医学部再受験に向いている条件を考えてみた【学力、年齢、属性、経済環境等】

筆者は過去に何回か医学部再受験を検討し、大学別の最受験の寛容度などの情報を調べたり、大学時代には実際に勉強して模試なんかも受けたりしたことがある人間である。そうした中で今自分が医学部を再受験しても良いのか否かを検討する際に色々なパターンを想定して、損得勘定を弾いてみたこともある。
今回は医学部再受験に踏み切っても問題ない方の条件や属性、そして環境に関して考察してみたい。
実はこれ、結構変数が多く、色んなパターンを網羅していくと一概には答えが出ないというのが結論である。
またその変数の中にも個人が置かれた状況や資産だけでなく、経済環境等の外部環境も含まれてくるためあくまでシミュレーションでしか答えが出ないのである。
まず最初に筆者が考える医学部再受験のカードを引くか否かを決める上での重要な変数を網羅していきたいと思う。
大まかな分類としては、

①学力
②年齢などの属性
③経済力
④結婚等のライフプランに関する志向・希望
⑤医師としてどのようなキャリアを志向するか

に分類できると思われる。まず大前提となるのが、学力と実家や配偶者の援助を含めた経済力そして年齢の3つである。この3つの条件が揃わないとそもそも医学部再受験をする土台にすら立てないと考えて良い。経済力に関しては、生活コストがかかりにくいエリアの医学部に進学し、奨学金を借りれば何とかなる可能性もあるが、学力と年齢だけはどうしようも無いので、恐らく最重要条件はこの二つであろう。更にそもそも医学部を卒業したとしてどのような人生を送りたいのかと言った観点も重要である。
数年の遅れがあるはずなので、医学部の人が想像するような王道のキャリアを歩むことは難しいだろう。またそもそも独身の場合、将来的には結婚して家庭を築きたいか等と言ったライフプランの志向も考慮すべきポイントである。最後の観点は筆者がそこまで医師のキャリアに明るくないので、ここでは語らないことにするが、有名大学病院での勤務や大学教授を目指す等
でなければ医学部再受験で数年ロスしたとしても痛手にはならないだろう。

またこれとは別に卒後の経済環境等でそもそも再受験して本当に良かったのかと言ったことをバックテスト的に後から振り返ることも重要である。これは医学部再受験をした自分としなかった自分を比較するという事である。

各種変数をもう少し詳細に見ていくと、以下のように細かく分類できる。

✔受験生時代の学力
✔年齢
✔男性か女性か
✔現時点の職種、勤務先
✔現在の年収
✔個人の資産
✔親の資産
✔何科に行きたいか
✔結婚願望があるか
✔親は近くに住んでいるか
✔結婚しているか
✔(結婚している場合)配偶者の理解は得られるか
✔将来的に子供は欲しいか、子供はいるか
✔(結婚している場合)配偶者の勤務地はどこか 
✔結婚していない場合、在学中、卒業後の婚活環境
✔経済環境はインフレ経済かデフレ経済か
✔金利水準
✔自分は何歳まで働けるか、死ぬか
✔医師の需給自体の問題

といった観点である。

こうやって見ていくと、とても変数が多く、かつ自分で決めることか出来ないものが多く存在する。いくつかの項目は受験段階である程度決まっており、ここをもとに多くの再受験生は医学部再受験を行うか否かを決定していくことになるのだが、後半にあげた条件はいずれも医学部在籍時代に変化する可能性も十分にあり、色々なデータから先を見通す能力が必要になる。今回の分析では受験時点で分からない条件に関しては、意志決定には関係しないと仮定する。ただし当然だが医師になったあとのQOLや人生の質には影響するので、実際に医学部再受験を行い医学部に進学した後にそれがどのように影響するのかも考察したい。

それでは色んなパターンからその人が医学部再受験に向いているのか否かを考えたい。
色んなパターンがあり、最終的な結論が出しにくいというのが答えではありが、無理やり結論を導くとすると、再受験に向いている属性ランキングで言うと以下の通りになると思われる。

1.22歳以下の学生(特に男子)
2.子育てを終えた専業主婦(元高学歴)
3.20代後半の元高学歴ノンキャリア層(特に男子)

まず大前提として、高校時代に理系であれば早慶理系学部、文系であれば一橋に合格できるくらいの学力を有してことが条件となる。(再受験生なので少し厳しめに設定している。学力的にはもう少し低くても行けるかもしれないが、再受験生の場合は厳しく判定される可能性もあるので上記とした)

