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本当に私は無知で、本当にそれは偶然だったのか?

私は1海里という距離や、1ノットという速さに関して無知だった。しかし無知だったにも拘わらず、「ノット」という用語を全く別の文脈で、しかも1海里という概念と関連させながら絶妙に用いていたことがわかり、驚いた。大いに。

1海里(国際海里)は1852mであり、これは緯度1分(1/60度)に相当する距離である。そして、1海里を1時間で移動する速さを1ノットという。ついさっき、Wikipediaで調べるまで知らなかった知識である。いや、知っていたのかもしれないが、私の日常生活の中では無用の知識なので、すっかり忘れてしまっていたのかもしれない。

上で述べたこととは全く関係のない文脈での話をする。
私が開発を続けているアプリ、ブケファラス (Bucephalas) には、自転車で出掛けるときの目的地を提案する手法がいくつか組み込まれている。その一つが、地球上に無数の緯線と経線を引いてグリッドを作り、そのグリッドの交点を目的地として提案するというものである。グリッドを構成する緯線と経線はどちらも、1分おきに引かれている。だから、グリッドの一つの枡は、南北方向に1海里の大きさと言うことになるのである(東西方向の距離は緯度によって異なる)。

グリッドの一枡のサイズを緯度経度で1分としたのは、自転車で移動するときに近すぎず遠すぎずというバランスの良い距離を模索しながら決めたものであり、1海里の定義を意識してのものではない。

そして、私は緯線と経線で構成されるグリッドの交点を、こう名付けたのである。ノット。1海里を基準とする速度の単位と同じ名前である。

AppStoreで使っている説明画像の一つ

もちろん、速度の単位の名前であるノットと、グリッドの交点という場所の名前であるノットは、意味するところが全く異なる。私が命名した人工目的地のノットは、緯線と経線で構成されるグリッドを、細い紐で作られた網のようなものと見なし、網であるならば交点部分は結び目となっているだろうという考えからノット (knot)と名付けたのである。

これに対し、速度の単位のノットは、チップログという昔の測定器の紐に、目盛りとして作られた結び目が語源であるらしい。

「ノット」という同一の名称を持つが、片や速さの単位、片やアプリが定義する目的地という、全く別の概念で、命名の経緯も全く別。しかしどちらも1海里という概念が背景にあるというこの偶然。

長い間、1海里と1ノット(速度)の定義に関して無知だったおかげで、この偶然の一致は大きな驚きであり、私を大いに楽しませた。

しかし本当に偶然だったのだろうか?
先に、「知っていたのかもしれないが、私の日常生活では無用の知識なので、すっかり忘れてしまっていたのかもしれない」と述べた。
ブケファラスにおいて「ノット」という名称を使う事を決めたとき、実は私には1海里と1ノットの知識があり、意識的にそれを想起することはなかったが、無意識レベルでその潜在的な知識が命名の過程に影響していた、なんていう可能性はないだろうか?
そういった可能性を仮定することと、純粋な偶然に過ぎないと解釈することと、どちらがより理にかなった考え方だろう?

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