東大2次試験点数別のイメージとその進路(文系編)
今日は久しぶりの受験関係の話。
東大の2次試験の点数とその点数帯にいる人のイメージの話になる。
筆者が東大文系にいたので、扱うのは文系編。
東大文系の最低点は大体350程度と言われている。勿論これより高い年もあれば低い年もある。直近のデータを見てみると最近では340点程度の年が多いし、それよりも下振れしている年度もある。
共通試験は110に圧縮され、9割だと99。
イメージとしては2次試験で250取れば普通の年度であれば普通に合格する。
文系の厄介なところはこの250に達するには普通は1つも科目を捨てれない点。
英数国社の全部をバランスよく取る必要がある。数学は差がつく科目であるが配点が絶妙に80しかないので、ここだけでぶっちぎることもなかなか難しい。これが京大や一橋との違いである。学部にもよるが、この2つは数学ぶっちぎりのパターンでも合格に持っていけることが多い。
それでは、筆者の経験則での点数別イメージを語る。
合格最低点が250くらいの時は概ね文2の合格者平均点は270~275くらい。そして合格者の点数分布としては正規分布ではなく、合格最低点から10点近い高い260~270くらいに結構なボリュームがいる。意外と最低点付近はそこまでいない。
そして同時に右側にファットテールである。信じられないくらい高いスコアを叩きだすものが理論値よりも多く存在する。
320、330、340みたいなスコアである。正直、どうやったらこのスコアが出せるのか教えてほしい。
それでは、以下に筆者が見てきた合格者の点数帯とそこに属する人のイメージを語っていく。筆者は文1、2クラスに属しており、文3の友人は殆ど皆無に等しいので、文1、2に限定して話していく。
それでは点数帯別に見ていこう。
250〜260:意外と合格者の中ではそんなに見ない点数帯。
筆者の観測範囲では、模試で無双していた浪人生にこのパターンが多い。
模試で全国10~30番みたいな人でも少しミスをするとこの点数帯での合格になる。合格すれば点数は関係ないので何でも良いのだが、危なっかしさは残る点数ではある。
なぜ模試無双の浪人生がこの点数帯に落ち着くのか分析してみたことがある。
まずは緊張。文系浪人生にとっては、東大に入学できる実質人生最後のチャンスである。落ちたら早慶、下手したらもっと下もあり得る。
人生で味わったことのない極限のプレッシャーに襲われる。
実際に筆者も極度の緊張に襲われたのを今でも鮮明に覚えている。
渋谷のマークシティのホテルで殆ど眠れなかった絶望的な夜と逆に数学の第一問が解けたときの異常なまでの安心感。この二つの感情は死ぬまで覚えていることであろう。
そして次にこの順位に収まる浪人生は、前年度もすれすれで落ちている人が多いという事に気づいた。現役では5点差ほど足りなかったパターンが多い。このパターンは意外と翌年もギリギリ合格になる。このパターンの人は現役時代も進学校で確り勉強していたケースが多く、あまり伸びしろが無い。浪人すれば文系の方が伸びそうだと思われるかもしれないが、東大の地歴は特殊なので浪人しても10点ほどしか伸びない。
後はこのパターンで入ってくるのは、都会の進学校の中間層が現役で最後の最後に何とか伸ばしてギリギリで滑り込むパターン。彼らは東大模試でC~E判定しか取ったことが無いが、地頭は悪くないので何とか数学や地歴で点数を伸ばして入ってくる。殆どのケースで英語の点数は悪い。
因みに予後としては、意外とどちらも悪くない。前者は真面目に授業に出席してそのまま司法試験に受かった人も知っているし、後者も高いコミュニケーション能力を活かして外銀等に合格したりする。外銀は本当に一定程度の頭があれば、そこからはその他のスペックが重要になってくる。東大入試で合格最低点を取れるくらいの頭脳があれば十分と言うことであろう。ただしこの場合は外銀の中でも激務な投資銀行部門に入るケースが殆どだ。
260〜270:一番見かけた点数帯
この点数帯は筆者が一番見かけた点数帯である。
合格平均点には届かないが、ギリギリ合格でもないというパターンである。
ボリュームゾーンとしては、東大模試で何とかA判定であった浪人生やB~C判定を取っていた現役生が多い。
前者の浪人生は上のパターンとは逆で、現役時代は30点差とかの大差で東大入試に落ちている者が多い。地方の公立組が多い印象である。