これくらいの学力がなければそもそも土俵に乗らないと考えてよい。今は比較的医学部が易化してきているのでチャンスだと言える。昔だと理系であれば京大理系、文系であれば数学に苦手意識がない東大文系くらいでなければチャンスはなかったと思うので随分と環境は良化している。
但し話を難しくするのは、医学部の場合は、編入という形もあり、再受験生はこちらの形式を使うものも多いと聞くが、正直筆者の周りの再受験生は皆一般受験で合格しており、実態が掴めないので一旦は編入も一般受験と同難易度と仮定して話を進めていく。(ただ筆者の周りが東大生・卒であったので一般受験で合格していったが、再受験の場合は一般的に編入という形を取ることも多いと思われる)

①年齢、男性か女性か、結婚願望があるか
年齢が一番重要な要素と言うことに異論はないだろう。
基本的には若ければ若いほど良いというのが結論なのだが、これがまた難しい問題で、男性か女性かによって変わってくるのではないかと言うのが筆者の考えである。

結論、男性は若ければ若いほど医学部再受験に向いているし、なるべく早く再受験した方が良い。
もはや22歳以下であれば、再受験と呼ばなくても良いかもしれない。少し別の大学に通っていたという話だ。駿台や河合に3、4年通っていたのと再受験を比較すると明らかに後者の方が人生経験的にも良いだろう。
筆者の友人や知り合いも何人もこのパターンで東大から医学部再受験をしている。
とりあえず、30歳までにで医学部を卒業出来ればそこから結婚して家庭を持つことも余裕で叶う。30代前半でもセーフだろう。
ただ勤務地はよく考えた方が良い。都心にはエリサラが大量にいるので、そこに年増の男性医師が勝に行くのは少し難しいかもしれない。
またそもそも都内は医師の待遇が需給の関係から芳しくない。
埼玉、千葉は逆に医師不足で待遇が良いとも聞くが、それでも都心在住のエリサラには勝てない可能性がある。そうなると、千葉や埼玉の奥地に住むことになるが、これは都心在住のエリサラ例えばコンサル等と比較してかなり不利だ。

筆者の考えではあるが、おススメは九州と関西だ。ここはエリサラが殆どいない一方で、女性比率が高く、地域的に医者の社会的地位が非常に高いので婚活市場では絶大な強さを発揮できると思われるからだ。逆に東北や北海道の僻地等に行ってしまうと今度は医者の社会的地位は高くとも、そもそも女性がいないという問題にぶち当たることになる。
ただ関西と九州は全般的に医者が多い地域ではあるので、待遇面はそこまで伸びないかもしれないが、それでも1000万以上あれば十分に戦えるだろう。

今までは、20代前半の男性に特化した話であった。
次に男性のあなたが20代後半に差し掛かっていたケースを想定したい。
その場合、早く見積もっても医学部を卒業するのは30代前半から30代半ばに差し掛かっているだろう。
この場合であっても、男性医師であれば、問題なく結婚出来るだろう。
どこまで本当かどうかは分からないが、医師には普通のサラリーマンにはないプレミアムが付くので年齢差があっても結婚出来るとのことである。(勿論その人の資質にもよるが)

特に都心でなければ問題ないはずだ。再受験生の場合は、都心だけは避けた方が良いだろう。そもそも都心は医師の待遇が良くない一方で、再受験生の場合は、コストの回収のためにキャリアの序盤から稼ぐ必要があるので、少し都心から場所は外した方が良いかもしれない。また都心の人気の病院には、再受験生のようなレールの上から外れた存在はそもそも通らないだろう。

次に女性の場合の考え方だ。
個人的な意見であるが、女性の場合は、先に婚活してしまった方が良いかもしれない。
そもそも医学部再受験を行う動機として、経済的な側面が強いと思われ、男性の場合は、婚活において経済力が問われるので、医学部再受験を行うメリットが大きい一方で、女性の場合は、いくら時代が共働きになりつつあるとは言え、若いうちに婚活を行う事のメリットが大きいからだ。
さすがに無職だと婚活に不利に働く可能性があるが、何かしらの定職に就いていれば、都心の一部のハイステータス男女が集う婚活市場以外では問題になりにくいだろう。
なので女性の場合は例えば21歳以下であれば、再受験で問題ないが、22歳を超えてくる場合で尚且つ結婚願望がある場合は、まずは婚活した方が良いという考え方もあるかと思う。
また仮に医学部に入ったときは独身であっても、在学中に結婚してしまうという手もある。
将来性を見込んで医学部に在学している男性と結婚してくれる社会人の女性は皆無だと思われる一方で、在学中の女性と結婚したい男性は普通に存在すると思われるので、殆ど問題にならないだろう。

