水とくらす日本のわざ
土木学会事務局です。
大人が読んでも面白い、ためになる児童書を紹介する不定期掲載「土木技術者も読みたい児童書 #土木の本 」シリーズ、今回紹介するのは2019年2月に刊行されました「水とくらす日本のわざ」(刊 汐文社・監修 中庭光彦)全3巻から、第1巻「生活 井戸・水道・堤防など」です。
第1巻は、「生活にかかせない水」「米づくりにかかせない水」「水とつきあいながらくらす」という3つの切り口で、水とくらす和のわざが紹介されています。
はじめは「生活にかかせない水」として、上水を中心に、水を得るために井戸や水道をつくった先人達のわざが紹介されています。
"十分な量の水を手に入れること、安全な水をつくること、それをとどけること、どれも簡単にできることではありません。そのために、これまでどのようなくふうがされ、どのような知恵がうけつがれてきたのでしょうか。"
-p9
飲み水をえる技術としての「井戸」、水を安全に手に入れる「水道」などの歴史や技術が豊富な写真やイラスト付きで解説されています。
つぎは「米づくりにかかせない水」として、米をつくるための水を使う工夫が紹介されています。
人は、水をひき、水をため、水をわけるなど、米づくりにかかせない水を確保するための知恵を生みたしてきました。-p25
水を循環させる「水田」の役割、川から水をとり、洪水を防ぐ役割も持つ「堰」、水を公平にわける「円筒分水工」など、その仕組みが分かりやすく解説されています。「堰」では「山田堰」が、「用水路」では「安積疏水」など土木学会選奨土木遺産も紹介されています。
山田堰
安積疏水関連施設群
さいごは、「水とつきあいながらくらす」として、水が豊かなゆえに水害になやまされた人びとの水をおさめる知恵を紹介しています。
人は水の近くでくらしてきました。そして、それは水とのつきあい方を学んでいくことでもありました。-p39
「信玄堤」として知られる歴史的な治水技術や、水害から地域を守る「堤防」「遊水池」という現代的な技術が紹介されています。
普段あまり意識しない「水とのくらし方」について、はばひろく知ることのできる本になっています。優しいタッチのイラストとわかりやすい文章で川との関わりを解説されている本書は、水とのつきあい方を一人一人の方にあらためて考えいただけるきっかけになると思います。
最後の切り口である「治水」は、ほかの切り口と比べややページ数が少ないですが、治水技術については河川を管理する国土交通省の河川事務所や都道府県のページなどで詳しい情報が確認できます。
たとえば信玄堤に関しては、釜無川を管理する甲府河川国道事務所さんのホームページで詳しく紹介されています。
画像出典:ふるさとの川を見てみよう!!
(国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所)
全国の一級水系109水系の概要は以下のページで紹介されています。歴史や災害、地域との関わり、自然環境など、水系ごとに紹介されていますので、地理の資料としても活用出来ます。
また、水とのつきあい方においては、治水の考え方がこれまで進めてきたものも踏まえつつ、河川流域のあらゆる関係者が協働して流域全体でおこなう「流域治水」へと転換されました。日本の各地で、「流域治水」の実現に向け、多くの関係者による取り組みが始まっています。
土木学会でも、2021年4月9日に「豪雨激甚化と水害の実情を踏まえた流域治水の具体的推進に向けた土木学会声明」を発表し、この「流域治水」を社会全体で推進していけるよう取り組んでいるところです。
本書のような「水」や「川」を、やさしくわかりやすく伝える本を、書店や図書館で、多くの人に手に取っていただけると、今後の「流域治水」の推進にも繋がっていくのではと思います。
かわに関する「土木の本」は、こちらもオススメ。
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国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/