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2021.08.04【Interview】阿佐ヶ谷・高円寺プロジェクト アートが生まれる高架下には、人々の情熱が集う

高円寺は個性豊かな飲食店がひしめき、様々な文化が息づく多様性に恵まれたまち。そんな高円寺で2019年に開催された”高架下芸術祭”は、アートを通して高架下への眼差しを変える試みの一つです。2ヶ月に及ぶ芸術祭を支えたのは、地元の老舗銭湯「小杉湯」で働く番頭兼アーティストとADのみなさん。後編は高架下芸術祭を支えた方々についてと、芸術祭を通しての気付きについてインタビューをしました。

前編はこちらからご覧ください。



小杉湯で自分の表現をしたい

野木:私はマリンバ奏者ですが、マリンバをコンサートホールで目にするだけの楽器ではなく、もっと身近な存在にしたいと思って活動しています。大学を卒業してからは、カフェなど日常に近い所で自主的な演奏会を行っていました。
小杉湯との接点は、銭湯とマリンバの響きは相性が良いはずだ!と思いつき、ライブをさせて欲しいとメールをしたのがきっかけです。2018年に2度ライブさせてもらって、小杉湯で働くようになったのはその後です。番頭として働いていたら、平松さんたちが「高架下芸術祭やるよ」と誘ってくださったのが、芸術祭参加のきっかけでした。


夢を持つ人が小杉湯に集う理由

北田:小杉湯には「番頭兼アーティスト」の方が多い気がしますが、何か理由があるのですか?
平松:自分自身がそうだったように、みんなにも小杉湯を”利用”してもらって、自分のやりたいことを実現していって欲しいんです。高円寺という土地柄か演劇や音楽をやっている、夢を持っている人がアルバイトに多くて。その夢を応援したいと思っています。一般的なお店だと週6日間営業の場合、週5日とかたくさん働ける人を雇用した方が楽ですよね。でも小杉湯はその逆で、一人当たりの勤務時間は少なくて、その代わり人数を多く雇い、たくさんの人を応援しています。
採用する時も、小杉湯を通じて夢を持ってやりたいことがある人たちに働いてもらうようにしています。そうした背景もあって、番頭兼アーティストが多いんです。


周囲に熱量が伝わっていく

北田:芸術祭は約2か月の間に15のイベントを開催し、本当に準備が大変だったと思いますが、準備に携わったみなさんのパワーに圧倒されていました。
アーティストさんもですが、ADの方も熱心に取り組まれていましたよね。単に小杉湯が好きだという方々が、ここまで活動に取り組んでくれるというのに驚いて。
野木:「AD」と書いて「遊び心ディレクター」という呼び方が良いですよね。番頭のアニーさんこと 安田 やすだ 明日香 あすか さんが考えてくださいました。
芸術祭のお手伝いをしてくださるボランティアの方を、サポーターやアシスタントという名称にしない、上下関係みたいな表現にしないのが大切で。「いつでも楽しかったら参加してくれたらいいし、疲れてたら参加しなくていいよ」という入りやすいニュアンスを出してくれました。


遊び心ディレクターは芸術祭一番の作品

野木:企画メンバーは自分たちの準備が忙しくて、細やかな配慮ができなくて。広報や誘導係など、ADさんたちが受け持ってくれたんです。
みんないつもニコニコしていて、芸術祭を通じてプライベートを楽しむ様子が伝わってきました。近くのお店に飲みにいったりして、そこでまたお店の人と仲良くなり、お店が芸術祭を他のお客に紹介してくれる。高架下のお店だから、芸術祭と周辺をつないでくれるんですよね。そして、こちらからは、芸術祭のTwitterで、そのお店を紹介するという循環が生まれます。
イベントで披露した、具体的な企画も作品ですが、予想していない一番の美しい作品がAD活動だったなと思います。


歩きたくなる高架下に近づいた

岡:私たちも、歩きたくなる高架下を目指して色々やってきて。過去には映画祭も企画しました。普段シャッターが閉まっている高架下が、一晩限り夢のような素晴らしい光景をみせる。これで高架下のイメージが変わったかなぁと思ったのですが、その1日だけだったんですよね。成功はしたものの、こちらの想いを一方的に押し付けたのではないかという気持ちも残って。
その後、高架下を楽しむアイデアをまちの方々から募集した中で、芸術祭の案がありました。
その時に思い描いた案のひとつを、高架下芸術祭として形に出来た。更にアートによって高架下という日常に彩りを作れたというのは、我々の中でもよいタイミングだったと思います。
北田:全部が繋がっている。偶然のような必然のような、運命的なものを感じますね。

※後日、小杉湯さんとのプロジェクトインタビュー第二弾を掲載します。

取材編集/くらしづくり・まちづくり室


マリンバ奏者・小杉湯元番頭 野木 のぎ 青依 あおい

11歳からマリンバ演奏を始める。「健康とユーモア、子供心が踊ること」をモットーに、公共空間での即興演奏や親子向け音楽イベントを企画する。
小杉湯の元番頭。深夜帯の番台に座り、浴室でのマリンバライブを定期的に開催していた。高架下芸術祭では出演と併せて運営ディレクターを担当。
オフィシャルサイトはこちら

株式会社ジェイアール東日本都市開発 施設管理本部 北田 きただ 和美 かずみ

2013年入社。開発事業本部開発一部で2年半、開発事業本部開発調査部タウンマネジメントグループで3年過ごし、現在は施設管理本部住宅グループにて新築住宅計画等に携わっている。阿佐ヶ谷・高円寺プロジェクトの活動はタウンマネジメントグループ在籍時より開始し、現在に至る。よく寝てよく食べることを大切にしているので、基本健康です。

※平松佑介さん、岡志津さんは前編で紹介しています


関連リンク

高架下芸術祭 : https://www.jrtk.jp/topics/archives/2497


(この記事は当社webサイトから修正、再掲したものです)