現に筆者もマッチングアプリをやっていた時に医学部在学中の女性と会ったことがあるが、何も問題に感じなかった。最初の数年は自分の方が稼いでいてもどうせ抜かれるしな。。。的なことしか考えなかった。
なので女性の場合は、結婚願望があるのであれば、一旦はまず結婚することからおススメしたい。その後でも医学部入学は遅くない(気がする)
ただ、これも結婚願望が無く、将来的にも一人で問題ない場合は、なるべく早く医学部再受験を検討してしまっても良いかもしれない。

30代になってくると男性の場合は色んな意味で厳しいであろう。
この年代になってくるとそもそも現行の医学部入試では、年齢差別を受けやすいため、合格するか否かも怪しくなってくる。
また30代で学生と言うのも男性の場合は苦しい可能性がある。30前半それも31や32であれば、卒業時点で40歳になっていないので、何とか間に合う可能性があるが、そこを過ぎてくると卒業時点で40歳近くになってしまうのでなかなか世間体を含めて厳しいものがあるかもしれない。
ただ男女ともに現行の日本の雇用慣行の下では、一度レールから外れてしまうとなかなか戻る元々いた場所に戻ることは出来ないので、人生のレールから外れてしまいそもそも失うものが何もない「無敵の人」の状態であれば医学部再受験に賭ける選択肢も悪くないと思われる。

その意味では、実は30代を超えてからは男性よりも女性の方が遥かに医学部再受験に向いていると言える。
そもそも主婦業をしており、失う職業が何もないのであれば、医学部再受験をして医師免許を取るという選択肢は殆ど何もデメリットが無いと言える。子供がいれば、少し子育てが大変になるくらいであろう。経済面では、きちんと稼いでくれる夫がいれば金銭的な援助も期待される。
また仮に独身であっても女性であれば、30代で学生をやっている人に対してとやかく言う人はいないだろう。やはりまだまだ日本では、男女の性別役割分担意識は強いため男女でその人に対する世間の見方は異なるのが現状ではあろう。
現に主婦業をやっていて医学部再受験を行う女性は多く観測される。

②現時点の職種、勤務先、現在の年収、個人の資産、親の資産
次に考えないといけないのは、経済面である。
とりあえず医学部在籍の最低6年間の学費と生活費をどう工面するかと言う話と仮に医学部再受験を行ったとして、その時に得られるリターンが再受験を行わないで普通に社会人を続けた場合のリターンを上回るのかといった問題である。
結論から言うと、医学部再受験を検討するような、属性の方(つまり失礼だが、人生のレールから外れてしまったような方)であれば医学部再受験によって経済的なリターンは十分に得られる。
ただこれも結婚や親との関係等複数の要素が絡んでくるので実にシミュレーションしにくく、一概に答えは出しにくい。
また経済面だけでなく、今就いている職種が不本意なのか否か、やりがいはあるのかと言った別の側面も絡んでくる。
ただこの辺りの定性的な側面は考え出すとキリがないので一旦は考えないことにする。

もしあなたが就職活動に失敗した、もしくは社会人になってから何らかの壁にぶつかり、待遇面で不本意な就職先に就いており、今後も改善の余地がないのであれば、医学部再受験を検討して良いと思うが、例えば少し不本意な就職先くらいであれば、よく考えた方が良い。
そもそも医学部再受験を検討するような学歴の持ち主であれば、何かしらの現職に就いている可能性が高い。特に今回はターゲットを理系:早慶理工以上、文系:一橋以上と仮定したので、この場合は普通に就職していれば、20代後半であればどれだけ不本意であっても400~500万以上は稼いでいる可能性が高い。
仮に年収が6年間平均して賃金上昇すると仮定して500万と仮定しても総合計で3000万近くは稼いでいるはずだ。
本当にこの3000万を回収できるか?と言う観点は持った方が良い。
特に現在足元で金利が上昇し始めているが、金利が上がれば上がるほど、ファイナンス理論の観点では、将来の1円と現在の1円では後者の持つ実質的な価値は上昇するので、仮に将来3000万近く、サラリーマンを続けている場合と比較して多く稼げると仮定しても3000万では足りない可能性もあるからだ。
この年代で上記の学歴の場合で真剣に医学部再受験の検討の余地があるのは、何かしらの不幸が重なり日本の伝統的な新卒ルートから逸脱してしまい、正規のルートにはもう戻れなさそうな場合である。新卒一回きりのチャンスを逃し、中小企業等に入ってしまった場合や長年無職の場合は、そこからはどれだけスキルを重ねてもなかなか大企業に入った同期に追いつくことは難しいかもしれない。
そうなった場合は、医学部再受験もしくは公認会計士の受験を真剣に検討して良いと思う。
ただ公認会計士の方が取得にかかる年数が短いのでこちらの方が短期的にリターンを得たい場合はおススメなのであるが。やはり短期的に見た場合には、公認会計士受験が人生逆転の観点では最強の資格なのかもしれない。

