の稚拙な文章力と勢いで書いているところもあるため、どうぞ温かい目で見ていただき、何かありましたらDMなどで助言いただけますとうれしいです。🤗
また、LinkedInがこのようなブログを書くスペースを提供していくれていることが、LinkedInのある暮らしを楽しむ私にとって、このような長い文章を書いてみようと思う気持ちになりました。あらためて、プラットフォームであるLinkedInと、このポジティブなコミュニティに参加されてらっしゃるLinkedInユーザーの方々は、本当に私にとって、ありがたい存在だと再認識できました!
ということで、「『ウェルビーイング・セントリック・カンパニー』。"ウェルビーイング・セントリック・カンパニー" と "カスタマー・セントリック・カンパニー" の経営のあり方の違いと、これからを考えてみた」は、以下の構成となっています。
(ウェルビーイング、幸せ、幸福などの単語が混在していますが、特段断りのない限りは、幸せも幸福もウェルビーイングの意味として読み進めてくださいませ。本来は使い分けたほうが良いかもしれませんが、ご了承ください😝。)
目次
これまでの年代毎の企業のあり方の変遷:50年のメガトレンド
現代の潮流、カスタマー・セントリック・カンパニー(顧客中心思考企業)の価値観と特徴
これからの潮流、ウェルビーイング・セントリック・カンパニー(ウェルビーイング中心思考企業)の価値観と特徴
カスタマー・セントリック・カンパニーからウェルビーイング・セントリック・カンパニーの時代に移行していく理由
ウェルビーイングと生産性の関係
カスタマー・セントリック・カンパニーからウェルビーイング・セントリック・カンパニーへの変革
まとめ
では、さっそく始めたいと思います!
1 .これまでの年代毎の企業のあり方の変遷:50年のメガトレンド
まず、"ウェルビーイング・セントリック・カンパニー" と "カスタマー・セントリック・カンパニー( #カスタマーセントリックカンパニー )"のそれぞれの経営のあり方の違いについて書く前に、これまで、どのように企業のあり方が変化してきたか、直近50年を遡って、ざっくり時代背景や社会的ニーズなどを押さえて振り返り、まとめてみました。
過去から連続的に各年代の潮流を概括的に掴むことで、これからの時代を予測しやすくなるように感じられたためです。
多少強引な建付けですが、「〇〇カンパニーの時代」のように年代毎(10年毎)に企業の特徴のタグ付けを試みています。
各時代の潮流に私が名付けた単語の頭文字を年代順に並べますと、英語では"PQM IS CW."になっています。(別にテストには出ませんが、個人的に歴史暗記のように"ピクミンはCW二コル"と覚えています🤣)
Production,Quality,Marketing,Innovation,Sustainability,Customer,Well-being の各々の頭文字です。
生産重視カンパニーの時代 (1970年代)
背景と傾向:
経済的背景: 第二次世界大戦後の経済復興期が終わり、高度経済成長が続く。
社会的ニーズ: 消費者の購買力が向上し、工業製品や耐久消費財への需要が高まる。
企業のあり方: 大量生産と効率性を追求し、コスト削減と生産性向上が重視される。
代表企業: フォード、GE(ゼネラル・エレクトリック)など。
特徴:
経済規模の拡大を目指し、規模の経済を追求。
生産ラインの効率化とオートメーション化の進展。
品質重視カンパニーの時代 (1980年代)
背景と傾向:
経済的背景: 第2次オイルショックや経済不況を経て、品質に対する消費者の意識が高まる。
社会的ニーズ: 高品質で信頼性の高い製品が求められる。
企業のあり方: 品質管理や品質保証が強調され、トータル・クオリティ・マネジメント(TQM)の導入が進む。
代表企業: トヨタ(ジャスト・イン・タイムやトヨタ生産方式はスゴイ!)、ソニーなど。
特徴:
品質管理の強化と改善活動(Pokémonよりずっと前に世界共通語になっているKAIZEN!)。
製品の信頼性と顧客満足度の向上。
マーケティング重視カンパニーの時代 (1990年代)
背景と傾向:
経済的背景: グローバル化の進展と市場の成熟化。
社会的ニーズ: 多様化する消費者ニーズに応じた製品やサービスが求められる。
企業のあり方: マーケティング戦略の重要性が増し、ブランディングや顧客セグメンテーションが重視される。
代表企業: コカ・コーラ、ナイキなど。(この2社のマーケティングは今も世界を牽引!)
特徴:
消費者の心理や行動を分析し、ターゲティングとポジショニングを強化。
ブランドイメージの構築と広告宣伝活動の拡充。
イノベーション重視カンパニーの時代 (2000年代)
背景と傾向:
経済的背景: インターネットの普及とIT革命。
社会的ニーズ: 革新的な技術や新しいサービスが求められる。
企業のあり方: 技術革新と新規事業開発に注力。スタートアップ企業は時代の寵児。
代表企業: Google、Apple、Facebook(創業5年でユーザー3.5億人突破は桁違い)など。
特徴:
R&D(研究開発)への投資とオープンイノベーションの推進。
デジタル技術とインターネットを活用した新しいビジネスモデルの創出。
サステナビリティ重視カンパニーの時代 (2010年代)
背景と傾向:
経済的背景: 気候変動問題と持続可能な開発目標(SDGs)の普及。
社会的ニーズ: 環境保護や社会貢献を重視する消費者の増加。
企業のあり方: 環境に配慮した経営とCSR(企業の社会的責任)活動の強化。
代表企業: ユニリーバ(USLPは世界的な先駆け)、パタゴニア、テスラなど。
特徴:
環境に優しい製品やサービスの提供。
社会的課題への取り組みとステークホルダーとの連携。
カスタマー・セントリック・カンパニーの時代 (2020年代)
背景と傾向:
経済的背景: デジタル化の進展と消費者の情報アクセスの向上。
社会的ニーズ: 個別化されたサービスやパーソナライズされた体験が求められる。
企業のあり方: 顧客中心の経営戦略を採用し、顧客体験の向上に注力。
代表企業: アマゾン、ネットフリックス、スポティファイなど。
特徴:
データ分析を活用した顧客理解とサービス提供。
オムニチャネル戦略とシームレスな顧客体験の提供。
ウェルビーイング・セントリック・カンパニーの時代 (これからの時代)
背景と傾向:
経済的背景: 労働市場の変化と健康意識の高まり。
社会的ニーズ: 社員のウェルビーイングや社会全体の幸福を重視する動き。ポストSDGsとしてSWGs(Sustainable Well-being Goals)の議論の高まり。
企業のあり方: 社員の幸福と健康を中心に据えた経営戦略を採用。
代表企業: セールスフォース(Ohana文化)、ユニリーバ(ユニリーバ・ジャパン<WAA>)、LinkedInなど。(国内企業では、石坂産業、西精工、ダイヤモンドメディア、伊那食品工業など。)
特徴:
メンタルヘルスやワークライフバランスの支援。
持続可能な経営と社会貢献活動の強化。
ここまでのまとめ
企業のあり方は、顧客ニーズや社会的ニーズ、外部環境の変化に対応しながら進化してきました。現代のカスタマー・セントリック・カンパニー(顧客中心主義企業)の時代では、経営の中心に顧客を据えた企業戦略が主流であり、企業として大きな成果を出しています。
一方で、これからの未来に目を向けてみますと、こと日本に関して言えば、全体として市場や労働人口が縮小する中、求める人財に選ばれる企業になるために、顧客中心主義の先の価値観を持つ企業のあり方が求められ始めています。
それがウェルビーイングを中心に据えた経営を実践するウェルビーイング・セントリック・カンパニー( #ウェルビーイング中心主義企業 、 #ウェルビーイング中心思考企業 )であると考えます。