彼らは公立中出身で地元のトップの公立高校に進学し、既定路線で現役では間に合わず、1浪して何とかして合格してくる。
ある意味、順当に合格していったというようなイメージである。このタイプはどの科目も満遍なく取っていることが多い。進学校に存在するような英数ぶち抜け型はあまり存在しない印象である。
B~C判定の現役生は、進学校出身者も多いが意外と2番手や3番手の高校から来ているケースも多い。
彼らは大抵のケースで中学受験でトップ校には合格せずに、それらの高校に進学しているが、そこで上位の成績を取り続け、現役でこの程度の点数をもぎ取ってくるケースが多い。
予後の話になるが、実はこの点数帯が一番危険である。
文2から経済への進学に失敗する者が一番多いのもこの点数帯であるし、就活でもうまくいかないことが多いことが多いのもこの層である。やはり元々の属性があまり良くないと言うのが影響しているのではないかと思われる。
そこまでギリギリでの合格でもないので気が緩んでしまうというのもあるかもしれない。またそもそも受験までに一番エネルギーを使い果たしているのもこの層なのかもしれない。入学後の頑張りが求められる層ではある。
270~280:合格者平均とそのやや上
この点数帯になってくると現役生が増加してくる。
浪人生であれば、東大模試において文2であれば40番以内に入っていたような層が多くなる。浪人時の模試の判定は殆ど全てA判定に近いだろう。
現役生でもA判定、進学校出身、中高6年かけて勉強に取り組んできた層がこの点数帯には多い。この層辺りからまぐれでの合格は消えてくる。
個人的な感覚ではあるが、250~270の点数帯の多くは、もう一回受験したら落ちていても全然おかしくない者がいっぱい存在すると思われるが、この点数帯になってくるとそのようなまぐれの存在は消えてくる。
ただ進学校出身とは言え、この層はまだまだその進学校ではトップ層ではない。本当の上はまだこの上に存在する。
東大合格者が15人程度の高校であれば、文系トップの可能性もあるだろうが、それよりも多い進学校だとこの点数帯ではトップには届かないと思われる。
この点数帯の特徴は、とにかく英語と地歴の点数が安定していることが挙げられる。この二つの科目は点数がブレにくいので、合格する確率を最大まで高めたいのであれば、この2科目を頑張ることが肝なのであるが、その2つを確りと抑えてきているイメージがある。英語、地歴それぞれ80で合計160、これを何回試験をやっても安定して取れるところがこの層の強みである。
恐らく合格者の点数分布は綺麗な正規分布ではないと思われるので、合格者平均くらい取っていれば合格者の中で上位35〜40%程度のところに属しているイメージである。
予後であるが、この層の予後は普通である。可もなく不可もなくと言ったところである。日系金融にも総合商社にも普通のメーカーにも存在するイメージである。勿論文一であれば司法試験に合格している者も存在する。
余談だが筆者の浪人時の点数はここで、文2の合格者平均よりも8点くらい高かった記憶がある。結構頑張った受験生時代ではあったが、自分の才能の限界を知ったような気持ちになったのを覚えている。
280~290:合格者平均より明確に上で合格者の中でも上位
この点数帯になるといよいよ浪人生は殆どいなくなる。
殆どが現役生で占められるイメージである。つまりここからは一定程度、才能がものを言う世界になってくる。
科目別の点数イメージでは、
英語:85
地歴:80
数学:60
国語:60
くらいのイメージである。
これが凡人が取れるマックスである。しかも一つもミスをしない前提での。つまり合計でこの点数帯に達するのは相当難しい。
出身母体としては、東大合格者が25名ほどの高校の文系トップである。模試でも現役生ながら冊子に掲載されているような層である。超進学校でも上位層であったものが多くなる。
浪人生の場合は、当日の緊張と才能の問題からかこの点数には達することは殆ど無いと思われる。
彼らの多くは、無難にいいところに就職していく者が多い。
インフラや総合商社、またこの層辺りから官僚になるものが増加してくる。
何故か分からないが、この点数帯の者は体育会系の業界に進学しているケースが多い。自分にストイックなものが多いのだろう。