最後に親との関係性も重要だ。実家が太く、経済的な援助が期待できるのであれば、そもそも経済面ではそこまで悩まなくても良いかもしれない。

③結婚している場合、配偶者の理解を得られるか、配偶者の勤務地はどこか
子供がいるか、またいない場合子供は欲しいか、配偶者の年収、実家との関係
恐らく結婚していながら再受験するのは殆どのパターンで女性だろう。
男性で家庭を持ちながら再受験するというのは、伝統的な性別役割分担の意識が残る日本においてはなかなか難しいはずだ。
最悪離婚という事にもなりかねない。

前述した通りで一番再受験に向いているのは、既婚で配偶者の年収が高く、子育てもひと段落した女性なのは間違いない。彼女たちはある意味人生のレールにこれまで乗ってきた存在であり、結婚、子育てと言う年齢制限があるフィールドを卒業しているので、医学部再受験によって失うものは少ない。
何なら結婚、出産を機に仕事を辞めていた方が医学部再受験を行うに際しての機会損失も少ないだろう。
というか、むしろこれらのライフイベントを機に仕事を辞めてしまったが、もう一度何らかの方法で仕事がしたい女性や自己実現を果たしたい層に医学部再受験はピッタリなのである。

ただここで問題になってくるのは、配偶者の勤務地である。
妻だけ一人単身で医学部に通うというのはなかなか難しいものがある。
ネックになりやすいのは、やはり配偶者が高い年収を得ている場合、勤務地は首都圏や関西圏の一部に限定される一方で当該地域にある医学部はどこもかしこも超難関であるということだ。恐らく医学部再受験を積極的に考える妻の配偶者と言うのは基本的に高学歴のことが多いだろう。
その場合は、やはり勤務地は多くのケースで上記に限定されるのだ。
実は一番いいのは、配偶者の年収はそこそこだが、全国どこでも勤務することが出来、お金は実家から出てくるという事だろう。つまりPL(年収)は場所に依存しやすいが、BS(資産)は場所に依存しにくいという性質を活かさない手はない。おまけに教育関連の贈与は、節税にもなる。この場合は、難易度が低く、高齢でも比較的入りやすい地方国立の医学部も選択肢に入ってくるだろう。
子供がいる場合は、親が近くにいれば子育ての代行を期待できる。
特に子持ちの専業主婦が医学部再受験を行うのであれば、医学部の場所と親の住処の関係性は重要になると思われる。

①~③までは、医学部再受験と言うカードを切るか否かを検討する場合に考慮する各種変数である。
上記を基にまずは医学部再受験を行うか否かを決定し、次は以下の要因を基に本当に医学部再受験をして良かったのかと言った点について考えていくことになる。

④経済環境はインフレ経済かデフレ経済か
基本的に医師と言う職業は、デフレ経済、円高に強い職業である。
基本的に医療関連のマネーは殆ど国内で完結するため、輸出企業やグロ―バル展開している企業のように円安により業績が良くなるということはない一方で円高で業績不振に陥るということはない。
またインフレで給料は上がりにくい一方でデフレで給料が下がるということもない。
このため、医師はデフレ環境や円高環境でも相対的に強さを発揮できる職種である。

注意したいのは、インフレ局面だ。
足下でインフレが進んでいたとしても、医師の給料は上がりにくいし、特にそれが円安要因や供給制約に伴うコストプッシュ型のインフレであれば、尚更賃金上昇は期待できない。
また医学部在学中は、基本的に給与所得を得らず、株式や不動産等に投資することが難しくなるが、インフレ局面で株式や不動産が値上がりしているのであれば、その上がり幅を享受できないのは、所謂機会損失につながる。

現在はインフレ・株高局面であるので例えば、医学部入学の6年前に株式等のアセット更には不動産を購入していればそれだけで大きな値上がりを期待できる可能性が高いが、この利益を逸失しまうということをどう考えるかという事である。