経営は船旅のように例えられることがしばしばあります。これまでの時代を作ってきた先人の描いた海図は、これから同じ船に乗る(あるいは今すでに同じ船に乗っている)仲間と共に目的地を目指し、時代の波に乗って航海する際、大変助けになってくれます。(良い意味でも悪い意味でも。)
私の生まれていない時代は、書籍やインターネットにて、そして20年ほど経営に携わらせていただいた経験を含む自分自身が社会人になってからの時代は、その経験とも重ね合わせながら、時代毎の企業のあり方の変遷を上記のようにざっくり振り返ってみました。
先輩経営者の方々と従業員の方々がどのような船で、各々の時代の波に乗り、荒波を乗り越えてきたかに思いを馳せますと、自身の価値観とあわせて、今とこれからのより良い経営のあり方を考える意義とその重要性を感じずにはいられませんし、これまでの時代を作ってきた方々をリスペクトすることを忘れてはいけないと思います。
では、ここからは、現代の経営の潮流を体現するカスタマー・セントリック・カンパニー、そして、これからの経営の潮流であると考えるウェルビーイング・セントリック・カンパニーについて整理し、両カンパニーの関係性や、現代の潮流であるカスタマー・セントリック・カンパニーがこれからウェルビーイング・セントリック・カンパニーに移行していくと考える理由などについて、考えをまとめてみたいと思います。
2.現代の潮流、カスタマー・セントリック・カンパニー(顧客中心主義企業)の価値観と特徴
定義
カスタマー・セントリック・カンパニー(Customer-Centric Company)は、顧客のニーズと体験を経営の中心に据え、顧客価値を最大化するために全社的な戦略を展開する企業です。これらの企業は、顧客満足度やロイヤルティを高めることで、企業としての競争優位性を構築します。
特徴
顧客体験を最優先 顧客のニーズの理解に努め、それらの顧客ニーズを超える体験を提供することをビジネスの中心にします。特に、迅速でパーソナライズされた対応を行い、顧客が感じる価値の最大化を目指します。
データ活用による顧客理解の深化 顧客行動やフィードバックに基づいてデータを収集・分析し、製品やサービスを継続的に改善しています。また、これにより、顧客の購買パターンや嗜好に対して的確に応え、顧客ロイヤルティを強化しています。
顧客との長期的な関係構築 短期的な売上高よりも、長期的な顧客との関係を重視することも特徴です。例えば、サブスクリプションモデルやロイヤルティプログラムを導入し、継続的な価値提供を行うことによって、顧客の生涯価値の最大化を図っています。
製品・サービスのシンプルさと直感的なデザイン 顧客にとって使いやすく、わかりやすい製品やサービスの提供は、顧客満足度の向上に寄与しています。
迅速なフィードバックループ 顧客からのフィードバックを素早く製品改善やサービス向上に反映する仕組みを持っています。これにより、常に顧客の期待に応えるだけでなく、それを超えるようなイノベーションも実現しています。Amazonのレビューシステムや、Netflixのレコメンドシステムなどはその代表的な事例と言えます。
代表的な企業
カスタマー・セントリック・カンパニーの代表的な企業として、アマゾン、ネットフリックス、スポティファイを挙げました。個人的にはどの企業も私生活に馴染んでいる企業ばかりです。🤗
Amazon
カスタマーセントリックな特徴:
広範な品揃えと利便性:Amazonは、顧客が求めるほぼすべての商品を簡単に購入できるプラットフォームを提供し、品揃えと利便性を追求しています。個人的な体験としても通常の買い物もKindleもPrime Videoも生活に溶け込んでいる感じです。
迅速な配達:Amazon Primeを通じて、顧客に迅速な配達サービスを提供することで、時間に対する価値を重視しています。
カスタマーレビュー機能:顧客が製品を選ぶ際に他の消費者のフィードバックを参考にできるシステムを提供し、信頼性を向上させています。
AIによるパーソナライゼーション:個別の購入履歴や検索履歴を元に、カスタマイズされた商品提案を行い、顧客体験を向上させています。
顧客中心のサポート:Amazonは、返品や返金のプロセスを迅速でスムーズに行えるシステムを整え、顧客満足度を重視しています。私は意図せず商品を誤って購入してしまった経験があるのですが、Amazonの返品・返金する仕組みのあまりのスムーズさによって、Amazonへのロイヤルティが高まってしまうほどでした。
Netflix
カスタマーセントリックな特徴:
パーソナライズされたコンテンツ推奨:Netflixは、視聴履歴や好みに基づいて、個々の顧客に適したコンテンツを推奨し、視聴体験を最大限に高めています。
顧客ニーズに応じたオリジナルコンテンツ:視聴データを基に、視聴者の好みに合ったオリジナルコンテンツを制作し、顧客ニーズを反映させた価値提供を行っています。Netflixがエミー賞の常連になっていることと視聴データを分析していることと無関係ではなさそうです。
シームレスな視聴体験:複数のデバイスで一貫した視聴体験を提供することで、いつでもどこでも視聴できる利便性を重視しています。
柔軟なサブスクリプションモデル:契約や解約が簡単で、視聴者のライフスタイルに合わせた柔軟なプランを提供しています。
データドリブンな意思決定:視聴者の行動データをリアルタイムで分析し、顧客体験を向上させるために活用しています。
Spotify
カスタマーセントリックな特徴:
パーソナライズドプレイリスト:ユーザーの音楽履歴や好みに基づいてカスタマイズされたプレイリストを作成し、個別の音楽体験を提供しています。
広範な音楽ライブラリ:あらゆるジャンルの音楽を豊富に取り揃え、顧客が自由に選べるようにしています。世界中のこれまで知らなかった好きな音楽との出会いの場になっています。
シームレスな音楽体験:ユーザーがデバイスを問わず音楽を楽しめるように、クロスプラットフォームでのシームレスな音楽体験を実現しています。
アルゴリズムによる発見の促進:Spotifyのレコメンド機能は、AIを活用してユーザーが新しい音楽を発見できるように支援し、音楽の探求を容易にしています。
フリーミアムモデル:無料版と有料版の両方を提供し、顧客が自分のニーズに応じて選択できる柔軟なサービスを提供しています。
代表的な企業の具体的な要素に示したように、カスタマー・セントリック・カンパニーは、顧客のニーズや期待を企業活動の中心に据え、単なる製品やサービスの提供に留まらず、顧客のライフスタイルや問題解決に貢献することを目指しています。
そして、顧客の声に基づくデータやフィードバックを経営判断の基礎とし、商品開発やカスタマーサービスに活用しています。また、顧客満足度やエンゲージメントを高めるための柔軟なアプローチを採用して、顧客の期待を超える価値提供に挑戦し続けます。
このような取り組みによって、長期的な顧客との関係を築き、顧客との信頼関係を強化し、持続的な成長を実現しています。
手前味噌ですが、ご縁をいただき、私が在籍する黄色い家庭用高圧洗浄機を製造販売し、高圧洗浄機の販売台数がギネス認定を受けた世界最大の総合清掃ソリューション企業のKärcher(ケルヒャー)も経営理念の一番最初に「顧客中心主義」を据えています。😊
ビジョンにおいても明確にカスタマーセントリックという言葉を謳い、自らをカスタマー・セントリック・カンパニーであると宣言し、その経営を進める1社です。私は転職活動をする際に、この経営理念とビジョンに強く惹かれて応募をさせていただきました。自分の価値観と重なる部分の多い企業の一部であることは、とても幸運なことだと思います。🤗
3.これからの潮流、ウェルビーイング・セントリック・カンパニー(ウェルビーイング中心思考企業)の価値観と特徴
定義
ウェルビーイング・セントリック・カンパニー(Well-being-Centric Company)は、従業員、顧客、社会(コミュニティ)、地球環境の幸福(ウェルビーイング)を経営の中心に据えた企業です。これらの企業は、利益追求にとどまらず、持続可能な社会や人々の幸福を重視する経営スタイルを採用します。
