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2021.09.15【Interview】阿佐ヶ谷・高円寺プロジェクト 人の縁が編まれ、育っていく高架下

新宿まで電車で10分圏内の場所に位置する、JR中央線・総武線 高円寺駅〜阿佐ケ谷駅周辺は、お洒落な若者を中心に人気を集めながらもどこかゆるくつながる、人の温かさを感じるまち。このまちの高架下では、阿佐ヶ谷・高円寺プロジェクトにより、人と人との縁を編んでいく「高架下芸術祭」や「高架下見本市」「高架下お試し利用」といったイベントが行われてきました。高円寺で88年続く老舗銭湯であり、「高架下芸術祭」を共催した「小杉湯」の三代目、 平松 ひらまつ 佑介 ゆうすけ さんと番頭(当時)兼マリンバ奏者の 野木 のぎ 青依 あおい さん、プロジェクトメンバーの 北田 きただ 和美 かずみ さんと 原田 はらだ 健司 けんじ さん、 岡 おか 志津 しづ さんに、「高架下を中心とした新たな人のつながりづくり」についてインタビューします。

この記事の前段となる高架下芸術祭の裏側についてのインタビューはこちらからご覧ください。前編後編



地域の方のやりたいことに一件ずつ真剣に向き合う

北田:2019年の高架下芸術祭を経て、自分なりの高架下活用法を試してもらう試みが2020年の年末に実施した「高架下見本市」や2021年4月~8月の「高架下お試し利用」です。参加のハードルが高いかもしれないと危惧していたのですが、高架下のスペースを使ってみたい方を募集したところ、30件以上もエントリーいただき、思わず震えました(笑)
原田:「そもそもお店やワークショップの経験がないけど、自分も何かやってみたい」と、地域の人がやりたいことを相談に来てくださるんですよ。この場所で何かをやることが全てのはじまり、そんな方々です。
僕たちもみなさんの熱意を受けて、これは軽い気持ちでは運営できないなと思いました。
北田:手を挙げてくださってる方々に、一件ずつ真剣に向き合うのが大切ですよね。


一緒にまちを作っていこう そんな姿勢に背中を押される

野木:これまでの活動で感じたのは、プロジェクトのみなさんが「ここをこうしたい」みたいな部分を、あえて明示してないのがよかったなと。
平松:どうするか一緒に考えよう、みたいな。そこにポイントがあると思います。
野木:みんな何がしたいですか?という切り口で始まっているのがすごくいいなぁと思いました。
そうすると色んな人が「自分もできるかも」と手をあげられますし、うまく行けば成功体験が生まれる。そして新たな景色が見えた。
成功体験をみんなで共有し、それをみんなが家に持ち帰るっていうのがすごく大きいと思います。


寂しいのはまちが自分ごとになっていないから

平松:最近、高円寺に越してくる若い世代の話を聞くと、悲しくないけど寂しい人が多い。自分の住んでるまちにつながりが感じられないから、会社と家との往復になってしまって、すごく孤独感を感じる。そんなケースがすごく多いです。
もちろんSNS的なものでつながれば悲しい感じはしないかもしれないけれど、孤独感みたいなものは常につきまとう。コロナ禍でそれがより加速しつつある。だから改めて地域のつながりを作るのが大切なんじゃないかと。
提供者と受給者の関係性じゃない、いろんな人たちが関わりやすい曖昧な点。境界線がない場所がまちの中に生まれるっていうのが大切だと思うようになりました。そういうところの関わりから、その場所が自分ごとになり、まちが自分ごとになるっていうのがあると思うんですよ。


まちの人との接点になると自然とまちに染み出していく

岡:当社でよく「高架下からまちに染み出す」という表現を使うのですが、平松さんはどのような解釈をされますか?
平松:そうですね。僕が小杉湯で働いて4年半くらい経ちますが、接続する点がどれだけ生まれるか、ということが大事だと思うんですね。でも、長い年月をかけていかないといけないところなので、それを管理しようというのは難しい。色んなところから接続できるポイント、接続させられる点を作っていくことがまずはすごく大切だと思いますし、その接続の点ができて人が集まってくると、やはり自然と溶けてくんですよ。染み出す、だとか溶けていく、というのはキーワードだと思います。




人との関係性を編んでいく

平松:見本市もそうですけど、集まった人と高架下の関係性を育てていくような、そういう長期的に接続の場所を作って編む。巻き込むではなく「編んでいく」のが非常に大切だと思います。
岡:巻き込むって使わないんですね。会社勤めしていると使いがちなフレーズです(笑)
原田:平松さんが先ほど、曖昧がいいと仰っていましたが、高架下にも通じるものがあるなと思います。あくまでもきっかけになる発生源。そういう場所になっていけたらいいな。色んな人達がやってみて、溶けるとか不思議なゆるい状態でいたい。
高架下が「色んなことができる場所」という環境であれば、曖昧な点がたくさん生まれていくのではないかと感じています。


後編は「ケの日のハレが生まれる高架下」を掲載します。
取材編集/くらしづくり・まちづくり室


株式会社小杉湯 三代目 平松 ひらまつ 佑介 ゆうすけ

昭和8年創業という歴史を持つ老舗銭湯の三代目。小杉湯を1日に1000名を超える人が訪れる銭湯へ成長させ、空き家アパートを活用した「銭湯ぐらし」オンラインサロン「銭湯再興プロジェクト」などのコミュニティを構築。2020年3月に小杉湯となりに複合施設をオープンさせる。
高架下芸術祭では総合責任者として、番頭兼アーティストたちのお兄さん的存在を担った。

株式会社ジェイアール東日本都市開発 オフィス・住宅事業本部
原田 はらだ 健司 けんじ

2018年入社。大学では土木、都市計画学を学ぶ。入社後高架下不動産の開発・管理業務を経て現在はオフィス・住宅事業本部開発管理部にて住宅開発、JR寮の管理を担当。最近の趣味はプロレス観戦。
コミュニケーションを大切に日々仕事に取り組んでいます。
<あなたにとって、くらしづくり・まちづくりとは>
まちづくり:地域の方々がその場所に暮らし続けたいと思える環境を考え、かたちにし、それを維持・保全していくことと思っています。
くらしづくり:日々の生活において地域の人々の心が少しでも豊かになる活動、取組みを仕掛け継続していくことと考えています。

※野木青依さん、北田和美さんのプロフィールはこちら
 岡志津さんのプロフィールはこちら

(この記事は当社webサイトから修正、再掲したものです)