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『最長片道切符の旅』を旅する day32 レールはジェットコースター状態だった
「『最長片道切符の旅』を旅する」は
宮脇俊三『最長片道切符の旅』(新潮文庫)を忠実にたどる旅の記録です。
飛騨古川 0616(高山本線)0852 富山 0923(あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道)1019 金沢 1030(北陸本線)1102 小松 1128(北陸本線)1224 福井 1315(北陸本線)1408 敦賀 1422(小浜線)1612 東舞鶴 1615(特急まいづる・舞鶴線)1623 西舞鶴 1632(舞鶴線)1816 木津温泉
Top写真 宮川を渡る高山本線キハ25(杉原駅 - 猪谷駅間)MaedaAkihiko
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飛騨古川を始発で出る。
今回は高山本線の角川ー猪谷間が乗車リベンジとなる。前回、高山本線を
乗りつぶした際、角川、猪谷間は前年の台風により宮川が氾濫し
不通になっており、その間は代行バスだった。なので今回改めてこの区間は
乗りつぶしの対象区間なのだ。
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高山本線の場合は、神通川の谷がV字型に深く切れ込んでいるので、
さぞかし難工事だったろうと察せられる箇所が多い。よくぞこんなところに線路を敷いたものだと感服させられる。脱線したらひとたまりもないような崖のふちを、細い吊り橋やダムを見下ろしながら約40分ほど下っていくと、ようやく谷が開け、猪谷に着いた。
前回、代行バスを待つ間駅員さんに聞いた話
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鉄道員としては一番情けなかったよね。橋も道床も全て流されてなんにも
なかった。レールはぶら下がってジェットコースター状態だった。
この辺りはトンネルを抜けてきた水が線路やバラストを全部流してしまった。おかげで枕木は全部新しいコンクリートになった。
ま、新しく作り直したようなもんです。
これが(JR)東海側だったからよかったんだ。新幹線があるからね。
60億ぐらいかかったらしいです。
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駅の上の方にきれいなピンクの花が咲いている。
花の名前を駅員さんに聞いてみると
「あの桃色の花はダニ花といいます。ダニがついているんで、
ここいらではダニ花というですよ」
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富山からあいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道で金沢まで。
相席になった70代の夫婦に話を聞いた。
これから金沢まで散歩に出掛けるところ。富山ー金沢は千円ちょっとで
各駅だと1時間、ライナーだと45分なんで、日帰りで買物とか食事に出掛けますよ。
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そうか、富山、金沢って意外に近いんだな。東京、横浜って感じかな。
天気は晴れているが風が強い。
「今日は中国から黄砂が来ております。これから曇りますよ」
そうか、春の季語「霾」(つちふる)とはこのことだったのか。
日本海側は中国が近いんだな。
先生の時代、新幹線は東海道、山陽新幹線の東京、博多間だけが
開通していた。東北新幹線が盛岡まで開通したのは先生の旅行
1978年(昭和53年)の4年後、1982年のことである。
先生の片道切符旅行から45年、新幹線は北海道は函館、九州は鹿児島、
北陸は敦賀まで開通したのだった。
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その当時、富山、金沢、福井、敦賀まではしっかりと北陸本線であった。
ずたずたに分断され、あいの風とかIRとかハピとか訳の分からない名前を
つけられる遙か昔のことである。
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金沢から北陸本線。小松で26分の待ち合わせ。小松駅改札を出たところの「加賀白山そば」でめかりそばを食べる。赤いナルトが特徴。
小松、福井、敦賀とこの辺りは乗りつぶしも兼ねる。小浜線に初乗車、
東舞鶴から西舞鶴は接続が悪く、不本意ながら一駅だけ特急に乗る。
ま、一駅だから普通列車と同じでいいか。席は後ろ向きだった。
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西舞鶴から京都丹後鉄道、昔の宮津線である。
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由良川は丹波の山奥の水を集めて丹後の由良で海に出る中ぐらいの川であるが、河口に近づくと大河のように水量が豊かになる。川とも海ともつかぬ由良川の河口を低く長い鉄橋でゆっくりと渡ると、右窓に丹後の海が開ける。
この辺りは森鴎外の「山椒大夫」の素材となった豪族が住んでいたところである。安寿はあのあたりで汐を汲んでいたのであろうかと目をこらす。
鉄橋を渡る電車はまるで海の上を走っているようだった。こんな情景、ジブリの映画にあったよなあ。
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本日の宿はちょっと張り込んで、木津温泉のゑびすや。
評判がいいこの宿には前から泊まってみたかったのだ。ここでは本当にくつろいだ。大正館のステンドグラスがよかった。青く透き通ったやわらかいお湯がいい。全てコントロールしていながらそれを感じさせないサービスがさすがだ。
夕食前、自転車を借りて浜まで行ってみた。浜でゆっくりと夕焼けを見る。浜にはハングル文字のペットボトルが落ちていた。
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