特徴
従業員の心身の健康を最優先 従業員の身体的・精神的健康が企業の成功に直結すると考え、心理的安全性、柔軟な働き方、ワークライフバランスを重視します。例えば、メンタルヘルス支援や充実した福利厚生を提供します。
持続可能な社会貢献 環境保護や社会貢献を、企業の中核的な価値観の一部と捉えます。また、製品やサービスが持続可能であることを重要視し、環境負荷を減らす取り組みや地域社会への還元を行います。従業員はそのような企業に所属していることを誇りを思い、仕事に対する意義ややりがいを見出します。
長期的な社会的価値の創出 短期的な利益よりも、社会的な価値を生み出すことを目指し、将来的な企業の存続や社会への影響に焦点を当て、経営全体にウェルビーイングの概念を取り入れることで、持続可能な成長と長期的な社会価値の創出を実現します。
多様性と包摂を重視 人種や性別、文化の多様性を尊重し、組織のすべてのレベルで公平性を確保することを目指します。これにより、より多様な視点を企業内に取り入れることができ、社員一人ひとりの幸福度を向上させます。
コミュニティとの深い連携 地域社会との繋がりを深化させ、地域社会の福祉向上を目指す取り組みを積極的に行います。これにより、単に営利企業としての成功を追求するのではなく、社会全体の幸福実現を担うことができるような体制を築きます。
代表的な企業
ウェルビーイング・セントリック・カンパニーの代表的な企業として、Salesforce、ユニリーバー(ユニリーバ・ジャパン)、LinkedInを挙げました。もちろん他にも該当する優れた企業は数多くありますが、ここでは、上記の特徴を持ち、世界的に著名な企業ということで取り上げています。
実は、日本国内において、ブラック企業の反対の概念の企業としてホワイト企業というものがあり、そのホワイト企業大賞を受賞しているような社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている素晴らしい企業も年々増え続けています。今後は、ぜひそういった素敵な企業についても取り上げさせていただきたいと思います。
Salesforce
ウェルビーイング・セントリックな特徴:
Ohana文化:Salesforceは、ハワイ語で「家族」を意味する"Ohana"文化を大切にしています。従業員、顧客、パートナー、コミュニティが一体となり、すべての人々が支え合う環境を構築しています。これにより、心理的安全性と感情的なつながりが大切にされ、働く人々の幸福感が高められます。
1-1-1モデル:利益の1%、製品の1%、時間の1%をコミュニティに還元するというモデルを実践しており、社会貢献活動により従業員のウェルビーイングを支援しています。
メンタルヘルス支援:従業員のメンタルヘルス向上のためのカウンセリングサービスやウェルビーイングプログラムを提供しています。これにより、心の健康と働きやすさが重視されています。
リモートワーク環境:働き方としてハイブリッドワークモデルを採用しています。従業員のワークライフバランスを考慮し、柔軟に働ける環境を提供することによって、従業員のウェルビーイングを高めています。
継続的な学びの文化:従業員が成長し続けるために、様々な学習機会を提供し、自己実現を通じたウェルビーイングを支援しています。
ユニリーバ(ユニリーバ・ジャパン)
ウェルビーイング・セントリックな特徴:
WAA (Work from Anywhere and Anytime)制度:ユニリーバ・ジャパンは、従業員が場所や時間に縛られることなく働くことができる「WAA制度」を導入しており、働く人の柔軟性を重視しています。これにより、従業員が自分のライフスタイルに合わせて働くことができ、ストレスの軽減と幸福感の向上を実現しています。
サステナビリティと社会貢献:ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(頭文字をとってUSLP)を通じて、社会や環境に対して貢献することを目指しています。これにより、従業員は仕事を通じて社会貢献を実感し、仕事の意義とウェルビーイングが強化されます。
ダイバーシティ&インクルージョン:従業員の多様性を尊重し、インクルーシブな職場環境を整えることで、全ての社員が自分らしく働ける環境を提供しています。これは従業員の心理的な安全性を高め、ウェルビーイングに寄与しています。
ワークライフバランスの重視:従業員のワークライフバランスを支援するため、充実した休暇制度やフレキシブルな勤務形態を提供しています。
メンタルヘルスサポート:定期的なウェルビーイング・チェックインやカウンセリングサービスを提供し、従業員の精神的な健康を支援しています。
3. LinkedIn
ウェルビーイング・セントリックな特徴:
インテグリティを重視した企業文化:LinkedInは、従業員一人一人が誠実さや透明性を大切にし、信頼に基づいた企業文化を築いています。この文化は、従業員が安心して働く環境を提供し、心理的な安定感をもたらします。
InDayプログラム:LinkedInには、従業員が自分の成長、家族、コミュニティなどに集中できる「InDay」という特別な日が設けています。これは従業員が個人的な充実感を得る機会となり、ウェルビーイング向上に繋がっています。試しにLinkedInで、#InDay を検索してみますと、LinkedInの従業員のたくさんのウェルビーイングな投稿を見ることができます。😊
ワークライフハーモニー:LinkedInは、従業員が仕事とプライベートの調和を図るために柔軟な働き方を推進しており、個々のライフスタイルに合った働き方を支援しています。これにより、ストレス軽減とウェルビーイング向上が促進されています。
パーソナルデベロップメントの支援:従業員の自己成長を重視しており、教育プログラムやキャリア開発の機会を提供しています。従業員が自らの成長を実感できる環境を整えています。
心理的安全性の確保:オープンで多様なコミュニケーション文化を促進し、従業員が自由に意見を言える環境を整えることで、精神的な健康と幸福感を大切にしています。従業員ではなく、LinkedInユーザーとして使い続けていて、他のSNSとの圧倒的な違いの1つに心理的安全性です。ウェルビーイングが持続する土壌がユーザーへも確実に広がっていることを実感できます。🤗
これらの企業は、それぞれ独自のウェルビーイング施策を展開し、従業員が職業人としてその役割を果たすためだけでなく、身体的、精神的、社会的に充実した生活を送ることができる環境を整えることに挑戦し続けており、これからの時代を先取りする先駆者的企業と言えます。
4.カスタマー・セントリック・カンパニーからウェルビーイング・セントリック・カンパニーの時代に移行していく理由
直近過去50年の振り返りからもわかるように、企業のあり方に大きな影響を及ぼす時代の変化は、色々な要因が組み合わさって起こります。ここでは、顧客のニーズに徹底的に応えることによって、大きな成功を成し遂げ、現代に繁栄するカスタマー・セントリック・カンパニーですが、ウェルビーイングの観点から見たときのカスタマー・セントリック・カンパニーが抱える懸念や課題について考察し、その代表的ないくつかを挙げてみました。
従業員のウェルビーイングの低下
企業が顧客満足度をより高めるために、非常に迅速な配送サービスや広範な品揃えを提供する一方、倉庫労働者や配達員に過度の労働が課されているなど従業員労働環境問題の報道をご覧になった方もいると思います。
「過度な制限時間のプレッシャー」や「過酷な労働環境」が従業員のストレスや健康問題を引き起こしている、との複数の指摘は従業員のウェルビーイングに対する理解不足や軽視の可能性が懸念されます。
