敢えて東大の勝っている点を挙げてみた【東大vs医学部】

筆者はこれまでの記事で東大に行ける学力があるのであれば、医学部に進んだ方が無難であると述べてきた。
この考えは、学生時代よりも社会人になってからの方が強固になっている。

ただ医学部の肩ばかりを持つのはフェアではないと思うので、今回は敢えて
東大が医学部に勝っている点を列挙してみたい。

結論から言うと以下の点が挙げられる。
1.都心のど真ん中で大学生活を謳歌出来る
2.勤務医と同程度の収入を期待できる企業へ就職できる可能性は低くない
3.同級生のレベルが殆どの医学部よりは上で刺激を受けられる
4.肉体労働を伴わない知的労働に就ける
5.最先端の研究が出来る
6.グローバルに活躍するチャンスが出てくる
7.人間関係が閉鎖的でない
8.自由な大学生活を送ることが出来る


1.都心のど真ん中で大学生活を謳歌出来る

これは立地の問題なので仕方ない。東大の場合は、1,2年の間は駒場、3,4年の間は本郷に所在するため、立地と言う点では東大医学部を除く全ての医学部に対して優位にある。(勿論何をもって優位と言うかは難しいのだが)
東大にはそのブランド名と立地のよさから、様々な女子大とのインカレサークルが存在する。筆者の時代には、お茶大を筆頭に、日本女子大、聖心女子大、白百合女子大、東京女子大等本当に色々な大学とのインカレサークルが存在した。
また都心にあるがゆえに社会人との接点も持ちやすく、長期インターン等に参加している学生も多く存在した。就活でも本郷から東京駅は10分ちょっとなので授業と就活を並行して行いやすいといったメリットがある。
他にも都心にあるゆえに最先端の情報が入ってくるため情報感度が高くなるというのも大きなメリットであろう。
勿論デメリットも存在して、それは家賃が圧倒的に高いという事だ。以前の記事でも記載したが、駒場や本郷周辺は家賃相場が高く、最低でも8万程度の家賃が必要で、これは一定程度裕福な家庭でないと仕送りを送るのが厳しい。東大は地方出身であっても、親が医者、公務員共働き、地主等のケースが多かったのであまり問題にならないのかもしれないが、普通の家庭がここに参入する場合はその限りではないであろう。

2.勤務医と同程度の収入を期待できる企業へ就職できる可能性は低くない

勤務医の平均年収は1400万程度とのことだ。一説によると都内は医者が飽和しているので、これよりももう少し低いらしい。
東大の中で上位3割程度の就職先に収まれば、40歳で1500万程度の年収を得ることは難しくない。これは何も戦略コンサル、総合商社、外資系投資銀行などの圧倒的に稼げる業界でなくとも良い。
日系金融や政府系金融機関、総合コンサルであっても40歳で1500万はそれほど難しくないだろう。日系金融の一部や総合コンサルでも早い人であれば、30代半ばでも達するラインだと思われる。これらの企業に入るのは、決して東大の中で優秀層である必要はなく、平均的な東大生であれば普通に内定を獲得できるだろう。
しかもこれらの企業は今ではリモートワークも可能であるし、勤務医ほどは激務でないため、現役時代のコスパと言う観点では、東大からこれらの企業に就職する方が良いかもしれない。また東大卒は一定程度優遇されるので、海外駐在や海外留学の対象にも選ばれやすい。
価値観の問題にはなるが医者になって、市中病院で勤務医を行うのと、海外駐在するのでは、後者の方が良いという人も多いかもしれない。
但し東大の場合は、やはり以下の4点の問題を抱えることになる。
①本当にそれらの企業に就職できるのか?
②本当に就職後に出世コースに乗れるのか?
③医者よりはるかに短い現役時代と自由の無さ
④ブルシットジョブに耐えることが出来るか?
こう考えると不確実性はやはり医者になるよりかははるかに高い。これらのリスクを許容できるのであれば、医学部と比較して東大も悪くない選択肢かもしれない。
注意したいのはこれはあくまで勤務医との比較であり、やはり開業医や自由診療となると一般的な東大卒では全く敵わない世界となる。

3.同級生のレベルが殆どの医学部よりは上で刺激を受けられる

これは、医学部再受験に成功した東大の同期が言っていたことであるが、医学部の同級生と東大の同級生を比較するとやはり、東大の同級生の方が頭が良いということだ。(医学部卒の人に怒られてしまうかもしれないが)
これには以下の理由がある。
①東大はその上の大学が無いので、上を見るときりがない
②医学部は偏差値が輪切りになっているので、学生のレベルのレンジが狭い
③東大の入試問題と医学部入試の性質の差。前者は難しい問題から点数をもぎ取るゲーム、後者は中難易度の問題でいかに点数を落とさないか。

東大の同級生は頭の切れが凄い者も存在するので、自分よりも頭が良い人間がいる環境に身を置きたいものにとっては、東大はまたとない環境ではある。
但しこれも大きなデメリットを孕んでいて、何回も当該noteで記してきたが、当然内部の競争は激しくそれについていけいない者も多数存在する(筆者のように)。
そういったデメリットを踏まえても天才的な頭脳を持つ友人と4年間ないし6年間、学生生活を送ることが出来るというのはその後の人生の資産になるかもしれない。

