日本のインフラ体力診断-Vol.4の公表にあたって-
土木学会事務局です。
土木学会では、インフラ健康診断・日本インフラの能力診断との組み合わせで、日本のインフラの「強み」「弱み」を総合的に評価する資料・データとして活用していただくよう、インフラの『体力診断』を実施しています。
2021年9月22日に公表した道路(高速道路)・河川・港湾(コンテナ)、2022年7月26日に公表した地域公共交通・都市鉄道・下水道、2023年6月6日に公表した公園緑地・水インフラ・新幹線につづき、街路空間・バルク港湾・空港の体力診断結果を新たに公表いたしました。
本記事は、インフラ体力診断のページに掲載したPDFレポートの内容をnote向けに再構成したものです。一部、脚注等省略している部分がございます。詳細はPDF形式のレポートをご確認ください。
日本のインフラ体力診断書Vol.4の公表にあたって
道路、港湾、鉄道等の交通インフラ、上下水道の都市インフラ及び発電・送電等のエネルギーインフラは、戦後から高度経済成長の中で整備を進め、日本の生活・社会・経済を支えてきた。また、河川の整備は、国民の生命・財産を守る重要な役割を果たしてきた。このように、日本のインフラは、国民の安全・安心、生活水準や経済の発展に対応して、「体力」を確実につけてきた。一方近年では、わが国を取り巻く国際経済環境や安全保障環境が大きく変化するとともに、地震災害、豪雨災害等の自然災害が頻発・激甚化し、さらに深刻なコロナ禍を経て、種々のインフラへの要請も質・量ともに大きく変化・高度化しつつある。また、各種インフラの老朽化が顕在化している一方、人口減少に加え建設業の2024年問題でインフラの構築・維持管理・更新を行う労働力が不足している。これら災害や老朽化、労働力不足は、「インフラの体力」を脅かす要因としなり、その影響は年々深刻になっている。
日本のインフラへの投資に目を向けると、ここ数年、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策や加速化対策として重点的に財政措置されているものの、「日本の社会資本整備の整備水準は概成しつつある」との根拠なき「インフラ概成論」も影響して、1996年をピークにほぼ半分まで減少した状況が続いている。また、日本のインフラ取り巻く情勢を俯瞰すると、「東京一極集中」の是正が進まない中、大都市部と地方部とのインフラの整備水準とそれに関連する生活・交通・産業・雇用等の格差が拡大する一方、本年1月に発生した能登半島地震では、人口減少・過疎化に直面する条件不利地域におけるインフラのあり方について、改めてその課題が浮き彫りになった。さらに、海外各国が積極的にインフラへの投資を行っている中、わが国の相対的な国際競争力が低下し続けていると認識せざるを得ない状況にある。
そこで、土木学会では、「インフラ体力診断小委員会(委員長:家田仁)」を設置し、「日本のインフラ体力を分析・診断し、国民に示す」議論を重ね、2021年に第1弾として主要な公共インフラである高速道路、治水施設、国際コンテナ港湾を対象とした「インフラ体力診断書Vol.1」を、続けて2022年に第2弾として下水道、地域公共交通、都市鉄道を対象とした「インフラ体力診断書Vol.2」を、さらに2023年には第3弾として水インフラ、公園緑地及び新幹線を対象とした「インフラ体力診断書Vol.3」を公表した。
そしてこのたび第4弾として、街路空間、バルク港湾及び空港を対象とし、各インフラ関連の制度・整備の推移、国際比較の観点から質・量双方の総合アセスメントを「インフラ体力診断書Vol.4」として取りまとめた。我が国の同分野における政策、制度への反映を期待するものである。
土木学会では、インフラ体力診断書のほかに、2016年よりインフラの健全性・老朽化の程度を評価し、国民に周知するため、道路、河川、港湾、鉄道、下水道、水道、電力分野の点検診断データ等に基づき評価したインフラ健康診断書を公表してきた。
2022年には「持続可能で、誰もが、どこでも、安心して、快適に暮らし続けることができるWell-Being社会」、「リスクを軽減するための分散・共生型の国土の形成と国土強靭化の加速」及び「持続可能な地方の創生」の達成と、これを実現する制度として、長期計画の制度化、事業の意思決定手法の見直し、公的負担のあり方や、共生促進に向けた国民参加を提案として盛り込んだ提言、「Beyondコロナの日本創生と土木のビッグピクチャー~人々のWell-beingと持続可能な社会に向けて~」を公表している。
これらをご参照いただき、次世代が生き生きと安心して暮らせる未来の国土の姿と、それを支えるインフラのあり方について、周囲の方々と議論を深めていただきたい。
2024年6月 公益社団法人土木学会
部門別診断
第4弾で診断を行った、街路空間・バルク港湾・空港の3つの分野のレポートについてもnote上に公開しています。