顧客ニーズへの過度な対応
顧客の流行に迅速に対応することを重視するファストファッション業界では、短期間で大量の服を生産し、低価格で提供しています。しかし、「顧客ニーズへの過度な対応」のビジネスモデルは、過剰消費や環境負荷を招き、持続可能性や社会的なウェルビーイングに悪影響を及ぼしかねない側面を有しています。また、あまり表面化していませんが、だからといって存在しないわけではないこととして、常に「最新のものありきのプレッシャー」があります。これによって従業員の精神的負担や長時間労働の問題に繋がっていくケースもあります。
顧客のウェルビーイングの低下
私自身も使っていますが、ソーシャルメディア企業は、ユーザー(顧客)がより長時間プラットフォームを利用することを目的としてアルゴリズムをユーザー個々人に最適化された広告やコンテンツを提供しています。しかし、「ソーシャルメディアへの過度な依存」は、精神的な健康問題(例えば、不安感や自己評価の低下など)を引き起こし、時には本当に悲しいことが起きてしまう事実を見聞きし、なかには自身で体験している場合もあります。
顧客満足と従業員満足のバランス欠如
私が以前コンサルティングをさせていただいた大手企業のコールセンターでは、顧客から本当に様々なコールをいただいていました。顧客満足を最優先にするカスタマーサポートセンターでは、顧客からのクレームやお問い合わせに素早く対応することが求められます。しかし、従業員の精神的ストレスを増加させる場合も少なくなく、賃金や人との交流を含めた職場環境の改善が進まない場合、従業員のウェルビーイングは深く損なわれ、離職率の高さにも繋がります。
スピード配送の時短強化も、最新ファッションの追求も、SNSの顧客最適化も、コールセンターの顧客への迅速な対応も、すべてカスタマー・セントリック・カンパニーでなくとも多くの企業で優先度の高い重要課題ですし、カスタマー・セントリック・カンパニーともなればなおさらのことです。そして、これらのKPIの達成は、顧客満足を強力に肯定し、一層拍車をかけていきます。
しかし、正常性バイアスという言葉がある通り、行き過ぎは従業員や社会全体のウェルビーイングに深刻な影響を及ぼします。ウェルビーイングの観点から前述したような企業の懸念や問題は、従来尺度での輝かしい成功よりも重要で、解決すべき価値のあるものの一部であると捉えることが重要です。
現在の企業を取り巻く環境は、VUCAの時代と言う言葉をビジネス関連の書籍やメディアで目にしない日がないほどに複雑な変化を続けています。時代を掴んだカスタマー・セントリック・カンパニーだからこそ、逆に、その成功が足枷となり、環境の変化に適応することを妨げてしまうこともあるかもしれませんが、これからの変化に対応できない場合、いかにそれが一時代を築いたカスタマー・セントリック・カンパニーだったとしても、これまでのような繁栄を維持することは難しいと思います。
ここからは、企業を取り巻く外部環境に関するその変化の具体的な一例を、消費者、従業員、政策、経済、SDGs、それぞれのウェルビーイングの観点からその裏付けとともに書きたいと思います。
消費者の価値観の変化
近年、消費者は製品やサービスの価格や利便性だけではなく、企業の社会的責任(CSR)や従業員のウェルビーイングを重視するようになっています。例えば、PR世界大手米エデルマンによる2022年のエデルマン・トラスト・バロメーターの調査によりますと、消費者の約6割は、企業の社会的な使命や価値観が、製品やサービスの購入決定に重要な影響を与えていると回答しています。これからの顧客に選ばれようとする企業には、顧客満足を追求するだけでなく、従業員や社会全体の幸福の考慮を重視する姿勢と行動が求められています。
従業員のウェルビーイングへの注目
新型コロナウイルスによって、私たちひとりひとりは、経済を回すことと安全に暮らすことのバランスを自分ゴトとして考えざるを得ない状況に置かれました。そのような状況において、従業員のウェルビーイングが企業の持続可能性に大きな影響を与えることも明らかになってきました。例えば、世界的なコンサルティングファームのマッキンゼーの調査では、従業員の精神的・身体的健康をケアする企業は、離職率が低く、業績が向上する傾向があることが示されています。特に、精神的健康を支援するプログラムを導入した企業では、生産性や従業員満足度が向上し、結果的に業績にもプラスの影響を与えています。従業員と企業の関係性の変化は、ウェルビーイングな企業文化醸成を重視する企業に恩恵をもたらしています。
規制と政策の変化
各国政府や国際機関が、企業のサステナビリティやウェルビーイングに関連する規制を強化していることも、時代の転換を後押ししています。
私は現在、ドイツの外資系企業に所属していますが、例えば、本社のあるドイツでは、欧州連合(EU)の「社会的持続可能性報告基準」において、企業が従業員の幸福や社会的影響について詳細な報告を求められるようになっています。
これにより、ウェルビーイングに関連する政策に対し、企業がより主体的に取り組むことが競争力を維持するための戦略として必須になりつつあります。
科学的な裏付けと経済的効果
1980年代以降、幸福学やウェルビーイングに関する科学的研究は世界中で進み、ウェルビーイングがビジネスに直接的な経済的メリットをもたらすことが明らかになっています。
例えば、世論調査会社のギャラップ(多くの日本のビジネスパーソンにとっては、ストレングスファインダー<クリフトンストレングス>の会社としてのほうが馴染みがあるかも😊)の調査によると、従業員のウェルビーイングが高い企業は、低い企業に比べて利益率が20%以上高いことが報告されています。
こうした調査結果は、企業自体が包括的なウェルビーイングを追求することで、経済的な長期的な成功を収める可能性が高いことを示しています。
SDGs(持続可能な開発目標)の影響
SDGsが国際的な共通課題となり、企業の社会的責任が強調される中、ウェルビーイングは企業の戦略において不可欠な要素となっています。
特に、目標3「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」や目標8「働きがいのある人間らしい仕事を提供する(Decent Work and Economic Growth)」が企業活動に大きな影響を与えており、企業による持続可能な未来に貢献するため、ウェルビーイング・セントリックな経営モデルへの転換に対する関心と挑戦は進んでいます。
ちなみに、SDGsの目標3では日本語で「福祉」と訳されていますが、原文では「Well-Being」という言葉が使われています。
このブログを書いている2024年10月時点では、浸透度は十分ではありませんが、今後、日本においてもウェルビーイングという言葉の浸透は加速していくと思いますので、SDGsような国際的な動きの日本語訳においても、ウェルビーイングと言う単語は、いくつかの変遷を経て、最終的にはウェルビーイング、そのままで使われていくだろうと思います。
行き過ぎたカスタマー・セントリック・カンパニーによる従業員や社会環境への対応に関する懸念や問題への注目が大きくなる一方で、一例ではありますが、これまで述べたような具体的な企業を取り巻く環境の変化は、顧客、従業員、政治、国際社会などで顕在化しており、ウェルビーイング・セントリック・カンパニーになる価値と、社会でその果たす役割は、ますます大きくなっています。
これからの時代を牽引し、社会において、その重要な役割を果たすウェルビーイング・セントリック・カンパニーへの企業変革は、時代の要請であり、ウェルビーイングを中心に据えた #ウェルビーイングトランスフォーメーション ( #WX )をやり遂げることに挑戦するすべての企業は、時代のパイオニアであると言えます。
5.ウェルビーイングと生産性の関係
