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ミライの小石26.ケア/交流ファーストな都市空間づくり

こんにちは、あわたです。

東京の新築マンションが1億円を超えたそうで、住まいに関する富裕層と庶民との格差は一段と広がった感がありますね。先んじて地価が高騰した香港やロンドンなどの都市では、低所得者層が立ち退かざるを得ないジェントリフィケーションが起こっているとも言われています。
一方で、都市開発そのものは都市機能の集積率を高めるコンパクトシティや、既存交通手段の連携を図るMaaSなど、地域の資本効率を高める取り組みが中心に見えます。都市開発そのものは都市機能の集積率を高めるコンパクトシティや、既存交通手段の連携を図るMaaSなど、地域の資本効率を高める取り組みが中心に見えます。
このように、富裕層ファーストかつ資本効率ファーストな都市開発を眺めていると、
都市の未来像においては、一般庶民がどのような住居にどのように暮らしているかをリアリティをもって描かれているだろうか?
という疑問が湧いてきます。

さて、そんな都市開発のありようについて思考を巡らせているときに、経済合理性重視だけではない庶民の都市居住のあり方を示唆する記事を見つけました。

一つは、低価格で住まいと社交の空間を提供する「青少年老人ホーム」の人気が高まっている、という中国のニュースです。
中国初の青少年老人ホーム:月額家賃1,500、45歳以上は住むことができません (qq.com)

 青少年老人ホームの利用者は、「一つはフリーランサーで、ここで社交の機会を増やそうとする人々。もう一つは仕事や生活で行き詰まりを感じている若者たちで、休息した後に再び出発する人々」だそうです。
これは、少し前から中国の若者の間で広がりつつも、経済合理性を重視する人々からは眉をひそめられることが多い「躺平(タンピン:だらだらと寝そべる、の意)文化」を、積極的にシェアするような都市空間づくりと言えるのではないでしょうか?


もう一つも中国のニュースですが、「親の面倒を見る一人っ子同士」が共同生活を行う可能性について考えさせられる記事です。
約2億人の一人っ子の崩壊は、両親の最初の病気から始まりました (qq.com)

 現在の中国は「単独二子(二人っ子)」政策を実施していますが、かつての「独生子女(一人っ子)世代」が中年になり、夫婦二人で四人の親と二人の子供を養わなければならないという状況に直面していることを報じています。しかし、中国ではかつて集合居住形式の住宅(北京の四合院など)があったことを考えると、「一つの大きな中庭を共有し、互いに助け合いながら互いの親や子供の世話をするような」住宅様式が復活するかもしれないと思わせられます。

  • 中庭がある集合居住形式の住宅については、空間人類学を専門とするウスビ・サコ教授(京都精華大学前学長)から「マリには中庭を中心に数軒の家が取り囲むような集合住宅が伝統的に多く、住人は自然と中庭に集まるため、家族を越えたコミュニティが形成されやすい」というお話を伺ったことがあります。日本で言えば江戸時代の長屋みたいな居住形態でしょうか?


この2つの記事から感じられるのは、「日常的に誰かをケアしている人は、何かを他人とシェアすることに抵抗がない」、あるいは「何かをシェアしやすくする交流空間は、誰かをケアしやすくする空間でもある」ということです。
人口減少時代の日本において「個人単位で暮らす」人が増えれば、ケアやシェアの重要性がいっそう増すことが想像されますが、そうであれば「シェアラーとケアラーとは重なり合う」ようになるかもしれないし、ケアする者同士が寄りあい相互にケアしやすくなるような都市空間づくりが始まるかもしれない。
そうしたケア/交流ファーストな都市空間づくりが見えてこないでしょうか?


  • ケアという振る舞いの見える化については、アムステルダムのアート集団が「Invisible Care Map(目に見えないケアの地図)」というプロジェクトを行っているようです。


では、
ケア/交流ファーストな都市空間づくりにおいて、
人々の移動はどのようになっているでしょうか?

そこで気になった記事は、神奈川県で自動運転ロープウェイが計画されているというものです。


地上でも地下でもなく、空中(中層)を移動するロープウェイの推進は、
中層空間が新たな生活空間になる可能性
を示唆していないでしょうか?

  • 中層ベースのまちづくりとしては、仙台駅前や「東雲キャナルコートCODAN」などのペデストリアンデッキが思い当たりますね。地上を走る自動車やバスと中層を移動する歩行者とを空間的に隔絶することに端を発していますが、単に移動するだけでなくデッキ上のオープンな広場で交流する等、シェアラーやケアラーの生活が息づく可能性が見えてこないでしょうか?


さらに、こちらは高層ビル内でのドローン利用についての実験を報じています。

建物内の人流・物流についてはエレベーターやエスカレーターによる縦移動を中心に考えがちでしたが、ドローンを使った建物内や建物間の人流・物流を想像すると、建物内外の中層空間をより柔軟に生活空間として捉えた都市開発の可能性も見えてきそうです。


このように考えると、今日の地上空間(道路、線路)は「物流」に象徴されるように産業/自動車ファーストに形成されてきましたが、
ケアという営みの見える化が進めば
都市の中層空間(ペデストリアンデッキ、ビル内外)は
ケアラーやシェアラー同士を柔軟につなぐ多様な移動手段によって
「ケア流」空間として

編みなおされるのかもしれませんね。


こんな都市開発に関わるミライの小石を拾ってくださる方(自治体、ビルオーナー、交通事業者、医療・福祉事業者など)がいらしたら、ぜひご連絡くださいね
妄想するだけでなく、少しずつ形にしながら課題をクリアしていきたいものです。ではまた~。


(発想の元になったスキャマ) 

  • 親4人、子2人の面倒を見る一人っ子世代が、共同生活を行う?

  • 寝そべるだけではなく、「青年養老院」で生活をシェアする若者たち

  • 人の移動は「中層」が中心になる

  • ビル内配送もドローンで


この記事を書いた人 あわた

博多出身のモラトリアム世代。職業は旅人と言ってみたいが、英語と酒が苦手なのが玉に傷。
関心…自転車散歩/珈琲野点/里山/アウトフィッター/EDC/写真/路上観察/水平思考

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