4.肉体労働を伴わない知的労働に就ける

筆者は医者の業務をそこまで把握しているわけではないが、殆どのケースではリモートワークは出来ず、一定程度肉体労働的な側面も付きまとうであろう。夜勤もあると思うので、バイト医や自由診療でない場合は、肉体的な体力が必要な職種であろう。
その点、東大卒で肉体労働を伴う職種に就いている者は皆無に近いだろう。
多くはリモートワークが可能で、一日中パソコンに向き合う業務に就いているのではないか。
これも価値観の問題ではあるが、筆者は後者の方が良い。医療器具を扱える自信もないし、夜勤も出来る自信がない。
実際に自分が医者になっていたとして、どの診療科であれば、やっていけるだろうかと考えたときにあまり選択肢が出てこなかった。個人的にはサラリーマン経験を活かして精神科辺りが良いのではないかと考えたこともあったが。

5.最先端の研究が出来る

筆者は文系であったので、そこまで最先端の研究に触れることが出来ていたわけではないが、東大の理系であれば、日進月歩で進化する最先端の研究や技術に触れることが出来るのではないか。
高校時代に数学や物理が得意な学生であれば、医学部に行くよりもこのような環境に身を置いた方が自身の知的好奇心を満たすことも出来るし、何より技術の進歩に直接的に貢献することが出来る。
但しこれも留意点がある。それは医学部を卒業して、医師免許を取った後でこれらの研究を行うことも可能であるということだ。
現に筆者のサークルには東大医学部を卒業後に研究のために東大の大学院に入学してバイト医をしながら研究活動に励んでいる先輩が存在した。
医師免許で最低限の生活水準を確保し、そこから自分が好きな研究に従事することも出来るので、別にこれは東大の特権ではない。
東大→医学部再受験は無給期間が6年あるのに対して、医学部→東大であれば、バイト医の選択肢があるので、無給どころか普通のサラリーマン程度の年収は得られるだろう。

6.グローバルに活躍するチャンスが出てくる

前述した通りで、東大を卒業して運が良ければ海外留学したり、海外駐在するチャンスが出てくる。海外留学は、お金さえ積めば可能であるが、海外駐在はさすがに医者の場合はチャンスは小さいのではないか。
グローバルに活躍できる可能性は東大の方がチャンスは大きいはずだ。
現に筆者の高校の同級生を見ていても、医学部に行った同級生の多くは関西や地方の病院勤務であるが、民間企業に就職した同級生の中には海外駐在を果たしている者も存在する。
グローバル志向が強い者であれば、東大の方が良いかもしれない。
但し注意点としては、グローバルで活躍できる水準の英語力を有する者は東大であっても一握りである点、海外留学は特に私費留学であれば、かなりの金額を要するという点で、一般家庭の東大生・東大卒では厳しいかもしれない点だ。

7.人間関係が閉鎖的でない

これは東大の明確なメリットだ。少なくとも学生時代は東大の方が開けた人間関係を構築できるはずだ。サークル、バイト、クラスと色々な居場所が存在するし、サークルも星の数ほど存在するので、自分に合った環境は見つかりやすいだろう。そもそも都心にあるので、周囲に人が多く、どこかに自分と気の合う人間がいるだろう。
その点医学部は、以下の点で閉鎖的な人間関係になるだろう。
①同級生の数が限定的
②実習などの形で、共同作業が多く、濃い人間関係を形成する必要がある
③部活に入る必要性が高く、ここでも人間関係は閉鎖的
④そもそも地方にあることが多く、やはり居場所が限定的

定型発達の人間であれば、このような濃密な人間関係も問題にはなりにくいかもしれないが、発達障害の人間にとってはやはり荷が重い。筆者はこのような環境に6年間置かれたら発狂してしまうかもしれない。

8.自由な大学生活を送ることが出来る

これも東大のメリットであろう。東大には確かに競争は存在するのだが、こういった競争を無視できるのであれば、比較的自由な生活を送ることが出来る。まず授業選択からして自由で、自分が好きな学問を選択することが出来るし、出席にも厳しくなく学生の自主性に任せている部分が多いので、自分で一定程度裁量をもって大学生活を送ることが出来る。
筆者の場合も、駒場時代から好きな数学の授業を(進学振り分けを度外視して)受講することが出来たし、他にもダーウィンの進化論やジェンダー論等自身の知的好奇心に従って授業をとることが出来た。(結果として進学振り分けの点数が足りずに留年した)
経済学部進学もファイナンスや金融工学、統計学等好きな授業で単位を埋めることが出来た。また実習系の授業はなかったので、自分の勉強の時間を確保することが出来た。
医学部の場合は、恐らくここまで授業選択に自由はないのではないか。まず必修が多いだろうし、実習系の授業も多いだろう。
但し、東大の場合も注意したいのは、この自由を筆者が享受できたのは、あくまで筆者が東大の中の落ちこぼれ・はみ出し者であったからであり、王道のルートを歩みたいのであれば、このような好き勝手な生活は送ることは出来ない点だ。まずもってストレートで経済学部に進学する必要があるし、ゼミ選びでも王道系を選択する必要がある。

以上が東大のメリットであろうか。言ってしまえば、東大は学生時代の自由度は医学部よりも上で、開放的な環境、その反対で医学部は在学時代は東大ほどの自由度はなく、閉鎖的な環境と言えるだろう。
但し、卒業後は医学部の方が職業選択の自由度が高いので人生トータルでの自由度は東大の卒業生よりも大きいだろう。
卒業後の生活の方が学生時代よりも遥かに長いのでやはり結局に医学部に軍配が上がるというのが結論になるのではないか。