とはいうものの、企業がウェルビーイング・セントリック・カンパニーになることで、その生産性は上がるのでしょうか。(これは私がウェルビーイングと経営の関係に目を向けたときに持った最初の率直な疑問でした。)
ちなみに、公益財団法人 日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2022」によると、日本の「時間当たり」労働生産性は、OECD加盟国38カ国中27位で、主要7カ国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)では最下位という結果です。
この順位は、残念ながら、「生産重視カンパニーの時代」であった1970年以降で最も低い順位の労働生産性となっています。そして、日本の「一人当たり」労働生産性は、OECD加盟38カ国中29位。また、日本の「製造業」の労働生産性はOECDに加盟する主要35カ国中18位。3つの指標のどれもが、下から数えたほうが早い。これが今の日本のポジションです。
この現実を直視したときに、あらためて最初の質問「で、生産性は上がるの?」に向き合い、ここでは、これまでの幸福と生産性の関係を示す主要な研究成果をまとめてみました。
そして、次に、日本国内の政策レベルでのウェルビーイングに関する動向についても書いてみました。
もともと、ウェルビーイングは、人々の幸福を目指すものとして、今から約80年ほど前の1946年のWHO憲章前文で謳われた言葉です。そして、1980年代に入りウェルビーイングの研究は世界中で急速に盛んになり、2000年以降の科学的なアプローチによる研究がさらに進んだことで、客観性のあるデータに基づく幸福と生産性の関係についての多くのことがわかってきました。
以下にそのわかってきたことの代表的な一部をまとめてみました。
幸せな社員の創造性はそうでない社員の3倍、生産性は31%高い、売上高は37%高い。(Diener 2005)
職場での幸せは質の高い従業員の離職を防ぎ、モチベーションを上げる。 (Fisher 2010)
幸せな従業員はそうでない従業員に比べて27%働きぶりが良く、53%出世の機会が多い。(Spreitzer and Porath 2012)
幸せな従業員はそうでない従業員に比べ、仕事のパフォーマンスが16%高く、燃え尽き症候群に陥る割合が125%少なく、組織に対して32%よりコミットしており、仕事に対して46%より満足をしている。(Spreitzer and Porath 2016)
ウェルビーイング・セントリック・カンパニーでは、従業員のウェルビーイングを大切にすることで、個人の幸福感が高まり、企業全体のパフォーマンス向上に繋がっていると推測でき、どうやらウェルビーイングが生産性向上に高い確率で寄与している、と言うのは間違いなさそうです。
このように、非財務情報(ウェルビーイング)と財務情報(生産性)との繋がりが明らかになってきたこともあり、研究者の間だけではなく、日本政府や国内企業による「 #ウェルビーイングの社会実装 」も大きな進展期を迎えようとしています。以下は、その一部です。
政治の世界:2021年の成長戦略実行計画における「国民がwell-beingを実感できる社会の実現」と明記されたことや、自由民主党内では、日本Well-being計画推進特命委員会を設置。
石破内閣総理大臣は、所信表明演説にて『私は、国全体の経済成長のみならず、国民一人当たりのGDPの増加と、満足度、幸福度の向上を優先する経済の実現を目標とします。そのために、官民で総合的な「幸福度・満足度」の指標を策定・共有し、一人一人が豊かで幸せな社会の構築を目指します。』と表明。
私の住む静岡県三島市では、「日本一幸せに暮らせる都市」を目指し、2023年12月に三島市自治会連合会、三島商工会議所の3者が協力し、地域全体で「ウェルビーイング」に取り組む『めざせ!ウェルビーイング宣言』を行い、三島市のあらゆる政策にウェルビーイングを組み込むことを推進している。
経済の世界:2021年の決算発表会にて、当時のトヨタの豊田章男社長は、トヨタの使命(ミッション)を「幸せの量産」と定義したことを発表。この幸せは、まさにウェルビーイングのことである。
そして、2023年3月期以降、上場企業は、有価証券報告書において、財務情報だけでなく、サステナビリティに関する情報や人的資本に関する情報などの非財務情報の記載が義務化されたことが大きな転換点となり、従業員の満足や幸福、能力開発は人事マターから経営マターに。
楽天グループ、丸井グループ、アステリアなどでは、すでに #CWO ( #チーフウェルビーイングオフィサー )の役職が設置され、ウェルビーイングを活用した経営を推進している。
教育の世界:2024年4月から、武蔵野大学では、世界初のウェルビーイング学部が創設され、すでに授業が始まっている。今後はさらなる研究者や専門家の育成機関の設立にも注目が集まっている。
第4期教育振興基本計画(2023-7年度)の閣議決定(文科省 2023)では、日本社会に根差したウェルビーイングの向上について書かれており、今後は、中教審の諮問・答申を経て、2030年度に改訂される次期学習 指導要領(小中高)に反映され、ウェルビーイングの教育が日本全国で始まると予想される。
このように日本の各業界や組織が産学官各々で、そして民(地域社会)が加わった産学官民連携を伴って、ウェルビーイングな社会の実現を目指した新しい大きな枠組み作りは始まっています。これらの状況を見据えたときに、企業も私たち個人も、現代のカスタマー・セントリック・カンパニーの時代から、ウェルビーイング・セントリック・カンパニーの時代への転換期を迎えようとしていると解釈できます。
なお、世界には日本よりもさらにウェルビーイングを積極的に取り込んだ取り組みが数多く存在します。そうした海外のウェルビーイングの事例を含む国内外のウェルビーイングに関連した調査や事例など、より多くの政策や事例を知りたい方は、一般社団法人ウェルビーイング政策研究所 著「幸せ白書 ~人がより良く生きるために政策関係者、地方自治体、学校現場、企業は何をすべきか」(文芸社)をご覧いただくと良いかと思います。
6.カスタマー・セントリック・カンパニーからウェルビーイング・セントリック・カンパニーへの変革、WX(ウェルビーイング・トランスフォーメーション)
ここまで、約50年の企業のあり方の変遷、カスタマセ・ントリック・カンパニーとウェルビーイング・セントリック・カンパニーのそれぞれの価値観と特徴、時代が移行していく理由、ウェルビーイングと生産性の関係、そして日本の産学官の象徴的な最近のウェルビーイング動向について書いてきました。
では、これまですでに大きな成果を残しており、今なお時代を牽引しているカスタマー・セントリック・カンパニーは、今後、その多くがウェルビーイング・セントリック・カンパニーに変わっていくのでしょうか。
実現可能性と私自身の願いも込み込みで、私の答えはイエスです。
ここからは、どのように変わっていくのか、そのプロセスを大胆に予測してみました。前述させていただいている #顧客中心思考 のカスタマー・セントリック・カンパニー(Customer-Centric Company 略してCCC)と、#幸福中心思考 のウェルビーイング・セントリック・カンパニー(Well-being-Centric Company 略してWCC)、それぞれの企業の価値観と定義、私個人のウェルビーイングに関する学び、そして20数年間、国内・外資含めて実際のカスタマー・セントリック・カンパニーの現場で社会人生活を送ってきての失敗からの気づきや学び、実践したことで初めて獲得できた知恵なども踏まえた考えを書いてみようと思います。
