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ミライの小石10.職場環境をパーソナライズしよう(Bring Your Own Office)

コロナ禍でようやく本格化したリモートワークですが、昨年末あたりから再び以前のワークスタイルに戻り始め、それを嘆く声も聞くようになりました。同時に、そもそもコロナ禍以降に入社した会社員は、研修や歓迎会などのフェイス・トゥ・フェイスの社内コミュニケーションが少ないためか、疑問や不安を抱えたまま転職してしまうという話も聞きます。

いずれにしても、リモートワークというニューノーマルな働き方をきっかけにして、一人ひとりにとっての働きやすい職場とは何か?また、ワークライフバランスはどのように実現していくことができるか?を考え、対話することができるようになったことは確かでしょう。

そこで、最初に紹介したい記事は、ニューノーマルを考える際に引き合いに出されやすいZ世代が、新卒で選んだ仕事が墓守だったというもの(※1)。この中国の女性は大学で埋葬と墓地管理を専攻していたからという背景もありますが、「十分な余暇があり、美しい景色に囲まれ、煩わしい社内政治のない環境が整っている。もちろん長時間労働もない」環境を手に入れており、それが彼女にとってのワークライフバランスの実現手段だったと言えるようです。

ただ、こうした仕事環境を自ら選択したくても、現状ではそもそも選択肢が企業側から提示されていないと感じてしまいますよね。

そこで注目したいのは、社員の8割以上がアスペルガー(現在ではASD:自閉スペクトラム症と称されることが一般的)というノルウェーのITコンサル企業です。この会社では自閉症にフレンドリーな職場環境を推進してパフォーマンスを上げているようです(※2)。例えば、「光に敏感な人には窓の遮光をしたり、視覚が敏感な人には、壁際の席を用意したり、聴覚が敏感な人には入り口やコーヒー・マシンの近くの席は避ける」など、一人ひとりの特徴に合わせてカスタマイズしているとのこと。このように自閉症といってひとくくりにしない態度は、多様な人材を採用していながら全く同じ職場環境や人事制度しか提供していない経営者や現場リーダーが見習うべきものかもしれません。

これまでは、障がいや疾病を持つ社員、あるいは出産・育児・介護や留学などの必要が生じた社員がいると、仕事を休ませて職場から離脱させることしかできていなかったとすると、そもそも個々人がパフォーマンスを発揮しやすい環境の在り方を会社と個人とが対話しながら作り上げたらどうでしょう?一人ひとりやっていては大変ならば、まずは部署別や職種別、地域別などで始めてみてもいいかもしれません。また、対話することで、社員本人も意識していなかった自身のパフォーマンス特性に気づかされることがあるかもしれません。
欧米にはBYOG(Bring+Your+Own+Gear)という言葉があり、PCやスマホ、文房具など仕事に使うギアは個人が職場に持ち込んだ方が便利だという概念です。これは流動性が高い社会ならではの知恵とも言えますが、会社が一律にPCを用意して配布することが当たり前になっている日本の仕事文化を見直してみたくなりますね。


(※1)新卒で墓地勤務「Z世代の墓守」は給料も職場環境もノーストレスーニューズウィーク日本語版 2023年4月3日閲覧
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/11/z-7.php

(※2)
ノルウェー発「アスペルガー」だけのITコンサル企業のユニークな経営戦略―Forbes Japan 2023年4月3日閲覧
https://forbesjapan.com/articles/detail/52715

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