⑤自分は何歳まで働けるか、何歳で死ぬか
医師と言う職業が他の知的職業と大きく異なる点は以下の点であると考える。
・定年が実質的に存在しない
・知識のアップデートが必要だが、一度身につけた知識が陳腐化しにくい
・顧客(患者)が基本高齢なので、若手よりも一定程度ベテランの方が有利

一つ目のポイントは敢えてここで深堀する必要は無いだろう。
二つ目が他の知的職業と大きく異なる点であると考える。
勿論一定程度のリスキリングや自己研鑽は必要だと思われるが、取り扱い対象となるのが人体であり、これはここからどれだけ技術が進歩しようと変わらないはずである。勿論必要に応じて新たな処方が出てきたり、新たな概念が登場することはあると思われるが、基本的な人体の構造は変わらない故、どれだけ年月が経過したとしてもベースとなる知識の土台は揺らがず、一度身に着けた知識が陳腐化することは無いと思われる。

これがIT業界のエンジニアやデ―タサイエンティストではこうもいかない。情報産業は日進月歩で進化していくため、高頻度のリスキリングが必要となる。また年のいったエンジニアよりも最近のトレンドに強い若手のほうが重宝されるということもありふれた話である。
IT関連は極端な例であるが、他の産業でもある程度同じことが言えるのではないかと思われる。そもそもメンバーシップ型の企業で長年勤めてきたタイプは何も特筆すべきスキルがない可能性すらあり、そもそも陳腐化するものが何もないという可能性すらある。

三つ目も他の職種と大きく異なる点だ。これは考え方にもよるとこはあるのかもしれないかま、多くの人にとっては、自分の人生、体を若すぎる、経験が浅い医師には預けたくないだろう。
また患者の年齢層が高めと言うのも大きなポイントであろう。
ビジネスの世界では、一部の高スキル人材以外は、年齢を重ねるごとにその市場価値は毀損されていくが、どうも医師の世界ではそうとも考えられないのだ。高齢の患者から見ても、自分と年齢の高い医師に診てもらいたいというニーズは確実に存在するだろう。やはり医師は究極のケア労働であり、人間と人間の触れ合いが必要な産業なのである。

こうやって考えていくと、医師の職業寿命は普通のサラリーマンの職業寿命より圧倒的に長い。そのため年齢がいった段階で医学部再受験をしても十分に元が取れる可能性があるのである。
ここでポイントになってくるのは、そもそもの自分自身の寿命である。
寿命は人によって異なってくるが、自分自身が長生きするほど現役で働ける期間が長くなるのだ。その点でも、実は女性の方が平均寿命が長いという観点からも男性より有利なのではないかと考える。

そう考えると実は専業主婦の医学部再受験と言うのは、かなり理にかなった選択肢なのかもしれない。日本の現行の雇用慣行では、数年のブランク、いや一度でも労働市場の最前線から離れてしまうと、ろくな仕事には戻れないことになっているので、どうせ長生きするのであれば、医学部再受験を実行しようという者は今後増加してくる可能性は十分にある。

⑥医師の需給自体の問題
この点は筆者は明るくないので、あまり語ろうとは思わない。
ただ間違いなく一つ言えるのは、今後も医師の需要は底堅く存在するのではないかと言うことだ。
どれだけAIが発達しても、一種のケア労働である医療だけは人でないとこなせない領域だと思うからで、もし医療がAIに駆逐されるのであれば、その前に大半のサラリーマンの職業は無くなっているだろう。
人口動態からも医療の需要は少なくなるとか言われているが、同じようなことは筆者が受験生の時から言われていたが、結局今も何も変わっておらず、底堅い需要がある。更に今の医師の多くは都会での勤務を希望するため、今後僻地での医師の需要は更に高まる可能性すらあると考えている。

まとめると、恐らく普通のサラリーマンでいるよりは長年働くことが出来るので金銭面では元は取れる。ただ若い時の時間は非常に貴重で、重要な6年間を医学部での勉強に捧げて良いのかと言うのは十分に考える必要がある。
結局、医学部再受験に向いているのは、若くてこれまでの積み上げも少ない22歳以下の男子、既に重要なライフイベントは大方片付け、日本の伝統的な雇用慣行からは弾き出されてしまった専業主婦もしくは、就職活動で失敗し、一時的に「無敵の人」になってしまった元高学歴(特に男性)と言うことになるのであろう。