まず、固定観念の罠に陥らないように気をつけたいです。これからの社会で選ばれ続けるために、企業がウェルビーイング・セントリック・カンパニーに変わっていくウェルビーイング・トランスフォーメーション(Well-being Transformation 略してWX)を実現させようとすると、DXの「アナログ vs. デジタル」のように二元論的な考えで「カスタマー vs. 従業員」や「利益 vs. 幸福」と言った対立軸のみで(あるいは対立軸を強く意識して)捉えてしまいがちです。
しかし、すでに、前章「5.ウェルビーイングと生産性の関係」の何人もの研究者による様々な研究結果に代表されるように、これらはトレードオフではなく、トレードオンの関係を構築できることがわかってきています。この考えをベースに次からお読みいただけますと幸いです。
同じ山登りにもいくつかのルートがあるように、CCC(カスタマー・セントリック・カンパニー)からWCC(ウェルビーイング・セントリック・カンパニー)へ変わっていくときに異なるアプローチがあるのは自然なことです。しかし、どのようなアプローチをとるにせよ、その変革のプロセスの中で、カスタマー・セントリック(顧客中心思考)とウェルビーイング・セントリック(幸福中心思考)は、相互に補完し合いながら、顧客、従業員、そして社会全体のウェルビーイングを高める視点を取り込んでいきます。
そして、企業は長期的かつ持続可能な成長を遂げるため、CCCからWCCへの変革を遂げる過程で、新しいビジネス戦略を作りながら次のような段階を踏んでいきます。
(※英語的には、名詞はセントリシティなので、私の所属する外資系企業ではカスタマー・セントリック(形容詞)とカスタマー・セントリシティ(名詞)の使い分けをしていたりしますが、かえってわかりにくくなると判断し、表現を名詞的な使い方をする場合も、〇〇セントリックで統一して書き進めさせてください🙇)。
ステップ1. ウェルビーイングによって、カスタマー・セントリックを再定義する
CCC(カスタマー・セントリック・カンパニー)の中で、ウェルビーイングの観点からカスタマー・セントリックそのものを再定義し、顧客満足の概念とは異なる「顧客の幸福度や充実感」を軸にした企業活動を新たなスタンダードにすると決めるステップです。
言い換えますと、顧客満足の追求や顧客ニーズへの最適化に焦点を当ててきた従来のカスタマー・セントリック(顧客中心思考)の企業に、ウェルビーイング・セントリック( #ウェルビーイング中心思考 、 #ウェルビーイング中心主義 、#幸福中心思考 、 #幸福中心主義 )を持ち込むことによって、CCCの本質を変革させ、WCC(ウェルビーイング・セントリック・カンパニー)への移行促進を図るプロセスです。
このステップを踏む企業では、顧客のウェルビーイングを優先させます。
例えば、企業が投資の意思決定をする際に、迅速で効率的な顧客サービスを提供するための投資を増やす道よりも、顧客が長期的に豊かな人生を送るためのサポートを提供することへの投資を増やす道を積極的に選びます。昨今のビジネス戦略上において、多くの企業は顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)を重要視しており、このステップを踏む企業は、顧客体験を「幸福をもたらす体験」へと進化させます。
他にも、食品会社が注文の迅速配送に投資するより、栄養に関する無料カウンセリングや健康維持プログラムを提供するとか、旅行会社が即時予約対応を強化するより、旅行中のメンタルヘルスサポートや人生の充実感を高める特別プランを作るとか、銀行が即時的なオンライン対応を進めるより、資産形成や将来の経済的安定を支援する長期的な財務アドバイスを提供するとか、アウトドア製品メーカーが次々と新製品開発するよりも、顧客が長期的に環境に配慮したライフスタイルを実現できるように、修理サービスやリサイクルプログラムの提供を充実させ、顧客が愛着のあるものを大切に使い続ける幸せと持続可能で豊かな人生を送るための体験を提供する、などの例を挙げることができます。
ウェルビーイングによるカスタマー・セントリックの再定義は、顧客体験に「幸福をもたらす体験」という進むべき明確な方向を示し、新たな息吹をもたらします。業種業界、個社によって適用する内容は異なりますが、このステップは、これからの時代に選ばれる価値観の企業への変革に向けた重要な一歩です。
ステップ2. カスタマー・セントリックがウェルビーイングをドライブする🚗
ウェルビーイングによって、カスタマー・セントリックを再定義し、新たな視点を持ったCCC(カスタマー・セントリック・カンパニー)は、あらためて顧客に焦点を当ててウェルビーイングをドライブするようになります。
もともとCCCは、名前の通り、顧客中心思考の企業です。その能力を発揮して顧客ニーズを的確に捉えることで、従業員や社会全体の幸福に波及効果をもたらすというのがこの段階です。
顧客ニーズに高度に対応する企業が、顧客の満足度を高めることにとどまらず、従業員やサプライチェーンに関わる人々のウェルビーイングも高めるようなビジネスを展開するようになるということです。
顧客によって、持続可能な製品や体験重視型のサービス、また、それらを提供する倫理的な企業が大きな支持を獲得し、選ばれる時代では、企業はその社会的責任を果たしながら利益追求をすることを求められます。
再定義したからといって、すぐに目に見える形で変わるわけではありません。しかしながら、ウェルビーイングによって、カスタマーセントリックを再定義したCCCが、今度は、その再定義したカスタマー・セントリックによってウェルビーイングをドライブすることは、CCC(カスタマー・セントリック・カンパニー)がWCC(ウェルビーイング・セントリック・カンパニー)へ変わる現実的な変革路線だと言えます。
例えば、小売業者が顧客の声を反映したエシカルな製品を提供することで、消費者の満足度が向上し、従業員の誇りやモチベーションも高まるとか、食品会社が顧客の健康志向のニーズに合わせて持続可能な原材料を使用した商品開発を行い、顧客のウェルビーイングを高める一方で、農家やサプライヤーの労働環境も改善するとか、アパレル企業が顧客の求める環境に優しい素材を使用した商品を提供することで、消費者の満足感が増すだけでなく、生産工場の労働環境や従業員の生活水準が向上する、などこれらは着実で実現可能な道のりです。
現在の成長著しいCCCがWCCへ進化することは、社会に与えるインパクトや効果も大きく、また社会全体のウェルビーイングの実現を大きく前進させる力があります。それだけに、CCCが、ウェルビーイングトランスフォーメーション(WX)の効果を副次的なものとして捉えるのではなく、企業の持続的な成長の中心的で最も重要な効果の1つと位置付けることは、社会全体にとっても大変重要です。
この文章を読んでくださっている皆さん、そして私も、様々な企業の提供する製品やサービスの顧客です。顧客は企業が考えている以上に物事に対して深い洞察力を持っています(それを顧客が言語化できるかできないかに関わらず)。それだけに、企業がこれからの時代の波に乗って持続可能な成長を継続するため、顧客の価値観の変化を的確に捉えることは、企業がウェルビーイングを実装( #幸福実装 、 #ウェルビーイング実装 )をする際の強力な下支えとなります。
ステップ3. ウェルビーイング・セントリックとカスタマー・セントリックが統合され、ステークホルダーによってエコシステムが形成される
CCC(カスタマー・セントリック・カンパニー)がウェルビーイングによって再定義されるステップ1、その再定義されたCCCが、ウェルビーイングをドライブするようになるステップ2、最後のステップ3は、企業が理想的な形態として、顧客中心思考とウェルビーイング中心思考を統合させるステップです。
そして、このステップ1~3を進むプロセスにおいて、ウェルビーイングはその企業の内部だけに留まるのではなく、影響の輪は、企業の周りにも広がっていきます。これがウェルビーイング・セントリックの最高にイイところです!