290~300:ほぼトップ層
この層は明確に模試で上位を占めていたような層である。文2であれば20番以内、文1であれば50番以内にランクインしていたような現役組が太宗を占めるだろう。彼らは何回受験しても東大に合格してくるような層だ。
科目別の点数イメージとしては以下のような感じだろう。
英語:90
地歴:80
数学:60
国語:65
まずこの層になってくると数学が得意でないとだめなので、必然的に都会の進学校出身者が多くなる。イメージとしては東大に50人程度合格してくるような進学校の文系トップ級でないとこの点数は取れない。
ここまで来ると明確に才能が必要で、まず基本的に国語と言うかかなり高い文章力を有していると思われる。国語力が全ての科目の土台になっているので、ここが弱いと東大入試では他の科目の点数にも限界が来る。
つまり国語と数学の長年の基礎が出来上がっており、そこに英語の積み上げと社会のブーストが乗ってくる印象だ。
ちなみにこの点数帯になると、いよいよ民間就職者は減ってくるイメージだ。筆者が見てきたパターンでは、外銀のトレーダー職や官僚、弁護士などが存在した。この点数帯になるともはや民間企業に行くのは勿体なく感じられるレベル感である。
ただ怖いのは文一の場合はなぜかこの点数帯でも、就職活動に失敗したり大学で留年を繰り返す層も出てくる。
その意味では文2でこの点数帯の者の方が予後と言う観点では平均的には優れているケースが多いだろう。
300~330:トップ層
まずなかなか見ない層である。
筆者の個人的な推計値にはなってしまうが、この点数に届くのは文2で5〜8名程度、文1で20名程度と言ったところであろう。殆ど遭遇しないと言っても過言ではない。
点数イメージとしては以下のようなパターンが多いのではないかと推察される。
英語:95
地歴:85
数学:65
国語:70
ここまで来ると東大合格者ランキングで全国トップ10に入るような高校の文系首席級クラスの争いになってくる。
恐らく特定の高校に固まっており、灘、東大寺、桜蔭、開成、筑駒、聖光辺りのトップ層が同じ高校内で争っているようなイメージだ。東大模試で上位層の高校の県はだいたい東京、神奈川、兵庫、奈良になってくる。
普通の人間ではまず取れない点数で、高校受験組も殆ど皆無に近いと思われる。
この層は民間には来ないと思って良いだろう。
民間に来ても外資の戦コンくらいだ。
はたまた起業している者もいたりする。
そしてメインは官庁とここも司法試験組だ。司法試験も予備試験組が普通に出てくる。
もはやなかなか会えない層だと思って差し支えないだろう。
340~:首席
この点数になってくるともはや首席を狙えるクラスである。
文2だと殆どのケースで首席、文1だと350あれば首席だろう。
科目別の点数イメージでは、
英語:100
地歴:90
数学:80
国語:70
のような点数配分になってくる。
ここは殆ど灘、筑駒、そして1部その他超神学校の主席の争いだろう。普通の進学校では太刀打ちできないクラスである。そして、文一の首席というのは模試の段階で予想がつくことが多い。1人だけ異次元の点数をたたき出している者がおり、彼らは順当に首席を勝ち取ってくる。文2の場合は、それよりも少しTierは落ちるがそれでも間違いなく全国トップ校の首席クラスである。もしくは灘や筑駒の2番手のケースもある。彼らの場合、敵は全国ではなく、同じ校舎の中にいると言ったイメージだ。
この層は民間企業には流れてこないし、来ても仕方がないというイメージである。その頭脳を活かすことが出来るとすればマッキンゼーのような戦略コンサルくらいであろうが、それでもオーバースペックである。
このクラスは筆者の時代であれば、官庁の中でも花形クラスか弁護士と相場は決まっていた。また一部は大学に残って研究者になっていたりもする。今はどうなっているのか分からないが、あまりこの層に関しては変化ないのではなかろうか。
ちなみに首席クラスには大学に入って遭遇したことがあるが、明確に天才と言うイメージだ。
正直同じ大学ではあるが頭の構造は明確に他の東大生と違い、もはや東大に来ているのが可哀想にも思えてくる層である。こういう全国レベルの化け物に会えるのが東大の良いところかもしれない。
以上が点数別の合格者のイメージ像である。
改めて思うが東大入試というのはなかなか厳しい試験である。