カスタマー・セントリックとウェルビーイング・セントリックの統合は、それぞれの考え方が全体のエコシステムを構成する一部として取り込まれ、その企業と周りを含めた新たな関係性(システム連携)の連鎖を生み出します。
人がウェルビーイングの実現を目指すとき、大事な要素が2つあります。その1つは「自身の前向きさ」であり、もう1つは「人間関係」です。
つまり、ウェルビーイングを向上させようとしたときに、もちろん自分自身でもウェルビーイングでるための取り組みをするのですが、自身だけがポジティブであるというのではなく、その周りも応援するというポジティブな人間関係を持っているか、これも重要なのです。
企業においても、自社のみが前向きな取り組みをするのではなく、その周りのステークホルダーも応援するというポジティブな関係を構築することが、自社のウェルビーイングの実現にとても大事であるということです。
この「 ウェルビーイング・エコシステム ( #ウェルビーイングエコシステム )」は、「 ウェルビーイング・チェーン ( #幸福連鎖 、 #ウェルビーイングチェーン )」とも呼ぶべき新たな関係性によって、顧客、従業員、サプライヤー、社会の全てのステークホルダーに相互に影響し合って相乗効果をもたらし、持続可能な成功への #共進化 を促します。
このような社会では、顧客と従業員、さらには社会全体のウェルビーイングを同時に追求しようとする企業の数がどんどん増えていきます。
そして、これからの時代の企業の競争優位性は、そういった関係性のウェルビーイングをどのように追求し、実現するかによって築かれます。
その競争優位性を確立したウェルビーイング重視の企業文化を持つ企業は、顧客中心のビジネスモデルを持ちつつ、従業員や社会の幸福に軸足を移動させて強化し、顧客満足と従業員のウェルビーイングの間に相乗効果を見出し、双方を高め、持続可能な企業の地位を確立することができます。
3-例1 食品会社の持続可能な農業と地域社会とのウェルビーイング・エコシステムが形成される
例えば、食品会社は「ウェルビーイング・セントリック」の視点を取り入れ、持続可能な農業を推進することで、顧客は健康的で栄養価の高い食品を選び、自身の生活の質を向上させることができます。
そして、この持続可能な農業の取り組みは、「カスタマー・セントリック」な視点からも顧客に安心感と満足感を与え、単なる製品選択を超えた深い信頼関係を築くことが可能です。
同時に、従業員は環境に配慮した製品開発に関与することで、社会に貢献しているという自覚を持ち、仕事への情熱と充実感が向上します。
さらに、サプライチェーンを構成する農家や地域社会も、持続可能な慣行によって経済的な安定を得られるだけでなく、環境保護にも寄与することで、全体がウェルビーイングの相乗効果を生み出すエコシステムを形成します。
3-例2 ホスピタリティ企業のウェルビーイング重視のサービス提供からエコシステムが形成される
例えば、ホテル、レストラン、病院、テーマパークビジネスなどのホスピタリティ企業が「ウェルビーイング・セントリック」な考え方を導入し、従業員の働きがいを高めるための職場環境を整えることで、企業での従業員の貢献度は高まり、仕事への意欲が増します。
その結果、顧客に対してもより質の高いサービスが提供され、顧客は滞在中により深い満足感と幸福感を感じることができます。「ウェルビーイング・セントリック」のアプローチが「カスタマー・セントリック」をより高い次元へ引き上げ、顧客と従業員の間に良い循環の関係がが生まれるようになります。この関係はハーバード・ビジネススクールのへスケット教授とサッサー教授らが提唱しビジネススクールでも学ぶことの多いSPC(サービス・プロフィット・チェーン)のフレームワークとも符合しています。
さらに、この企業が地域社会と積極的に連携し、観光業の活性化や地元経済の発展に寄与することで、地域全体のウェルビーイングが高まり、企業、顧客、従業員、サプライヤー、地域社会が共に成長するエコシステムが築かれていきます。
3-例3 アパレル企業のエコ素材活用からウェルビーイング・エコシステムが形成される
また、アパレル企業が「ウェルビーイング・セントリック」の考え方に基づいて、持続可能なエコ素材を活用した製品を提供することで、顧客は自身のライフスタイルを環境に優しいものに変えて楽しみ、長期的なウェルビーイングを享受できるようになります。
CCCが顧客のウェルビーイングをドライブするアプローチを取り入れることで、顧客は単なる購入を超えた意味を感じ、より深い満足感を得られるようになります。同時に、従業員は持続可能な製品を製造することで仕事への誇りを感じ、やりがいの向上に繋がっていきます。
さらに、地域社会やサプライヤーもエシカルな取引によって利益を享受し、環境に優しい製品を提供する企業と共に成長することができます。
このように、企業、顧客、従業員、サプライヤー、地域社会が共に成長するシステムが構築され、全体としてウェルビーイングの向上するエコシステムが形成されていきます。
日本でもファンの多いパタゴニアなどの米国Bコープ認証企業やサーキュラーエコノミーを重視する企業は、顧客が提供するフィードバックを活かし、製品やサービスの改善に取り組むだけでなく、同時にこのエコシステムの一環として、従業員のウェルビーイングや社会貢献活動を推進する代表的な企業の例とも言えるでしょう。
CCC(カスタマー・セントリック・カンパニー)が主体的にWCC(ウェルビーイング・セントリック・カンパニー)への変革を歩みだすこと、すなわちウェルビーイング・トランスフォーメーション(WX)は、企業がこれからの時代においても持続的な成長を遂げようとしたときに、必須のプロセスです。
そのプロセスとは、ウェルビーイングの観点からカスタマー・セントリックを再定義し(ステップ1)、再定義されたCCCがウェルビーイングを推進し(ステップ2)、最終的にカスタマーセントリックとウェルビーイングセントリックを企業の中で統合させ、顧客やステークホルダーとともにエコシステムを形成し、持続的な幸福と企業成長を両立する形態へと進化(ステップ3)することです。
そして、留意すべき点としては、カスタマー・セントリックとウェルビーイング・セントリックは対立する概念ではなく、両者は相互に補完し合いながら顧客、従業員、社会全体の幸福を高めることが可能だということです。
これまで、政府の方針や経済界の姿勢、社会的な機運の高まり、技術の発展など、様々な要因によって、この難題を乗り越えて成長を続けることはとても難しいことでした。これまでの時代で、ウェルビーイング・セントリック・カンパニーになれたのは、世の中にある多くの企業の中のほんの一握り、その一つまみ、さらにその中の一粒の企業しかできない困難さがありました。
しかし、今、令和になり、VUCAの時代と言われる中にあって、政府による国民の幸福度向上政策の確かな兆し、後押しや経済界の成功の定義の変化、社会の声を上げる力の増大、AIに象徴される技術発展の超加速など、企業を取り巻くビジネス環境はウェルビーイング・セントリックに向けて大きく変化し、顧客の気持ちも、地位財(社会的地位やお金、モノなど、人と他人と比較することで得られる幸せ)への強い執着に縛られず、非地位財(健康や環境による幸せに加えて、愛情ややりがい、自由など、お金では買うことができない幸せ)の探求に価値を見出すように変化してきています。
これらの変化は、時代の潮流を読み、そのきたるべき時代のための準備としてWXの実現に向けた活動に着手する企業にとって、大きなチャンスです。
なぜなら、カスタマー・セントリックとウェルビーイング・セントリックの両者を統合し、顧客、従業員、サプライヤー、社会の全てのステークホルダーの幸福を追求する企業になることで、顧客満足を超えて、顧客や従業員の長期的な幸福を重視し、持続可能な成長を実現させることができるからです。
7.まとめ
会社経営におけるウェルビーング・セントリック(幸福中心思考)とカスタマー・セントリック(顧客中心思考)の関係は、飛行機の操縦士の関係に似ているようにも思います。
キャプテン(機長)がウェルビーイング・セントリック(幸福中心思考)で、ファーのストオフィサー(副操縦士)がカスタマー・セントリック(顧客中心思考)です。目指す目的地は同じでお互いに協力する関係です。一時的に副操縦士が飛行機を操縦することはあっても、重要な意思決定は常に機長の判断に基づいて行われます。つまり、会社経営の重要な意思決定は、ウェルビーイング・セントリックに基づいて意思決定されるのです。
カスタマー・セントリックとウェルビーイング・セントリックを相互作用させながら企業を成長させ、幸福連鎖と共生的なエコシステムの形成をリードして新時代を切り開く新たなリーダー企業こそ、ウェルビーイング・セントリック・カンパニーであると思います。
皆さんの所属されている、あるいは経営されてらっしゃる会社によるウェルビーイング・セントリック重視の時代に向けた準備はどのような感じでしょうか?
ウェルビーイングは、企業の持続可能な成長と社会全体の幸福を実現するための新しいパラダイムです。
新しいパラダイムの浸透で、私の最も大きな人生の体験はインターネットでした。
今でこそ、誰もインターネットに疑いの目を向ける人は、そう多くはないと思いますが、私が1990年代前半に自身の起業のフィールドとして選んだ当時のインターネットは、多くの人が、インターネットを一時の流行のように捉えていたり、何か怪しげなよくわからないものと思っていました。(なにせGoogleは言うに及ばず、Yahoo!Japanもない時代ですから🤣)
そのようなときに、若い私を面白がって、応援してくださりウェブ制作の仕事を発注してくださる企業様や、私と同じようにインターネットの可能性を信じるネット販売の経営者やウェブ制作者の方々には本当に励まされました。
その当時から今のインターネットの変遷と重ね合わせてみますと、今のウェルビーイングの世の中への浸透具合は、ちょうどYahoo!Japanができた頃のような感覚を持っていて、とっても興味深いです。
これまで書いてきたように、ウェルビーイング・セントリックな経営は、顧客体験を「幸福をもたらす体験」へと進化させ、従業員のモチベーションを向上させ、ひいては企業全体の生産性を高めることに繋がっていきます。
北欧の企業は、古くからワークライフバランス(もしかすると、ワークインライフ、はたまはワークライフハーモニーと表現する方が適切かもしれませんが)を重視し、従業員の幸福度を高める取り組みを進めてきました。その結果、高い労働生産性とイノベーションを生み出しています。
また、日本国内でも、ウェルビーイング経営に取り組むことが、従業員の離職率低下に寄与し、企業の業績が向上したという事例も複数の書籍などで読むことができます。
これまでの人生における企業とそこに所属する私たち個人の関わりの多くは、職業人としての側面のみで関わっていました。しかし、それは個人の一面に過ぎません。私たちは、趣味や家族との時間、地域社会への貢献など、多様な価値観を持ち、それらを大切にしたいと考える存在です。
企業が人財をそのように捉えるこれからの時代では、多くの企業はウェルビーイングを重視し、人々が心身ともに健康で、いきいきと働ける社会が実現され、その社会において、企業は単なる利益追求の主体ではなく、社会全体の幸福に貢献する存在として認識されていくようになっていくと思います。
そして、ウェルビーイング・セントリック・カンパニーになるということは、単なる人材育成や福利厚生施策の導入に留まりません。なぜなら、企業の戦略、組織文化、そしてリーダーシップを根本から変革するものだからです。
以下にその代表的なものを挙げていますが、どの施策1つをとっても、本1冊じゃ足りないくらい色々書けてしまうほどにウェルビーイング・セントリック・カンパニーになるための施策は多様です。
従業員エンゲージメントの向上の視点: 定期的な従業員満足度調査の実施、キャリア開発支援、メンタルヘルスサポートの充実など
DE&I推進の視点: 多様なバックグラウンドを持つ人材の採用、インクルーシブな職場環境の構築
サステナビリティ経営の視点: 環境への配慮、社会貢献活動、倫理的な経営
パーパスドリブンな経営: 企業のパーパス(存在意義)を明確にし、従業員がその存在意義に共感し、貢献できるような仕組みづくり
それだけ多くの企業にとって、伸びしろがある理想の姿が、ウェルビーイング・セントリック・カンパニーであり、その競争はこれから本格化していくということです。
これらの施策(上記はあくまで一例にすぎませんが)を導入することによって、従業員のエンゲージメントが向上し、イノベーションが生まれ、顧客に選ばれるプロダクトを提供できるようになり、結果として企業の業績が向上するという好循環を生み出すことができます。
そして、この変革の成功に、経営層のコミットメントは不可欠です。経営層が率先してウェルビーイングの重要性を理解し、組織全体にその価値観を浸透させることが求められる一方で、言うまでもなく変革は一朝一夕に実現できるものではありません。
現場担当者はもちろん、現場責任者や事業責任者も、最初から長期にわたって変革を推進する全権を与えられていることは稀です。
変革には常にリスクが存在します。ウェルビーイング・セントリック・カンパニーへの変革も例外ではなく、特に、短期的な利益を犠牲にする可能性があることや、従業員の満足度を高めるために、顧客や株主の利益を損なう可能性もありうるわけです。
そのため、これらのリスクを最小限に抑えるためにも、なぜウェルビーイング・セントリック・カンパニーになる必要があるのか、その目的を明確にし、具体的な目標を設定すること、そして、従業員、顧客、株主など、全てのステークホルダーの意見を聞きながら経営の意思決定を進めることが大切です。
これらを長期的な視点で強い意志でやり遂げる会社変革の船の舵取りができるのは、経営層だけです。
「5.ウェルビーイングと生産性の関係 経済の世界」で、上場企業に関する非財務情報の開示義務について前述したとおり、企業によるウェルビーイングは、従来の人事マターから経営マターに変わりました。
「財務情報は規定演技、非財務情報は自由演技。」 🤸♂️🤸♂️🤸♂️
かつては、企業の成功は、財務的な数字で測られていました。しかし、時代は変わり、企業は単なる経済主体ではなく、社会の一員として、より多様な価値を創造することが求められています。
ウェルビーイング・セントリック・カンパニーになることは、まさにその自由演技を最大限に活かすということです。それは、画一的な答えがない、創造性に満ちた挑戦です。
そして、ウェルビーイング・セントリック・カンパニーへの道は、一本道ではありません。 従業員のエンゲージメントを高めるための多様な施策、持続可能な社会の実現に向けた取り組み、そして、個々の企業が抱えるユニークな課題に対する独自の解決策など、そのアプローチは無限に広がっています。
大切なのは、自社の強みを生かし、従業員の声に耳を傾け、そして社会全体の幸福に貢献するという、共通の目的を持つことです。
ウェルビーイング・セントリック・カンパニーへの変革は、企業の成長だけでなく、社会全体の変革を牽引する力になります。 この挑戦は決して簡単なものではありません。しかし、その先に待っているのは、より良い社会、そして、よりウェルビーイングな未来です。✨
共に、より良い未来を創っていきましょう!😊
このような超長いブログを最後までお読みいただき、ありがとうございました。🙇🙇🙇